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バイデン氏のG7欠席は本当にあるのか?米債務上限問題のポイントを解説

2023年5月13日 12:02
バイデン氏のG7欠席は本当にあるのか?米債務上限問題のポイントを解説
バイデン大統領は、債務上限引き上げ交渉の情勢次第で、G7広島サミットにオンラインで参加する可能性を示唆した

バイデン大統領がG7広島サミットを欠席する可能性に触れたことで、改めて大きく注目されているアメリカの債務上限引き上げ問題。デフォルト=債務不履行が世界に及ぼす影響や交渉の状況を改めて整理し、大統領が予定通りに日本に行けるのかを分析する。(ワシントン支局・渡邊翔)

■債務上限交渉でG7欠席も…? ホワイトハウスは以前から万一の事態想定か

「(欠席する)可能性はある」

9日のバイデン大統領の発言が、日本政府や日本メディアを驚かせた。債務上限引き上げをめぐる野党との交渉が進展しない場合、19日から始まるG7広島サミットへの対面出席を見合わせる可能性に言及したのだ。翌10日には「交渉の状況次第では、オンラインで参加せざるを得ない可能性もある」とも述べ、日本側には何ともいえない不安感が広がった。

現在、アメリカの内政最大の問題となっている債務上限の引き上げ。連邦政府が国債発行によって借りられる債務の総額が法律で定められているアメリカでは、1月に債務総額が上限の約31兆4000億ドルに到達。財務省は、議会が債務上限の引き上げなどに応じなければ、来月1日にも債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあると警告している。無条件での引き上げを求めるバイデン政権と、政府の歳出削減が条件だとする野党・共和党との協議は、依然妥協点を見いだせていない。

実はホワイトハウスは、少なくとも5月初めの時点で、すでに万一の場合に備えた頭の体操をしていた節がある。5月初旬、ある外交筋が記者にこう語った。「ホワイトハウスと話したが、現時点でまだ、バイデン大統領の日本訪問は確定したわけではないと言うんだ。債務上限問題の解決の糸口が見えないままなら、スケジュールに変更が出たり、最悪欠席という選択肢もゼロではないということらしい」

この人物は、過去にオバマ大統領やクリントン大統領が、債務上限問題や予算協議の行き詰まりを理由にアジア訪問・国際会議出席を見送った「先例」を挙げた。この時は記者も「まさか」と思ったが、翌週にバイデン氏本人が欠席の可能性に言及。内政問題が外交より重視されるという、政治の現実を目の当たりにすることになった。

バイデン大統領は、債務上限問題は「世界にとっての問題だ」と指摘しているが、実際にデフォルトに陥ると何が起きるのか。

ホワイトハウスは5月初旬に、デフォルトの影響について専門家の分析を公表した。ムーディーズの分析を引用し「短期間のデフォルトでも、実質GDPが減少し、200万人近い雇用が失われ、失業率が5%近くまで上昇する」とした他、「デフォルトが長期化した場合、大不況並みの景気後退が起こる」などと警告している。また、アメリカの国債の格付けが下がることになれば、銀行破綻が相次ぐ中、国債を保有するアメリカの銀行経営がさらに悪化するリスクもある。国際金融市場の混乱や、新興・途上国からの資本流出を招く恐れも指摘されている。

一方、住宅ローンやクレジットカードなどの金利の上昇は、家計にも打撃を与える。さらに政府職員の給与や社会保障給付、メディケア(医療保険)の支払いや軍人年金など、人々が受け取る給付が滞るリスクもあり、国民生活にも大きな影響が出かねない。

アメリカの信頼低下は外交にもマイナスだ。ホワイトハウスのカービー戦略調整官は12日「アメリカは世界の平和と安全のための、安定したリーダーではない、と言いたくて仕方がないロシアや中国などに、間違ったメッセージを送ることになる」と警鐘を鳴らした。

■なぜ、交渉がここまで膠着状態になっているのか

今回、バイデン政権と共和党の交渉が膠着しているのにはふたつの理由がある。

ひとつめは、議会で野党・共和党が下院の多数派を握る「ねじれ」状態になっていること。債務上限引き上げには共和党の協力が不可欠になるが、近年党派対立がますます深まる中、そもそも債務上限に限らず、超党派での合意形成は難しい。さらに専門家は「債務上限の問題は、双方とも、先に譲歩しても得るメリットはない」と指摘する。

そしてもうひとつは、バイデン大統領と、共和党の交渉の先頭に立つマッカーシー下院議長が、共に党内基盤に不安を抱えている点だ。

バイデン大統領は4月末に来年の大統領選挙への再出馬を正式表明したばかりだが、直後のワシントンポストなどの世論調査で支持率が過去最低を更新し、トランプ前大統領との対決を想定した設問でも支持率で後れを取った。逆風の中で、安易な妥協をすれば、党内から批判の声が顕在化する恐れもある。

対するマッカーシー議長も求心力不足が指摘される。1月の議長選挙では15回の投票の末にようやく議長に選出されたが、その際に、共和党の保守強硬派から支持を得るために「大幅な歳出削減とセットでなければ、債務上限引き上げを認めない」と約束したと報じられている。下院での共和党の議席数は、過半数(218議席)をわずかに上回る222議席。こちらも今後の党内運営を考えれば、そう簡単に妥協はできない状況だ。

こうした中、両者が折り合わない場合の「奇策」も取りざたされてる。たとえば、財務長官の記念通貨発行権を使って、「1兆ドルのコイン」を発行し、政府の資産額を増やすという案。さらに、「公的債務の効力が問われてはならない」というアメリカ憲法修正14条を用いて「政府は議会の合意がなくても、債務の支払いを続けられる」と解釈するという案も取りざたされている。ただ、バイデン政権高官やFRB=連邦準備制度理事会の幹部は、いずれの案にも否定的な反応を示している。

アメリカでは債務上限問題で毎回、ギリギリまで与野党が妥協せず、交渉が長引く傾向にある。G7広島サミットを控えたタイミングで交渉の山場が来てしまった状況に、ある日米外交筋は、「アメリカの内政の問題なので、黙ってアメリカの動きを見ているしかない」としつつも、「毎回毎回、何やっているんだろうとも思う。債務上限問題は、外国人が理解できないアメリカの七不思議のひとつだ」とため息をつく。一方で、議会を長年取材するアメリカの記者は「これが議会というもの。今回もある意味、これまでと何も変わらない」と、達観したように語った。

さて、実際問題、バイデン大統領はサミット欠席の可能性について、どう考えているのだろうか。大統領は債務上限問題を「最重要の問題だ」と強調しているが、大統領に近い高官は周辺に対し「大統領は、予定通り日本などを訪問する気満々だ」と語っているという。ただ、その思い通り日本に行けるかは、来週前半に調整されている共和党幹部との再協議の行方次第でもある。次の協議で目に見える進展があるのか。アメリカ国民だけでなく、日本政府も固唾を呑んで見守っている。