【解説】「103万円の壁」妥協点はどこに? 引き上げめぐり協議は打ち切りに
いわゆる103万円の壁の引き上げをめぐり、自民・公明の与党と国民民主党は17日、6度目の協議を行いました。しかし冒頭で国民民主側が退出し、協議は打ち切りとなりました。103万円の壁をめぐる議論は、今後どうなるのか。日本テレビ政治部・官邸キャップの平本典昭記者が、次の3つの疑問について解説します。
1.何が?協議打ち切り…現場は騒然
2.国民民主が”激怒”した言葉とは?
3.見えない妥協点…どうなる?決着
鈴江奈々キャスター
「現場は協議打ち切りで騒然したということですが、なぜ打ち切りとなったのでしょうか?」
政治部官邸キャップ・平本典昭記者
「自民党と国民民主党は『103万円を来年から引き上げる』ことでは合意していました。ただ、いくらまで引き上げるかの協議が続いていて、国民民主党は178万円、自民党は123万円を主張。これが先週まででした。ここから17日に協議が本格化する中で、落とし所はどうなるのかと取材していたら、1時間の協議がなんと10分で終わったと。国民民主党の担当者が『打ち切りだ』と捨てぜりふを吐いて、部屋を出て行ってしまったようなんです」
「取材していた記者に現場の雰囲気を聞いたら、“予想外”の展開で『え、もう終わっちゃうの?』と、現場は一時騒然としたそうです。ある国民民主党の幹部は『もう協議は意味はない、終わり』だと。自民党側も『もう付き合いきれない』と、打ち切りになったわけです」
鈴江キャスター
「協議が決裂した背景に、何があったのか気になりますが、国民民主党が“激怒した”言葉があったんですね?」
平本記者
「17日の交渉で、自民党が国民民主党に交渉のゴールはどこかを聞こうと、こう言ったそうです。ゴルフにたとえて『グリーンは一体どこですか?』と。この言葉に、国民民主党側が激怒したらしいんです。玉木代表(役職停止中)はゴール、つまり『グリーンは178万円に決まっている』、今更、何を言ってるんだと怒ったそうです」
「この対立の背景には、お互いのプライドのぶつかり合いがあると言えます。自民党としては政権与党として、長年にわたって公平、公正な税を決めてきた『税のプロ』としてのプライドがあります。一方、国民民主党としては、先の衆院選で選挙で支持を得た『世論の代表』としてのプライドがあるわけです。プライドがぶつかり合い、お互いが引くに引けない状況に陥っている、と言えます」
鈴江キャスター
「妥協点は、見つけられるのでしょうか?」
平本記者
「妥協点を見つけるにあたって、自民党と国民民主党、双方の裏側の思惑を解説します。自民党内、特に協議の現場、最前線からは、交渉を終了して『123万円で与党内だけをまとめ、来年度の予算案を編成する』との強硬論もあります。なんとか今週中に決定したいという焦りもあります。ただ石破首相の周辺からは『ここで国民民主と決裂したら、政権自体が行き詰まる』と弱気の声もあります。現場は強気な一方で、政権を担う石破首相チームは心配そうに見守っているのが、自民党の現状です」
「こうした『温度差』を国民民主党側もわかっているようです。ある国民民主党の幹部は『123万円のラインは交渉現場と財務省の意見だ。石破首相は安定した政権運営のために、まだ折れてくる』と話しています。さらに、最新情報として、自民党側も国民民主党側が歩み寄ってくれば『123万円からあげる用意はある』との声も出るなど、双方の神経戦が続いています」
鈴江キャスター
「交渉の最中であることはわかりましたが、所得税の課税ラインは、わたしたちの暮らしにとても大きな影響を及ぼすので、建設的な議論を進めてもらいたいですね」
平本記者
「その通りですね。少数与党の国会で、103万円の壁の引き上げ自体までは決まりました。国民民主党の主張通り178万円まであげると7.6兆円の財源が必要という中で、財源をどうするのかという議論は深まっていません。どこまでのラインを引けばいくら必要で、そのためにどう財源を賄うのか。お互いのプライドを捨てて、冷静に政策議論を進めてほしいと思います」