“適切な距離感”は? 中国との関係が争点 13日に台湾総統選挙
台湾の次のリーダーを決める総統選挙が今月13日に行われます。東アジア情勢に大きな影響を与えるとみられ、注目されています。争点は「中国との関係」です。
(NNN上海支局 渡辺容代)
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4年に一度行われる台湾総統選挙。今回の総統選挙は、特に、「台湾統一」を掲げ圧力を強める“中国との関係”が大きな争点になっています。
3人の候補が立候補し、いずれも台湾の民意の多くが望む「現状維持」を掲げていますが、中国との向き合い方が異なります。
与党・民進党の頼清徳氏は、蔡英文総統の路線を継承。中国と距離を置き、アメリカとの関係を重視する姿勢です。選挙戦では、「独裁政権に従属することはない」として、アメリカなど民主主義の国々と協力して防衛力を強化し、中国に対する抑止力を高めると訴えています。
最大野党・国民党の侯友宜氏は、対話を通じて中国と緊張緩和を図るとしています。頼氏がかつて自身を「現実的な台湾独立工作者」と呼んだことを念頭に、民進党政権が続けば中国との緊張が高まるとして、「総統選挙は戦争か平和の選択だ」と迫っています。
第3政党・民衆党の柯文哲氏は、二大政党を批判する立場です。これまで民進党と国民党の間で政権交代が繰り返されてきたことから、「総統選挙は新たな政治と旧勢力の選択だ」と述べ、「米中対立のかけ橋」を掲げています。
中国は、現在の民進党からの政権交代を望んでいて、台湾産の高級魚の禁輸措置を「国民党から強い要望があった」として解除するなど、中国との緊張緩和を掲げる国民党・侯氏の側面支援を強めています。一方、頼氏については「台湾独立勢力」と位置づけ、批判を繰り返しています。
今月1日に公表された世論調査では、頼氏がリードを守っていますが、侯氏との差はわずか。各候補は有権者の関心の高い住宅政策や子育て支援策などを訴え、若者や無党派層への支持拡大を狙っています。
台湾では2期8年ごとに政権交代を繰り返していて、民進党に汚職や所属議員の女性問題といった不祥事が発覚する中、有権者の目は厳しくなっています。
また、総統選挙で勝利しても、同じ日に行われる台湾の議会・立法院の選挙で過半数の議席を確保できなければ、難しい政権運営が待っています。
アジア経済研究所の川上桃子・上席主任調査研究員は、民進党が勝利した場合、中国による台湾産製品の貿易規制などを含め、台中関係を分断するような圧力は強まる可能性があると指摘しています。一方で、国民党が勝利し対中関係改善の方向に動いたとしても、『現状維持』を望む台湾の世論を無視した形で中国との経済交流を進めることは難しいと分析しています。
いずれの候補も、安全保障の後ろ盾となるアメリカと、その同盟国である日本との関係は重視しています。日本をはじめ東アジア情勢に大きく影響する選挙で、台湾の有権者がどのような判断を下すのか注目されています。