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【解説】政治資金規正法改正案 強気の野党側、成立に向け“落とし所”は?

2024年5月22日 20:42
【解説】政治資金規正法改正案 強気の野党側、成立に向け“落とし所”は?

自民党の裏金事件を受け、衆議院の特別委員会では各党が提出した「政治資金規正法」改正案の審議が22日にスタートしました。野党側は自民党案を厳しく批判しています。政治部官邸キャップ・平本典昭記者が解説します。

■議員の罰則強化 各党の案は?

山崎誠アナウンサー
「焦点となっている項目をみていきます。まずは、収支報告書に不記載があった場合の議員本人の罰則強化についてです」

「自民党の案では、議員に収支報告書の『確認書』の作成を義務づけます。この『確認書』とは、収支報告書が、政治資金規正法の規定に従って作成されているかを、議員本人が確認するものです」

「立憲民主党と国民民主党などが共同で提出した案では、議員本人にも収支報告書の記載と提出を義務づけるとしています」

■政治資金パーティー 購入者の公開基準は?

「続いて『政治資金パーティー』についてみていきます」

「自民党の案ではパーティー券の購入者の公開基準を、現在の20万円超から10万円超に引き下げます」

「立憲民主党と国民民主党は、この項目では意見の違いがあり、立憲民主党が単独で、政治資金パーティーを全面禁止する法案を提出しています」

「日本維新の会は、公開の基準を5万円超に引き下げます。自民党が10万円の基準なので、さらに5万円低くなっています」

■政策活動費 各党の案は?

「続いて、政党から議員個人に支出される『政策活動費』の扱いについてです」

「政策活動費には国民に使い道が公開されないという問題がありますが、自民党は、政党から50万円を超える支払いを受けた議員が、大まかな項目ごとの金額を党に報告し、党が収支報告書に記載する案を出しています」

「立憲民主党などは、そもそも禁止に。また日本維新の会は、政策活動費のかわりに『特定支出』と呼ぶ新たな制度を設けます。党勢拡大や政策立案などに使うもので、プライバシーに配慮するため、10年後に領収書とともに公表されます」

   ◇

鈴江奈々キャスター
「政治部官邸キャップ・平本典昭記者と3つのポイントについて伝えます」

1. パーティー券「10万と5万」差は?
2. 「落とし所見えず」どう打開?
3. 各党が強気…譲らない「ワケ」

■パーティー券「10万と5万」の差…自民党議員にとって死活問題に?

鈴江キャスター
「まず、各党の案で気になったのは、パーティー券の公開基準です。いまは20万円超となっていますが、これを引き下げるという案の中で、自民党は10万円超、日本維新の会は5万円超となっています。10万と5万は、それほど違うものなのでしょうか?」

政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「自民党議員を取材すると『雲泥の差』だと言っています。自民党では派閥のパーティーは禁止になりましたが、個人のパーティーは禁止されていません。ですので自民党議員としては、今後もパーティー券を売って政治活動の資金源としたい、というわけです」

「一方で、企業や個人など買う側からすると、名前が公開されるのを嫌がる人が多く、公開基準のギリギリ、いまであれば20万円を買う人が多いといいます。それが10万円、5万円となれば、購入額が減ってしまい、パーティー収入全体が減り、自民党議員にとっては死活問題になるというわけです」

「公開基準の差は5万円にみえるかもしれませんが、100社分となれば500万円にもなるわけです。ある自民党のベテラン議員は『10万円のラインがギリギリで、5万円になったら政治活動が厳しくなる』と話しています」

鈴江キャスター
「10万円、5万円の差がパーティー券購入のボーダーラインにもなりうるというところで、譲れないという話なのですね」

■岸田首相の打開策…ターゲットは日本維新の会

鈴江キャスター
「この協議は落とし所が見えない中、岸田首相はどう打開していく考えなのでしょうか?」

平本キャップ
「22日から法案審議がスタートしましたが、ある自民党幹部は『法案を成立させる落とし所が見えていない』と嘆いています。自民党は参議院では単独で過半数を持っていません。与党・公明党ともいま溝があるので、自民党はいま孤立してしまっています。ですので、他の党との協力が不可欠です」

「まず、野党第一党の立憲民主党ですが、ある立憲の国対幹部は『譲ることは絶対ない』と、交渉の余地すらなさそうです。そこで自民党が狙ったのが野党の切り崩し。ターゲットは、距離が近いとされる日本維新の会です」

「その戦略は次の通りです。維新はこれまで国会議員に月100万円支給される旧・文書通信交通滞在費いわゆる『文通費』の見直しに強くこだわってきました。岸田首相はこの『文通費』を見直すので、政治資金規正法改正で維新の協力を得ようと狙っていました」

「しかし、これがうまくいってないようです。維新の幹部は『協力の条件は、規正法の維新案を自民党が丸のみすることだ』と強気で、自民党のあては、いまの時点では外れてしまっているようです」

鈴江キャスター
「文通費以外すべて維新案を丸のみしてくれ、というのがいまの維新の主張?」

平本キャップ
「そうです。すべての案をのまなければ、細かい妥協では許さないぞ、というのが維新の姿勢です」

■各党が強気…譲らない「ワケ」

鈴江キャスター
「維新も譲らない、強気の姿勢を示しているのはなぜでしょうか?」

平本キャップ
「維新の幹部は譲れない理由について『自民党と一緒と思われたら選挙で負けてしまうからだ』と話しています。実は、各党はいま、次の衆院選を意識して、自民党に協力すれば『裏金問題での逆風を一緒に食らってしまう』という危機感があり、そう簡単に協力できないのが実情といえそうです」

桐谷美玲キャスター
「このままの状態で、法案の成立までもっていけるのでしょうか?」

平本キャップ
「岸田首相自身は、政治資金規正法をいまの国会で成立させると何度も何度も強調しています。ですので、成立しなければ自民党内部からも『岸田政権は終わりだ』と、退陣を余儀なくされるのでは、という見方もあります」

「是が非でも成立させなければいけないわけですが、いま自民党を取材していますと、やはり最後は公明党が賛成してくれるのでは、という期待感があります」

平本キャップ
「ただ、自民党幹部からは『反対すれば連立政権は終わりだ』とけん制する声がある一方で、公明党内にはやはり『自民党と同じ穴のムジナとは思われたくない』と、この政治資金の問題で引けている姿勢と思われたくない、だから簡単に妥協できないんだという声は根強いです。自民党が公明党の協力を最後、引き出せるかが今後のポイントになりそうです」

鈴江キャスター
「どこの党も選挙を意識して、見え方をいろいろと意識した思惑が透けて見えてきたのですが、この裏金事件が二度と起きないような法改正になってもらいたいものです」

平本キャップ
「その通りです。野党は22日も『自民党案は、抜け穴を小さくするから残しておいて、という案だ』と指摘していました」

「一番大事なのは、裏金事件の再発防止につながる抜本的な改革案になるか、です。岸田首相には裏金問題を引き起こした自民党のトップとしてリーダーシップを発揮し、これだったら再発防止になる、抜け穴はなくなるという改革案をまとめる責任が問われています」

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