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国連WFPがテスラCEOに協力要請のワケ

2021年11月9日 19:50
国連WFPがテスラCEOに協力要請のワケ

国連WFP(=世界食糧計画)の日本事務所代表は、新型コロナウイルスで飢餓に苦しむ人の倍増が見込まれるなか、2021年支援に必要な金額の半分も集まっていないことを明かしました。コロナにより深刻化する飢餓問題の“いま”について話を聞きました。

■テスラCEO「WFPが説明できれば、すぐに株を売却」Twitterで投稿

先月Twitterで33万件以上の「いいね」がつけられたテスラのイーロン・マスクCEOの投稿。

(イーロン・マスクCEOのTwitterより)「60億ドルでどうやって世界の飢餓を解決できるのか、WFPがこのTwitterのスレッドで正確に説明できるのであれば、今すぐにテスラ株を売却して協力しましょう」

これは、WFPのデイビッド・ビーズリー事務局長が先月放送されたCNNの番組で、マスク氏の純資産の約2%にあたる60億ドルの資金があれば、「手を差し伸べなければ死んでしまう」4200万人を救うことができると訴えたことに対して、マスク氏が応じたものです。

なぜ国連の機関が億万長者を名指しして、協力を呼びかけるのか。WFP日本事務所の焼家直絵代表を取材すると、飢餓問題はコロナ禍で深刻さを増していることがわかりました。

■「コロナ以前と比べて飢餓に苦しむ人の数は倍増」

焼家代表によると、WFPの事務局長が協力を呼びかけた60億ドルは「手を差し伸べなければ死んでしまう」4200万人のためのものです。食事1食(平均50円ほど)を1年間届けるために使い、「米や小麦などの穀物の現物支給」または「食糧への引換券の配布」、「現金給付」などを地域の状況に合わせて行おうとしています。

焼家代表は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、この2年間で、飢餓の状況は急激に悪化していると指摘します。具体的には、深刻な飢餓に苦しむ人の数はコロナ前の1億4900万人から2億8000万人に倍増することが見込まれているといいます。

こうした状況を受け、WFPは今年、157億ドルの支援金を必要としているといいますが、実際に集まっているのは70億ドル。半分以上足りていない厳しい状況が続いています。

焼家代表は今回、WFP事務局長が富裕層への協力を呼びかけたことについて、「コロナ禍で支援ニーズがすごく拡大しているということが背景にあります。そんななか各国政府からの支援がまだまだ追いついていない状況です」と話し、資金が足りないと支援の量や対象者を減らさざるを得ないといいます。

例えば、飢餓が深刻なイエメンでは木の葉を食べて飢えをしのいでいる人がいることや、アフガニスタンでは95%の人が十分な食事をとれていないということです。

その上で、マスク氏のTwitterでの反応について焼家代表は、「問題に対して関心を示してくださっているというのは、やはり非常にありがたいと思っています」と述べました。また、「特に深刻化する飢餓問題というのが『対岸の火事』ではない、ということをもっと身近に感じてほしいので、やはり何らかの形での国際的連帯というのを私たちが呼びかけたいと思っています。その機運になればいいなとも思っています」と話しました。

現時点でマスク氏は、WFPに対し、明確な回答を示していません。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

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