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茂木派パーティー開催も…岸田首相は「うかうかしていられない」とけん制 “ポスト岸田”候補・茂木氏の現状と課題

2023年5月13日 8:30
茂木派パーティー開催も…岸田首相は「うかうかしていられない」とけん制 “ポスト岸田”候補・茂木氏の現状と課題
演説する茂木幹事長

12日、東京都内で自民党・茂木派のパーティーが開かれた。幹事長就任から1年半を迎える茂木氏はポスト岸田の筆頭候補として名前が挙がっているが、パーティーでは岸田首相が『私としても、うかうかしていられない』『もうしばらく、当面は岸田政権を支えて欲しい』などと茂木氏をけん制する場面も見られ、2人の間の微妙な距離感がうかがわれた。

■茂木派パーティーは盛会も…岸田首相が突然のけん制

12日、都内のホテルでおよそ2000人が集まり、自民党の派閥「平成研究会」=茂木派のパーティーが開かれた。外相や幹事長など、政府や党の重要ポストを次々と務め、ポスト岸田の筆頭として名前が挙がる茂木氏。本人も周辺に対し「地元からの期待を感じている」と話し、ゴールデンウィークにはアメリカ・ワシントンを訪問し米政府の要人らと会談を重ねるなど、ポスト岸田への意欲をにじませている。

茂木氏はパーティー会場で終始、上機嫌で、来場客に積極的に握手を求めるなどしていたが、岸田首相のあいさつで会場内の空気は変わった。

岸田首相が茂木氏のことを「政界随一の頭脳」などと持ち上げる一方で、『私としても、うかうかしてはいられない気分だ』『日本が大事な時なので、もうしばらく、当面は岸田政権をど真ん中で支えていただくようお願いする』などと、けん制する発言を繰り返したのだ。

■突然の少子化対策での発信…「茂木政権」の看板政策に想定

茂木氏は今年1月、衆議院本会議で「全ての子どもの育ちを支える観点から児童手当の所得制限を撤廃すべきだ」と発言した。かつては自民党が否定していた「所得制限の撤廃」を突如打ち出したことに本会議場ではどよめきが起こった。

どちらかというと外交や経済に明るいイメージの強い茂木氏だったが、この「所得制限の撤廃」発言を皮切りに給食費無償化など少子化対策の政策を積極的に打ち出し始めた。

自民党関係者によると、実は茂木氏は大胆な経済支援を中心とする「少子化対策」を、自らの政権が実現した際の看板政策の一つとして想定していたのだという。実際、茂木氏は国会見学に来る地元の小・中学生との交流を20年以上、欠かさず続けるなど、若い世代への思い入れは強い。部下に厳しいことで知られる茂木氏も、子どもたちと交流する時ばかりは「やっぱりパワーをもらえる」と頬を緩め、「子どもの数は国力そのものだ」と強調する。

■ポスト岸田への課題…「できない人の気持ちがわからない」

「とにかく仕事ができる」と永田町で評される茂木氏だが、総理・総裁を目指す上では課題も多く抱えている。

まずは「50人あまりの茂木派をまとめきれるのか」という点だ。茂木氏に近い議員は茂木氏の性格について「本人が優秀過ぎてできない人の気持ちがわからない。情がないように見えてしまう」と話し、派内を掌握することの難しさを指摘する。

また、茂木氏は2021年に参議院茂木派に影響力を持つ青木幹雄・元官房長官の了承を得ずに派閥会長に就任したため、派内の参議院議員からの支持を固めきれていないという課題がある。選挙の際に幹事長の茂木氏から手厚い支援を受け、恩義を感じる中堅・若手の参議院議員も増えるなど、一時期に比べると参議院茂木派も態度を軟化させてきているが、完全な一枚岩には至っていない。

また、ポスト岸田候補の一人である河野太郎デジタル相などに比べ、知名度や発信力が不足しているとの指摘もある。茂木派内からも、知名度がなかなか上がっていないため、仮に総裁選に出たとしても「党員票」はほとんど取れないのではないか、と心配する声が上がっている。

■来年秋の総裁選…茂木氏にとって最後のチャンスか?

来年9月には、岸田総裁が任期満了を迎え、自民党の総裁選が予定されている。総裁と幹事長は通常、二人三脚で党運営を行っていくため、茂木氏が幹事長の職にとどまったまま岸田総裁に反旗を翻して総裁選に出ることは難しい。ある茂木派の幹部も「茂木氏はどこかで幹事長職を辞さないと総裁選に立候補しづらい」と指摘する。

また、茂木氏は現在67歳だが、派内には将来の会長候補として小渕恵三元首相の娘である小渕優子氏らも控えている。茂木氏周辺は「年齢からいっても来年秋の総裁選は数少ない、場合によっては最後のチャンスだ」と語っている。

ただ、茂木氏本人は幹事長など重要ポストに就いて影響力を持ち続けることを望んでいて、総裁選を睨んで自ら幹事長職を辞し、いわゆる「無役」の状態になるのは避けたい考えだとみられている。

最近、「将来に関して何も焦っていない」としきりに強調する茂木氏。ポスト岸田に向け「狭い道」を切り開いていく戦略はどこにあるのか。茂木氏の今後の動向が注目される。