ウクライナ「戦災」「心の傷」をデジタルアーカイブに……地下に子供監禁、「ママ愛しています」も3D化 東大教授が現地と連携
東京大学大学院の教授が、衛星画像でウクライナの被害の実態を記録しています。また現地のクリエイターと連携し、人工衛星には映らないデータも使って3D化。地下室で監禁されていた子供の心の傷までも、デジタルアーカイブにして伝えています。
■砲撃後の様子も…衛星画像で被害記録
東京大学本郷キャンパスに19日、同大大学院の渡邉英徳教授を訪ねました。衛星画像を使ってウクライナの被害の実態を記録しています。
渡邉教授は、ウクライナ東部・ドネツク州にあるソレダールの町を1月7日に撮影した衛星画像を示しました。「黒い点がたくさんあります。これは雪が降った後に砲撃が行われて穴が開いたので、真っ黒になっているんです」と説明しました。
■ウクライナのクリエイターと連携
渡邉教授は3Dデータを活用した記録も示し、「こちらはより詳細ですね。(家の)中の家具が全て記録されています」と言いました。「当然、人工衛星には映らないんですよね。現地で足を運んで記録する方々がいるからこそ、こうしたデータが残されています」
ウクライナ・キーウとのリモートで、3Dクリエイターのヤロスラフさん(30)に話を聞きました。「戦争がもたらした結果のデジタルアーカイブを作るために、被害をデジタル化しています」と言います。
■地下室の壁に残る絵とメッセージ
ヤロスラフさんは去年11月、チェルニヒウ州の村にある小学校を訪れました。扉には、「子供たちがいる」との言葉がありました。地下へ降りると、村の住民が「私たちは地下室で拘束されていたのです」と明かしました。
ウクライナ側によると、この村ではロシア軍によって300人以上が約1か月にわたり監禁され、子供を含む11人が亡くなったといいます。
地下室の壁には、子供たちが描いたとみられるたくさんの絵やメッセージが残されていました。「どんな状況の時に描かれたのかを想像しました。言葉にできないことです」とヤロスラフさん。
■渡邉教授「いつまでもデータで体験」
ヤロスラフさんが作った3Dデータでは、地下室にあった絵も記録されていました。渡邉教授は「砲撃を受けた後のきのこ雲が描かれていて、(絵に)道路がありますから、地下を掘って脱出しようという相談を子供たちがしていたのかなと(思います)」と話しました。
この3Dデータからは、「ママ愛しています」「わたし、あなたを愛していますママ」という文字も読み取ることができました。
3Dに残された、確かな記録。渡邉教授は「歴史のなかで埋もれていってしまうものかもしれない。でもこの時に子供たちや市民の方々が受けた心の傷が、いつまでも3Dのデータで体験できる形で残していける」と意義を語ります。
(1月20日『news zero』より)