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“電子廃棄物の墓場”と出会い……世界が注目する美術家・長坂真護さん、ゴミのアートで「スラム街を変える」 売り上げをガーナに再投資するワケ

2023年5月27日 13:02
“電子廃棄物の墓場”と出会い……世界が注目する美術家・長坂真護さん、ゴミのアートで「スラム街を変える」 売り上げをガーナに再投資するワケ

世界中から電子廃棄物が集まるガーナのスラム街と出会い、「スラムを変える」と決意したアーティストがいます。ゴミを使ってオブジェや絵を制作する長坂真護さん。作品は高く評価され、最高額は2億円。売り上げの多くを元手に、事業で現地に還元しています。

■作品へ高い評価…最高額は2億円

福岡市で5月に開かれた、アーティスト長坂真護さんの展覧会『Still A BLACK STAR』(スティル・ア・ブラック・スター)。

来場者は、キーボードなどで作った恐竜『Metallic dinosaur』(2200万円)を前に「これあれじゃん、電気の(コンセント)」「アイロンとキーボード」と興味深そうに見入っていました。

他にも、テレビチューナーを眉毛に、ゲーム機器を唇に見立てた『Malco』(2200万円)、洋服がパッチワークのように重なりドレスに様変わりしたオブジェ『I’m Princess』(3850万円)などが飾られていました。

この多くが、元はゴミだったものでできているといいます。長坂さんは、ゴミを画材にするアーティスト。路上で絵を描き各国を回る中、世界中から電子廃棄物が集まるガーナのスラム街と出会いました。ゴミを使った作品は高く評価され、最高額は2億円です。

約160万円で絵を購入した人は「ただ絵を描くだけじゃなくて、絵を描いてその収益でまたガーナに還元をしてという、良い循環にすごく感銘を受けました」といいます。

■制作現場にはワープロやVHSが

捨てられたものが、ガーナを救うお金に―。中島芽生アナウンサーが、制作現場を訪ねました。

長坂さんは「ここで制作をずっと毎日やっていて、去年は1000点くらい、今年も500点以上はここで1点1点制作しています」と話します。

山積みになっていたゴミには、中島アナウンサーが「懐かしい」と声を上げる物がありました。長坂さんは「これはワープロ。パソコンじゃなくて。しかも『MADE IN JAPAN』って書いてありますよ。日本で作られた物がアフリカにある」と教えてくれました。

昔のビデオテープもありました。

長坂さんは「VHSのテープとかも…。今使わないでしょ? やっぱりこういう物がゴミになっていくわけですよね。(テープの部分を)引き延ばして繊維状にして(オブジェの)髪の毛に使っています。引っ張ってまとめて髪のようにしていきます」と説明しました。

■地平線の一歩手前まで電子ゴミが

なぜゴミから作るのか。ガーナのスラム街「アグボグブロシー」との出会いは、衝撃的なものだったといいます。長坂さんは「地平線の一歩手前まで、我々が捨てた電子機器の亡きがらみたいなものが続いている」と振り返ります。

「2つ選択肢があったんですよね。粛々と『なんて日本人に生まれてありがたいんだ』と思って生きるか、『スラム変える』って言い切るか。半年くらい悩んだんですよ。自分の人生を一変してしまうような、それくらいのインパクトがありましたね」

アグボグブロシーは、世界中から集められた何千トンもの電子廃棄物が投棄される、電子ゴミの墓場です。スラムの人々は電子ゴミを燃やし、取り出した金属部品を売って生計を立てていて、有毒ガスを含む煙が充満し、健康被害が出ているといいます。

■「恥ずかしい時代の代表作に」

その地で今、長坂さんはさまざまな活動をしています。

「リサイクル工場、現地にね。あと農業、EV(バイク)の開発を、おかげさまで32人の従業員とやらせてもらっています」と長坂さんは話します。

自身の収入は売り上げの5%。売り上げの多くを元手に、ガーナでの事業に再投資しているといいます。

長坂さん
「ゴミをゴミと称して捨てていた野蛮な時代。旧石器時代みたいな紹介で僕のアートがルーブル(美術館)の真ん中に、モナリザの隣に。それかモナリザをのけて、恥ずかしい時代の象徴として。僕のアートはその代表作になると思う」

■まち全体を「キャンバス」に見立てて

中島芽生アナウンサー
「アートで生みだしたお金で、今後はどういったことを目指していますか?」

長坂さん
「こうした作品を販売した利益で、リサイクル工場やオーガニックの農園をガーナにつくっています。目標は1万人の雇用。今は32人なので、今のところ0.32%です」

「ただ活動を進めて1万人が住むサステナブルなまちをつくることができたら、目標達成度は100%になります。そのまちの大きさ、自分のキャンバスが、そこに動く生活、サステナブルな社会が形成されていたら、そこに立つ建物も全部、平和という作品になります」

「ピカソが持つ原画記録1万3500点を超える、僕の1万3501点目の作品にしていきたいなと考えています」

中島アナウンサー
「まち全体、それ自体がアートということなのですね」

長坂さん
「そうですね。それをキャンバスとして見立てています」

■個展タイトルに込められた思いとは?

中島アナウンサー
「各地で開く個展ではいつも同じタイトルを付けています。その理由は何でしょうか?」

長坂さん
「個展タイトルは『スティル・ア・ブラック・スター』です。ガーナが1957年に独立した時、国際社会の中で、国旗に描かれた黒い星のようにまだ我々の星は輝いていない。そんなメッセージがあります」

「ただ、その星を輝かせるために我々はこれからも邁進していくというのが目標です」

中島アナウンサー
「東京の日本テレビ本社では、27日~31日の5日間、長坂さんの作品の展覧会を行います。入場は無料ですので、この機会にぜひ足を運んでみてください」

(5月26日『news zero』より)