ウクライナで活動する国境なき医師団「必要なのは手術器具と薬」 治療したくてもできず…
ロシア軍との戦闘で負傷者が増え続け、深刻な医療物資不足に陥っているウクライナ。現地にいる国境なき医師団のチームは、手術器具などがなく「治療したくてもできない状況だ」と話していました。
◇
今月9日、ポーランドから戦地を目指す車両に乗っていたのは、NGO「国境なき医師団」のチームです。
ロシア軍の攻撃で負傷者が増え続け、深刻な医療物資不足に陥っているというウクライナ。2週間ほど前から現地に入った「国境なき医師団」のスタッフに、話を聞くことができました。
国境なき医師団 トマス・ベンドルさん(32)
「いま必要なのは (戦傷者への)手術器具と薬です。治療するものが何もないので、治療したくてもできない状況です」
ウクライナに入るスタッフは日々、増員され、18日現在は70人。負傷者に治療キットなどを届けているといいますが、戦闘が激化しているマリウポリには――
ベンドルさん
「(マリウポリは)1週間以上も物資が入って来ていない状況なので、すべてが足りません。水も食料もシェルターも、何もありません。街の至るところに遺体があります。庭に穴を掘って、1つの穴に複数人埋めなければならない場合もあるようです」
負傷者の急増に対応するため、戦地に特化した技術を医師らに教えているといいます。
ベンドルさん
「我々はこういう状況(戦地)に常に対処しているので、このノウハウを現地スタッフに伝えていきたいと思っています」
◇
国外へ逃れた人の多くも、衛生環境の悪い中での生活を強いられています。
ウクライナに父を残し、ポーランドで2週間ほど避難生活が続く、5歳のヴィカちゃんの一家。14日に取材したときには、長引く避難生活でヴィカちゃんが体調不良になっていました。
18日は回復し、笑顔を見せていましたが、その後、兄のアルテムくんも胃腸炎になったといいます。
過酷な避難生活。19日からは、ボランティアの家庭に身を寄せるため、ドイツへ向かうといいます。
ヴィカちゃんの兄 アルテムくん
「(ドイツには)家とベッドがあるから、やっとたくさん寝られるよ」
それでも、恋しいのは――
アルテムくん
「(ウクライナの)おうちに帰りたい。パパのこと、おばさん、おばあちゃん、おじいちゃんのこと、祈らなきゃ」
「ママ、パパのところに戻れる?」
母
「いつになるか分からないけど、もちろん戻れるよ。もうちょっと我慢しないとね」
UNHCR(=国連難民高等弁務官事務所)によると、18日時点でウクライナ国外への避難者は327万人を超えています。
(3月18日放送『news zero』より)