年齢でみる選挙 投票と立候補の年齢ルールなぜ違う?【#みんなのギモン】
■若者は“思慮と分別がない”?
これまで国会答弁では、選挙に立候補できる年齢について「社会的経験に基づく思慮と分別をふまえて設定されているもの」という説明が繰り返されてきました。
投票できる年齢が18歳に引き下げられた2016年には、立候補できる年齢の引き下げについても議論されましたが、当時の高市早苗総務大臣は「被選挙権の年齢については、社会的経験に基づく思慮と分別を踏まえて設定されている」と答弁。引き下げについては、今後も議論が必要だと慎重な姿勢を見せました。
■「25歳以上」世界では少数派
世界各国を見てみると、立候補できる年齢が25歳以上の国は少数派。
OECD(=経済協力開発機構)に参加する先進国38か国では…
・18歳以上が23か国
・21歳以上が10か国
・25歳以上が日本を含めて5か国。
投票できる年齢と同じ、18歳以上と規定している国が多いんです。
■立候補の年齢引き下げ 求める動きも
そんな中、2023年7月には大学生らが「若者が立候補できないのは差別だ」として、立候補できる年齢の引き下げを求めて国を訴えました。
「選挙で立候補する権利は、憲法上保証された国民の重要な基本的権利」で、「選挙権は18歳から認められているにもかかわらず、立候補できる年齢が高く設定された理由の合理性を説明できていない」と主張しています。
■立候補の年齢引き下げ メリットは?
若者の政治参加について研究している日本総研の井上岳一氏は、「投票できる年齢が引き下げられれば、若者の声が政治に反映されやすくなるのでは」と分析しています。
日本総研・井上岳一氏
「若者は、政治の世界に自分たちの声を代弁できる人がいないと考えている。同世代が選挙に立候補することで、若者の関心事が選挙の争点になる。それが若者の政治に対する関心を高めて、若者の投票率が高まることにつながる」
「その結果、若い議員が増えれば、さらに当事者意識を持ちやすくなり、『若者の声』に対する関心が高まる。そうなれば『若者の声』が政治に反映されやすくなることが期待できる」
さらに、選挙制度に詳しい日本大学法学部の安野修右専任講師は、「立候補の年齢を引き下げても、そもそもの選挙の仕組みを整えないと効果が発揮できない」と指摘します。
日本大学法学部・安野修右専任講師
「出馬するためには、たとえば衆院選の小選挙区だと供託金が300万円必要。政治に参加する障壁になっている仕組みを除くということも同時並行で行わないといけない。公職選挙法の制限規定を減らして、選挙活動をもっと自由にする必要がある」
■2021年衆院選 投票率は20~24歳が最も低い
実際に、若者の選挙への関心は低いのが現状です。2021年の衆議院選挙では、20歳~24歳の投票率が33.64%で最も低いという結果に。
この背景について、安野修右専任講師は、「若者は、選挙という媒体自体がつまらないものだと判断している」ことにあるといいます。
日本大学法学部・安野修右専任講師
「仮に“推したい”政治家がいても、SNSで発信するには多くの複雑なルールがあるため“推す”行為をするハードルが高い。おもしろいと思えないことに若者はコミットしないのでは」
■選挙は「一番ハードルが低い政治参加」
その上で、安野専任講師は選挙が「一番ハードルが低い政治参加のひとつ」だといいます。
日本大学法学部・安野修右専任講師
「民主主義決定において、表明されない意見が反映されることはない。自分の意見が反映されてほしい、実行されてほしいということが少しでもあれば、まずは選挙に参加してもらえれば」
「国会議員の定年」についても取材しています。
(https://news.ntv.co.jp/category/politics/4599eaf2674e4696902c5e4cf0d8de31)
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