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プーチン氏に近い「オリガルヒ」の実態は?

2022年3月4日 22:25
プーチン氏に近い「オリガルヒ」の実態は?
2022年3月2日「深層NEWS」より

激化するロシアによるウクライナ侵攻に歯止めをかけるべく、国際社会はロシア政府やプーチン大統領などへ様々な経済制裁を発動しています。
中でもアメリカのバイデン大統領は一般教書演説で「オリガルヒ」への制裁強化を表明。
筑波大学准教授の東野篤子さん、第一生命経済研究所首席エコノミスト熊野英生さんをゲストに、プーチン氏を資金面で支えているとされる新興財閥オーナー「オリガルヒ」の実態に迫りました。

右松健太キャスター
「『オリガルヒ』とは、ソ連崩壊の混乱に乗じて国営企業を安値で獲得し財をなした新興財閥のオーナーのことを指します。このオリガルヒから、実は停戦を求める声が上がってきています」

笹崎里菜アナウンサー
「CNNによりますと、ウクライナ侵攻の中止を求めたのは、ロシア実業界の大物として知られるミハイル・フリードマン氏とオレグ・デリパスカ氏です。フリードマン氏は、ロシア4位の金融機関、アルファ銀行の会長。デリパスカ氏は『アルミ王』と呼ばれています。『オリガルヒ』とも呼ばれるこの2人はプーチン大統領に近い人物とされていますが、どんな関係なのか」

筑波大学准教授東野篤子氏
「オリガルヒとプーチン大統領は、持ちつ持たれつという感じでプーチン大統領がオリガルヒに便宜を供与する代わりに、オリガルヒがプーチン大統領に資金提供していたという関係です」

右松キャスター
「オリガルヒについてバイデン大統領は一般教書演説で『この狂暴な政権を使って、何十億ドルもの稼ぎを得たオリガルヒと、腐敗したリーダーたちに対してこれ以上は許さないと宣言する』『司法省はオリガルヒの犯罪を追及する専門のタスクフォースを組織している。我々はヨーロッパの同盟国と共に、彼らのヨットや高級マンションやプライベートジェットを見つけ出し差し押さえていく。我々は彼らの不当な利益を追及していく』と言及している」

東野氏
「今回の軍事侵攻で軍隊だけに目がいきがちなのですが、やはりG7諸国やEU諸国は、このロシアの脅威の元とは何だろうかということを考えたときに、必ずしも軍事力だけではなく、このオリガルヒの不正な資金などの存在もヨーロッパや国際社会を脅かしているんだと考えていたわけです」

右松キャスター
「そのオリガルヒの中から停戦を求める声も」

東野氏
「あくまでも(プーチン氏とオリガルヒとは)便宜上で繋がった関係です。この軍事侵攻でオリガルヒに一体何のメリットがあるのかということを考えると、やはり経済的に大打撃を受ける(デメリット)しか考えられないわけです」
「そうなってくるとプーチン大統領に直接『やめた方がいいんじゃないか』『これはロシアにとって、我々にとっても利益にならない』ということを直言するようになってきたということです」
「このようなオリガルヒとプーチンの軋轢というのは今までもなかったわけではないですし、時々表面化するんですけれども、今回はかなりあからさまな形で表面化していると思われます」

右松キャスター
「ヨーロッパの経済社会においてオリガルヒの存在というのは」

第一生命経済研究所首席エコノミスト熊野英生氏
「ロシアは大国ですが、このようなオリガルヒとの図式を見ると、よくある新興国の図式なんです。強大に見えるプーチン氏というのは、実はこのような財閥が支えているということなのです。これはまさに『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』という話です」
「おそらく政治的にはプーチン氏は折れない。どんなに経済制裁で国が疲弊しようとも折れない(と米欧は見ている)。ならば『馬を射よ』ということでスポンサーの人たちを兵糧攻めにすると」
「ドルという覇権の力を持っているアメリカはこのような財閥の財産を凍結すると、プーチン氏は音を上げなくてもスポンサーが音を上げるので、プーチン氏も屈服するだろうというのがバイデン大統領の読みだと思います」

飯塚恵子読売新聞編集委員
「オリガルヒがプーチン氏に対する経済制裁の抜け道にもなっていると思います。プーチン氏はものすごく質素な生活してるってことに公にはなってるんですよね。しかし実はプーチンパレスのような建物が黒海の沿岸にあったりするわけですが」

「おそらく西側社会でも最も有名なオリガルヒは、元々石油王で、サッカーのイングランドプレミアリーグのクラブチーム『チェルシー』を持つロマン・アブラモビッチ氏でしょう。2003年に名門チームを買収した際は、私はロンドンにいたのですが、このニュースで埋め尽くされました」

「いまもプーチン氏と彼は良好な関係を維持しているのですが、今回の侵攻3日目、2月26日にチェルシーの経営から離れると発表したんです。表舞台からひとまず退くかと思われました」
「イギリス国内の報道によると、侵攻の8日前に、オフショア企業を通じて持っていたロシア大手鉄鋼メーカーの株式を、自分自身に譲渡し名義変更していたことが判明しました。侵攻が行われる8日前に資産差し押さえへの対抗策を打っていたと」
「つまり世界はまだ知らなかったウクライナ侵攻を、この人は知ってたのかもしれないと今言われてるのです」
「もっと言うとこの鉄鋼メーカーは、ロシア軍の戦車のための材料を製造する工場なのです。どこまでも癒着の関係が続いているという象徴のような人なんです。この例を見てもオリガルヒの存在がどのぐらいすごいものかというのがわかると思います」

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