JAL成田空港“グラハン”どんな仕事? 育児と両立可能な働き方へ…桐谷キャスター特別取材『every.特集』

日本の空の玄関口、成田空港。普段は一般の人の立ち入りが制限されている駐機場。今回、特別に取材させてもらいました。
桐谷美玲キャスター
「すごいですね、迫力が」
ここからは、蛍光ベストとヘルメットを着用します。
出発前の飛行機。荷物を積み込んだり、乗客が機内に乗り込んだあとタラップを外したり。
忙しく動き回るのは、飛行機の離着陸を支える「グランドハンドリング」通称“グラハン”と呼ばれるスタッフたちです。
桐谷キャスター
「飛行機ってバックできないんですね。知らなかったです」
機体によっては出発時、200トン以上になることも。自力でバックできないため、出発する位置まで押し出すのも、グラハンの仕事。飛行機を押す車に乗せてもらいました。
桐谷キャスター
「飛行機をこの角度でみたことがない…初めてです。本当に貴重ですね」
機体の迫力に圧倒されたところで、いざ!
桐谷キャスター
「動いた」
風向きや天候にあわせて飛行機を押す向きを調整するなど、高度なテクニックが必要です。正確に出発地点まで誘導し、無事、見送ることができました。
ひとつの便に、約5人のチームで対応するグラハン。こちらのチームにはある特徴が。
桐谷キャスター
「見ていると女性が多いですね」
実は、JAL成田空港のこちらのチーム、みんな育児中のスタッフなんです。
24時間365日稼働するグラハン。このチームは、主に朝8時半から午後5時ごろまでの勤務で、土日は休み。男女問わず、育児をする人が利用できます。
桐谷キャスター
「こんにちは、桐谷美玲です」
樋口さん
「樋口です。よろしくお願いします」
チームで働く、樋口瑶美さん。約3年の産休・育休を経て、今は5歳と3歳の女の子を育てながら働いています。
樋口さん
「おはようございます」
まずは、朝のミーティング。
チーム
「ストレッチいきまーす」
力仕事が多いため、準備体操は入念に。
チーム
「ストッパーよし!」
樋口さんがこの便で担当していたのは、“インターホン”と呼ばれる業務。
パイロットや整備士と無線で連絡を取り合いながら、地上の準備状況や出発のタイミングを伝える重要な役割です。
樋口さん
「コックピット、グランド、オールエンジン、レディーフォースタート」
「いってらっしゃい!」
さらに、こちらの便では、飛行機から降ろした貨物を運びます。
桐谷キャスター
「きょうはどれくらい重いですか?」
樋口さん
「7トンちょっとかな」
桐谷キャスター
「7トン…」
樋口さん
「右よし、左よし、前方よし」
ひとつひとつの作業が飛行機の安全に大きく影響し、ドアの開け閉めにも資格が必要なグラハンの仕事。入社12年目の樋口さんは、約40の資格を取得しています。
男性が圧倒的に多いグラハン。女性は1割ほどです。
育児中であっても、“積み上げてきたキャリアを途切れさせたくない”。女性社員たちが会社に要望し、このチームを誕生させました。
桂 哲也 課長
「なんとか自分たちでチームとして働きたい。ママさんたちから、こういうふうにやりたいと強い気持ちがあった」
今は、制度を利用する男性のグラハンはいません。育児中の父親や介護をする人などにも広げたいとしています。
桐谷キャスター
「産休・育休、そのときの気持ちはどうでしたか」
3歳と5歳の子を育てる 樋口さん
「今までキャリアを積み重ねてきたので正直、復帰後の不安はかなり大きかったが、育休後もちゃんと仕事ができる環境が整っていたので」
6歳と9歳の子を育てる 八木さん
「すぐ現場に入りやすい、戻ってきやすい環境にあった」
働く上でのメリットは…
八木さん
「子供の突発的な休み、電話が保育園からあったり、学校から電話くると、申し訳ないけど休みやすい環境にはある」
育児をする者同士でフォロー。他のチームとの連携もとりやすい環境だといいます。そして…
樋口さん
「子供の相談をしあえるのが一番大きい。年頃の悩みってあるじゃないですか」
桐谷キャスター
「ありますね」
樋口さん
「あとは家事を完璧にやるのをやめました」
桐谷キャスター
「わかります。無理ですよね」
樋口さん
「『あしたでいいや』にすることで、子供と少しでも5分でも10分でも時間がとれるならそれでいい。そっちが優先かなって」
桐谷キャスター
「私も家事は…掃除機、一日かけなくても死なないやって…思いながら生活しています」
樋口さんは、このチームがあることでキャリアを途切れさせず、さらなる高みにも挑戦しています。
樋口さん
「作業責任者のマークです。かなり勉強しました。時には納豆ごはんでごめんねっていう日もありながら、頑張ってとった資格です」
JAL成田空港でこの資格を持つのは、グラハンの15%だけ。
樋口さんは、入社以来の夢を叶え、チームを率いるリーダーとなりました。
午後5時すぎ、仕事を終えた樋口さん。
樋口さん
「保育園のお迎えにいってきます」
記者
「仕事が終わったという達成感は?」
樋口さん
「それよりは、ご飯つくらなきゃというほうが私のなかでは大きい」
子どもの待つ保育園へ急いで向かいます。
樋口さん
「おかえり」
娘
「見て、写真写真!」
樋口さん
「おうち帰ったらよく見せて」
娘
「みてみて、ほら」
樋口さん
「いっぱいだね」
先生
「ばいばい!」
樋口さん
「ありがとうございます、さようなら」
仕事後も続く、樋口さんの奮闘。平日も夕食は手作りがマイルール。育児をしながら、これからもキャリアを積み重ねていきます。
ライフステージの変化にあわせ、さらに柔軟な働き方を可能にする会社も。(東京・渋谷区 ドクタートラスト)
ドクタートラスト 須田 敦子 人事部長
「短時間正社員というものを導入しています」
産業医などを企業に紹介するこちらの会社では、正社員のまま、働く日数や勤務時間を減らせる「短時間正社員」の制度を導入しています。
日本茶専門店の家業と両立するため、週3日勤務の宮野さん。
宮野 友里加さん
「実家の働き手が少なくなってしまったので、そちらも手伝いつつ、こちらでもまだ働きたい気持ちがあったので」
いずれは家業を継ぎたいけれど、今の仕事でまだ経験を積みたい。柔軟な働き方で両立していました。
他にも、子どもの健康上の理由で、1日4時間勤務を選択する父親などが利用。正社員であるため、働き方に関係なく、賞与や福利厚生も受けられます。
社員からの要望で生まれたこの制度。導入により、人材流出も防げているといいます。
須田 人事部長
「いろいろなライフステージをみなさん迎えられる。働き続けたいという気持ちがある限りは、会社として働くことを諦めないように制度を作っていく」
誰にでも訪れるライフステージの変化。
いろいろな選択をしながら働く社員のキャリアが途切れることのないように、企業も模索を続けています。
(3月20日放送『news every.』より)