“まるで文革”…中国ゼロコロナ政策が大転換 「白紙革命」が残したものとは

約3年にわたり続いてきた中国のゼロコロナ政策。容赦ない隔離措置や行動制限は厳しさを増し、現代版「文化大革命」とも言われた。しかし、中国全土に広がった「白紙革命」を機に事態は急転した。看板政策が事実上破たんした習近平政権は、試練を迎えている。
(NNN中国総局 森本隼裕)
■ゼロコロナと「文革」
中国は「建国の父」毛沢東の生誕から129年を迎えた。故郷・湖南省韶山(しょうざん)では2022年も、巨大な毛沢東像の前に大勢の市民が集まり礼をささげた。韶山では今も毛沢東を崇拝し、神格化する風潮が根強い。
2022年は「毛沢東」にまつわる言葉が目立った。第20回中国共産党大会では、習氏が毛沢東と並ぶ地位や称号を手にするのか注目された。中国メディアや党幹部は習氏を「人民の領袖(りょうしゅう)」と持ち上げた。「領袖」はかつて毛沢東をたたえた言葉とされる。
そんな中、特に印象に残ったのは「文革」だ。習氏の権威強化が進む中、異論を許さぬ息苦しい社会状況に「文化大革命」を想起する人も多かった。その象徴が、ゼロコロナ政策だ。強権的な行動制限は長らく人々を萎縮させてきた。SNSでは、防護服姿の当局者の横暴ぶりが目に余った。集団隔離のため住民を家から引きずり出す動画などが出回る。彼らは文革期の「紅衛兵」になぞらえ「白衛兵」と呼ばれ、習指導部の看板政策を忠実に実行した。ネットでは「文革2.0」という言葉も飛び交った。
■母親“密告”の元紅衛兵「まるで文革」
「まるで文革のような、信じがたい現象が起きています」――元紅衛兵で、現在は弁護士として活動する張紅兵さん(69)は11月中旬、このように懸念を示していた。
紅衛兵とは毛沢東を熱烈に支持して文化大革命を推進した青年組織。「革命」の名の下、10年にわたる暴力・破壊行為で多くの犠牲者を出し、終結後も中国社会に深い傷を残したとされる。張さんは文革に熱狂していた16歳の頃、家庭内の雑談で毛沢東を“批判”した母親を自ら密告。母親は逮捕され、銃殺されたという。張さんは2013年にメディアで母親への懺悔を公開。「私の理性を失った稚拙な行動により傷つけた全ての人に謝罪したい」と語った。
「あの悪夢のような体験を、未来の世代が二度と繰り返さないことを願っています」