「志望校に行けない」名鉄広見線に迫る廃線の危機、子どもたちの進路に影響する可能性も…存続の条件は“自治体の負担増”

長年地域を支えてきた、岐阜のローカル線に迫る“廃線の危機“。子どもたちの進路にも大きな影響を及ぼしかねない事態に、示されている2つの選択肢とは。
愛知県犬山市から岐阜県御嵩町までを結ぶ、名鉄広見線。朝の御嵩駅では、通勤客や学生の姿が見られるのが日常です。
そんななか、町民たちからは、「もしなくなったら、通勤どうするんだろうって」、「僕としては困ります。代行手段がなければ、どうしようかなと考えているところ」など不安な声が。
実は今、可児市から御嵩町までの一部区間で“廃線”が検討されているのです。
新可児駅から御嵩駅までの7.4キロの区間は、利用客の減少で年間約2億円の赤字路線。御嵩町と可児市で、年間合わせて1億円の支援をすることで運行が続いています。
しかし、名鉄は来年4月以降の存続には、追加の設備投資費用が必要などとして、現状のままでは運行を継続できない意向を示しています。
廃線の危機について町民からは、「弟は中学3年生になるので、遠くの高校に行きたいと言っている。それができなくなるとかわいそうだな」と、子どもたちの進路への影響を心配する声も。
御嵩町や名鉄などが絞った選択肢は、「沿線自治体で年間1億8300万円を負担して存続」、「鉄道を廃止してバス路線へ」の2つ。バス路線となった場合、運行時間が倍になるなどの懸念もあります。
存続求める請願書は“賛成多数”で採択へ
「今利用している高校生の方、これから高校生になって利用する方、そういう子どもたちのためにも、ぜひ残してあげたいなと思っています」と話すのは、『名鉄広見線を守ろう会』代表・伊藤也寸志さん。
“将来世代のために名鉄広見線を存続させたい”
その思いで2007年から地元で活動を続けてきました。
今月12日、伊藤さんらは存続を求める7000人以上の署名や請願書を町に提出。今月19日、その請願書が町議会で審議されることになりました。
【反対派】清水亮太議員:
「財政上の確認がまだとれていない」
「(名鉄に)提示されている金額をお支払いするくらいなら、子どもたちに直接使ってほしい。そういった声も当然あります」
【賛成派】谷口鈴男議員:
「今の段階でその財源を盾にして、民意を遮断するということはいかがなものかと考えます」
「どうしても残していただきたい、というのが本音であります」
反対と賛成、それぞれ議論が飛び交った町議会。議論の結果、賛成多数で伊藤さんらの請願書は採択されました。
町議会後、『名鉄広見線を守ろう会』伊藤さんは、「ホッとしております、ありがたいことだと思っています」と話し、続けて「可児市さんにもコスト協力をお願いして、みんなで少しずつ負担してもらえる方向をとってもらえればと思います」と期待を高めました。
この結果に御嵩町の渡辺幸伸町長は、「議会としての意思を、重く受け止めていきたいと思っております」とコメント。御嵩町などは、今年6月をめどに廃線について結論を出す方針です。
廃線の危機に直面しているのは、名鉄広見線だけではありません。
美濃加茂市から郡上市までをつなぐ「長良川鉄道」も、実は廃線の危機に直面している路線のひとつ。郡上踊りの際、観光客も多く利用する鉄道ですが、社長でもある関市の山下市長が、一部区間の廃線を検討していることを発表。しかし、廃線を検討している具体的な区間は未定となっています。
名鉄広見線も、長良川鉄道も廃線の検討理由は共通。それは、利用者が減少し、赤字が続いていること。また、どちらも地元の学生が多く利用しているといいます。
“残すためにどうするべきか” 各自治体で検討が重ねられています。