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韓国大統領選 予備選山場に 疑惑は泥沼化

2021年10月8日 15:35

次の韓国の大統領選挙に向け最大野党「国民の力」は8日、予備選の候補を尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長ら4人に絞り込んだ。一方、与党「共に民主党」の最有力候補、李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事に都市開発事業をめぐる疑惑が浮上。与党内からも“李候補の拘束”の可能性を指摘する声が上がるなど泥沼化し、本選でも火種になりそうだ。


●野党 文政権追及の尹前検事総長ら4人に絞り込み “ダークホース”は脱落

8日、韓国の保守系最大野党「国民の力」は、大統領選挙に向けた予備選の候補を世論調査などを通じて4人に絞り込んだ。

尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長をはじめ、前身野党の代表を務めた洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏、劉承ミン(ユ・スンミン)元国会議員、元喜龍(ウォン・ヒリョン)前済州道知事を選出。

原発政策をめぐり文政権と対立し、一時、“ダークホース”と目されていた崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長は候補者争いから脱落した。

最終的な公認候補は、来月5日に選出する。

最近の世論調査では、尹氏を洪氏が猛追し、尹氏との差を詰めている。野党候補だけに絞った調査では、洪氏が逆転する結果も相次いでいる。また、次の大統領選のカギを握るとされる若年層について、尹氏の支持が伸びていないのに対し、洪氏は着実に支持を広げている。

尹氏をめぐっては、検事総長当時、側近の検事が、尹氏に批判的な与党側の人物らを刑事告発するよう野党側に働きかけた疑惑が浮上。文政権が検察改革の柱として立ち上げた捜査機関「高位公職者犯罪捜査庁」が捜査を進めていて、今後の選挙戦に影響する可能性もある。


●与党 “対日強硬”の李在明氏 公認間近も…疑惑は泥沼化

一方の与党は、公認候補を争う予備選挙が最終盤を迎えている。9日の京畿道、10日のソウルで党員らの投票が行われ、10日夕方にも候補者が選出される。

これまでのところ、累計の得票で“対日強硬”姿勢で知られる李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が54.9%、2番手の李洛淵(イ・ナギョン)元首相が34.3%と20ポイント以上の差が開いていて 李在明氏が選出される可能性が高まっている。

ただ、李在明氏をめぐっては都市開発事業をめぐる疑惑が浮上し、この先の本選で大きな火種になる可能性がある。

この疑惑は李在明氏がソウル近郊の城南(ソンナム)市長だった2015年に始めた官民合同の都市開発事業についてのもの。特定の企業が出資比率を大幅に上回る利益を得ていたことが表面化し、李氏が計画段階から企業側が利益を得ることを知っていたと指摘されている。

検察は3日に李在明氏の側近とされる都市開発公社の元幹部を逮捕し、捜査を進めている。

李氏は疑惑への関与を全面的に否定しつつも、当時の市長としての管理責任を認めて遺憾を表明。李氏本人の関与は、今のところ明らかになっておらず、予備選挙は乗り切った形だ。ただ、与党内からも今後、“李候補が拘束される”との可能性を指摘する声も出るなど本選に向けての波乱材料になりつつある。


●最新の世論調査 依然、李在明氏がトップも 仮想対決は…

7日に韓国の世論調査会社4社が共同で行った調査では、次の大統領の適合度は
 ・李在明氏(与党)26%
 ・尹錫悦氏(野党)17%
 ・洪準杓氏(野党)15%
 ・李洛淵氏(与党)11%
の順だった。

ただ、野党候補者に限った調査では、洪準杓氏 26%に対して、尹錫悦氏 21%と逆転。与野党の大統領候補者1:1の仮想対決調査でも、

 【李在明 44% 対 尹錫悦 33%】
 【李在明 40% 対 洪準杓 37%】
 【李洛淵 39% 対 尹錫悦 35%】
 【李洛淵 35% 対 洪準杓 40%】

と、洪氏が出た方が野党にとって有利になるとの結果が出ている。


写真:10日にも与党公認候補に選出見通しの李在明氏