堀内ワクチン相を擁護?河野前ワクチン相がツイート…その真意とは
堀内ワクチン担当相の発信力不足に厳しい声があがる中、前ワクチン担当相の河野氏が「私の時のワクチン担当大臣と今の堀内大臣は役割が違うという前提で議論しないとフェアじゃない」などとツイート。その真意は。
■発信力は対極…2人のワクチン相
「堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…」こう題して、河野前ワクチン担当相が、堀内ワクチン担当相への“発信力不足批判”に対して、Twitterで持論を展開した。
去年10月にワクチン相に就任してからもなお「ワクチン相の顔が見えない」と野党から追及を受けている堀内氏。堀内氏周辺は「発信をどんどんしていかないとまずい」と焦りの色を隠せない。
前任の河野氏は、Twitterで242万人以上のフォロワーがおり、国会議員の中でも発信力は群を抜く。ワクチン相として、ワクチン接種に関する発信も精力的に行っていた。
「自分の言葉で発信するのは得意ではない」と周辺に評される堀内氏とは、いわば対極の存在とも言えるだろう。
その堀内氏を擁護するように、河野氏は、5日、Twitterにこう投稿した。
「堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…私の時と比べてワクチンチームの人数が激減。私の時はチームは大臣室の隣にいたけれど、今は隣の建物の地下。厚労省が情報を出さない。最終的な決定権がない。都道府県とのリエゾンチームが解散させられた。ワクチンメーカーとの交渉が一元化されていない」
「それじゃ私だって仕事できないよ」
「つまり私の時のワクチン担当大臣と今の堀内大臣は役割が違うという前提で議論しないとフェアじゃない」
「ワクチン担当大臣と厚労大臣その他の役割分担が変わっているということ」
■進む政府内の分業制
河野氏が指摘するように、政府内の体制は変わったのだろうか。
関係者は「大臣としての形式的な所掌は変わってないが、業務内容は、事実上変わった」と解説する。
ワクチンが接種されるまでには、ワクチンの確保、流通、自治体との調整など、さまざまなプロセスがあるため、政府内では厚生労働省、国土交通省、経済産業省など多くの役所が同時進行で業務を進めているのが実情だ。
政府関係者によると、菅政権時代には、河野氏がワクチンメーカーとの交渉や職域接種、自治体との向き合いなどを事実上、担当していたが、現在は、これらの業務を厚労省が担当しているため、堀内氏は、主に自治体との向き合いや国民への発信に重きを置いているという。
政府関係者は「河野氏は、ファイザーとの交渉や職域接種、自治体へのワクチン配分など、どんどん厚労省から自分の担当にして仕事を進めた。その結果、所掌が広がり体制も拡充されていった」と話す。
■自治体リエゾンチームの解散
実際に、河野氏の時代に比べ、体制縮小も進んでいった。最たる例が、自治体からのリエゾンチームの解散だ。
リエゾンチームとは、各自治体から厚労省に派遣された職員で構成された組織のことで、国と自治体の間で各種調整を行う役割を担っていた。
しかし、最大52人いた職員は各自治体に帰任。去年12月にチームは解散した。現在は、厚労省の職員13人で対応しているという。
後藤厚労相は、国会でその理由について「1日で200問を超える問い合わせがあったが、現在は、20問程度になっている」と説明した。
関係者は「自治体との連携がしにくくなっている。ただ、オミクロン株は間もなくピークアウトを迎えるので今から呼ぶのでは遅い」と話す。
■離れたワクチンチーム 首相が引っ越し命令も?
また河野氏は、ワクチン相の下で業務を行う、ワクチンチームが、自身がワクチン相の時は、隣の部屋だったのに、隣の建物の地下に移動してしまったともツイートで指摘。
河野氏は、業務の進捗(しんちょく)を確認するため隣の部屋によく足を運んでおり、職員とコミュニケーションもとっていた。
それが難しくなっていることに疑問を呈した形だ。
これにいち早く反応したのが、岸田首相。
改善を図るためか、早速、ワクチンチームをワクチン相と同じフロアの部屋に引っ越すよう、7日、急きょ命じたという。
こういった異なる環境の中、堀内氏を自身と比較するのはおかしいというのが河野氏の主張のようだ。
事実、「このままだと堀内大臣が良いところなく終わってしまう。かわいそうだ」と周辺に漏らしているという。
しかし、いずれにしてもワクチン接種を促進するために、発信すべき立場のワクチン相が、効果的な発信をできていないのは、大きな課題だ。
堀内氏周辺は「堀内大臣は一生懸命業務に取り組んでいる。堀内大臣の良さは、懸命に物事に取り組むところと人柄の良さだ。そうした点に共感して、国民が接種に積極的になってくれたらうれしい」と話す。
岸田首相が7日、1日100万回接種を目標として新たに掲げた。
「モデルナの副反応が怖い」「軽症で済むならワクチン接種をしたくない」など国民にさまざまな思いがある中、3回目接種を促進することができるのか。
ワクチン相としての発信力が今こそ問われている。