キエフ周辺は膠着状態か…“最悪のシナリオ”も 専門家「核使用の可能性捨てきれない」
ウクライナ各地で長距離砲による攻撃が続いていますが、首都キエフの周辺は膠着(こうちゃく)状態だといいます。専門家は、今後の最悪のシナリオとして、ロシアが「核」を使う可能性にも言及しています。
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■国営テレビの生放送中“反戦”掲げるも…「罰金約3万円」なぜ?
有働由美子キャスター
「ロシアの国営テレビの生放送中に反戦のメッセージを掲げた女性が、『身の危険を感じています』と取材に答えていましたけれども、処分は当初もっと厳しいものになるんではないかといわれていましたが、16日時点では、処分は約3万円の罰金ということで、これはどういうことなのでしょうか?」
慶應義塾大学・廣瀬陽子教授
「想定よりもかなり軽い刑になっていると思います。最近、禁固15年という刑が、軍を侮辱するような情報を発したものに対して与えられるというような法律ができたばかりでありますけども、その可能性もあったわけですが、非常に軽くすみました。しかし、このことというのは、彼女の行動が国際的に報道されたことも非常に大きいと思います。ここで重罪にしてしまうと、いかにロシアがこの行為を真剣に受け止めているかということが、国際的にも、国内的にも、明らかになってしまいますので、あえて刑罰を軽くすることによって、ロシアはこのことを重く受け止めてはいないと、これはむしろフェイクニュースであるくらいのニュアンスで扱いたいというところが本音ではないかと思います」
有働
「辻さんは、この件、どう見ていますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「リスクを覚悟で声を上げた彼女の意志って本当にすごいと思いますし、国を愛するゆえの行動でもあると思います。と同時に、今回のマリーナさんの話を武勇伝で完結させてはいけないな、ということも思いました。彼女が必死に伝えていたことって、今、一人一人がこの惨状に気付いて、声を上げていかなければいけない、ということだと思うんですね。彼女のような勇気ある1人に背負わせないためにも、ロシアの人たちだけではなくって、同じく動画を見た私たちも自分事として考えないといけないと私は受け取りました」
■キエフの周辺は“膠着状態”なぜ総攻撃かけられない…
有働
「そして、16日時点の戦況なんですけれども…。ウクライナ当局によると、南東部の港湾都市マリウポリでは、ロシア軍が病院を占拠して400人が人質になっているといいます。また、各地で長距離砲による攻撃が続いていますが、首都キエフの周辺は膠着状態だということなんです。キエフまでロシア軍、非常に迫っている中で、なぜ総攻撃をかけられないんでしょうか?」
廣瀬
「総攻撃を行うにあたり、ロシア軍は完全な補給を整えてから、準備万端の状態でやりたいという風に思っているようですが、北部のウクライナ兵の前線が非常に活発にやっておりまして、なかなかロシア軍の補給というのものがうまくいっていないということがあるようです。ロシア軍は南部の制圧は、非常にうまくやっているわけなんですけれども、北部では非常に難航しているということがこの原因になっていると思います」
■人口密集地などを核ミサイルで狙う“邪悪なシナリオ”も
有働
「そんな中で今後の最悪のシナリオと言われているのが『核』を使う恐れなんですけれども…」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「はい、東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師によると、『ロシアの軍事思想の中に、なかなか戦争で勝てない時に脅しのために核を使う』という思想があるということなんですね。そして、ロシアの軍人が書く部内誌では、『停戦を強要するための核攻撃は、限定されているが大きな損害が出る場所に行う』とあり、つまりは人口密集地や、政治的・軍事的拠点を、核弾頭を積んだ巡航ミサイルなどで狙うという『邪悪なシナリオ』もあり得るのではないか、と分析しているんです」
有働
「人口密集地と聞くだけで、本当に恐ろしいことですけれども、廣瀬さんはその『邪悪なシナリオ』、最悪なシナリオというのはどういう風にお考えでしょうか」
廣瀬
「非常に残念ながら、可能性として捨てきれない状況になっていると思います。最近のプーチン大統領の動きというのは、ちょっと常軌を逸しているところもありまして、キエフを落とすためならどんな手段でも使うというような状況が想定されます。そういう中ですでに戦略核を使える準備をロシア軍は行っておりまして、そうなりますと、ウクライナのみならず、ヨーロッパ、そしてアメリカまでも射程に据えた攻撃ができるという恐ろしい状況が今、あります」
有働
「それは、射程というだけで、実際にその恐れも考えておかねばいけないということでしょうか」
廣瀬
「もちろんそうですね、そういうような最悪の状況も加味した上で、ウクライナだけでなく、国際社会はこの問題を真剣に考えて対応していく必要があると思います」
(3月16日放送『news zero』より)