争点は“不動産価格の高騰”5年で2倍に… 韓国大統領選挙
明日、9日に迫った韓国大統領選挙で大きな争点となっているのが、高騰を続ける不動産価格です。ソウルのマンションの平均取引価格は5年間で2倍に上昇しました。こうした中、将来が描けない若者の現状を取材しました。
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韓国大統領選挙の投開票が9日に迫る中、5年ぶりの政権交代を狙う野党候補と、革新政権の維持を目指す与党候補が最後の訴えを行っています。
選挙の争点の一つが、ソウルに立ち並ぶマンション群にあります。ソウルで銀行員として働く鄭泰訓さん(36)は将来家を買いたいと考え、不動産店を訪れましたが――
銀行員(ソウル在住) 鄭泰訓さん
「これも衝撃的だけど。これもとても衝撃的だ。13億ウォン(約1億3000万円)」
鄭さんが見つめていた物件は築20年以上で、決してぜいたくなつくりとは言えない3LDKの中古マンションですが、なんと日本円で約1億3000万円です。実はソウルでは、ほぼ平均的な価格です。
銀行員 ソウル在住 鄭泰訓さん
「 私の稼ぎでは買えない」
一体、何が起きているのでしょうか。
KB国民銀行の調査によると、ソウルのマンションの平均取引価格は2017年の文在寅政権誕生以降急上昇し、5年間で2倍以上の1億2000万円あまりとなりました。
一方で、韓国の平均年収は約380万円と、単純計算で33年分です。
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人も金も一極集中している大都市・ソウル。
文在寅政権は、投機を目的とした過度な不動産取引が高騰の原因だとして、増税や住宅供給の抑制を行いましたが、高騰は続くばかりです。
このため、野党・尹錫悦候補は、文政権の不動産政策を厳しく批判しています。
野党「国民の力」 尹錫悦候補
「建国以来これまでに、こんなに家の値段が値上がりするのを見たことがありますか。皆さん」
尹候補は、自らが当選すれば「250万戸以上の住宅を供給する」と強調しています。
一方、与党の李在明候補も、同じ与党である文政権の政策失敗を認めざるを得ませんでした。
与党「共に民主党」 李在明候補
「供給過剰と言われても、必ずマイホーム購入の夢のために大量供給の約束を守ります」
李候補も負けじと、「311万戸の住宅供給」を公約に掲げます。
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物件を見ていた鄭さんも、文政権の不動産政策に翻弄された一人です。現在、鄭さんが暮らしているのは、シングルベッドとデスクでほぼ部屋が埋まるワンルームの賃貸アパートです。
有名大学を卒業し、平均以上の収入があり貯蓄もしている鄭さんでも、より広い部屋に移るのは難しいといいます。
銀行員 ソウル在住 鄭泰訓さん
「私は『いつか家を買うだろう』と漠然と思っていました。しかし、諦めることになりました。私の人生では家は買えないんだなと」
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韓国で高まる住宅高騰への不満。その一方で、不動産取引に必要な公認仲介士の国家資格を取得するための授業に多くの人が集まるという現象も起きていました。去年の資格試験は、これまでで最も多い28万人近くが受験しました。その目的は――
受講生(30代)
「取得できる仲介手数料に魅力を感じて、始めました」
不動産取引価格の高騰に伴って、仲介手数料も高額となっているのです。さらに、別の理由も――
学校長
「職業としてというよりは、投資のために勉強するという人も増えた」
最近は若者の受講が増え、この学校では半数近くが20代と30代です。ただ、受講生自身も、政府の不動産政策に大きな不満を感じています。
受講生(30代)
「お金を多く持っている人も、持っていない人も、皆不満があります」
なかなか将来を描けない韓国の若者たち。次の政権では、希望の持てる社会となるのでしょうか。