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キエフの防空壕に“希望”……「アナ雪」歌う少女に涙と「ブラボー」 ハリコフではバイオリン演奏も 「人道回廊」10ルート合意

2022年3月10日 11:47

ウクライナの首都キエフや、第二の都市ハリコフでは、市民が防空壕で身を寄せ合う生活を強いられていますが、優しい歌や音楽で周囲に希望を与える人たちがいます。バイオリン奏者の女性に日本時間9日夜、現地の様子を聞きました。女性の願いとは―?

■防空壕に少女の歌声…涙する人も

ウクライナで防空壕などに身を寄せ合う市民は、希望を失っていません。

首都キエフでは、1人の少女が立ち上がりました。「これから彼女はみんなの士気を高めるために、歌を歌ってくれます」と動画の撮影者が言いました。

少女は映画『アナと雪の女王』の主題歌『Let It Go』を歌い、その優しい歌声に騒がしかった防空壕内は静まり返りました。涙する人の姿もありました。歌い終えると「ブラボー、ブラボー!」の声が上がり、拍手に包まれました。

■SNSにも…毎晩バイオリンの音色

第二の都市ハリコフでは、ハリコフ地域国家管理局長のテレグラムによると、24時間の間に50回以上のミサイルや大砲の砲撃がありました。

この街にも、防空壕に避難しながら、希望を与え続ける女性がいます。これまで何度も来日したことがある、バイオリン奏者のヴィラ・リトフチェンコさん(39)です。

「こんにちは! 今、ハリコフにある家にいます。数分のみは安全です。またいつ爆撃が始まるか分かりません」

ヴィラさんは毎晩、防空壕の中で演奏。その様子をSNSに投稿し、同じく苦しい状況にいる人たちに優しい音色を届けています。

■「日本が大好き」ヴィラさんの願い

日本時間の9日夜、取材に応じてくれたヴィラさんは「私たちはほとんどの時間、ここ(防空壕)で過ごしています。1日に約2時間、朝早く、爆撃が終わった時、上に上がり、シャワーを浴びたり、歯を磨いたり…」と言いました。

地上にいられる時間は、1日に2時間のみです。防空壕の中は安全だといいますが、ロシア軍の攻撃でネット環境は不安定な状態です。

ヴィラさん
「今ちょうど爆撃があって、インターネットがつながらなくなりました」

岩本乃蒼アナウンサーが「今近くで砲撃があったかもしれないということですか?」と聞くと、しばらくして画面が固まり、回線が落ちてしまいました。いつ、何が起こるか分からない緊張感があります。

岩本アナウンサー
「とてもインターネットの状況が悪いので、最後に伝えたいことがあれば、と思ったのですが…」

ヴィラさん
「私は日本が大好きです。また皆さんの国へ行くことができること、夢見ています。この戦争が終わること、それ以上何もいりません。それだけです」

■「人道回廊」拡大…10ルートで合意

少しでも市民の犠牲を減らすため、これまで度々実現に失敗していた人道回廊について、8日は北東部スムイで初めて実施されました。約5000人が避難しました。

さらに9日になって、人道回廊のルートは拡大しました。ロシア、ウクライナ両国は、スムイを含む10ルートを設置することで合意しました。

ロシア軍に包囲され、食料が不足するマリウポリにも設置。これまでロシアが主張してきたロシアへのルートは含まれず、全てウクライナ国内への避難になるといいます。

■「侵略の代償」…米英、追加で制裁

こうした中、ロシア軍の「侵略の代償」として、アメリカが追加の経済制裁に踏み切りました。

バイデン大統領
「われわれはロシアからの原油・天然ガス・エネルギーの全ての輸入を禁止する」

演説で「ロシア経済の大動脈を標的にする」と訴えました。

さらにイギリスも、今後ロシア産の石油などの輸入を段階的に減らし、今年末までに停止すると表明しました。

(3月9日『news zero』より)