首相襲撃直後、谷国家公安委員長「うな丼食べた」…閣僚の“失言”や問題発言はナゼ起こる?
和歌山県で起きた岸田首相の襲撃事件。谷国家公安委員長は事件の報告を受けた後に「うな丼を食べた」と、自民党議員のパーティーで発言した。一夜明けて「舌足らずで誤解を招きかねない発言だった」と釈明した。閣僚がパーティーで失言することが多いのはナゼなのか。2つの可能性があるという。
■笑いを取りに? 襲撃事件後に「うな丼を食べた」と挨拶
25日に行われた自民党議員のパーティー。会場には、谷国家公安委員長のほか、河野デジタル相、高市経済安保相、西村経産相らが出席していた。
河野デジタル相
「今日は大枚をはたいていただきまして、机の上にはりんごジュース1本ということでございまして…」
高市経済安保相
「(パーティーを主催する議員の応援で)一昨年の衆議院選挙の最中に、冷たい雨に打たれながら、眉毛も全部化粧が流れ落ちた、私のすっぴんしか見ておられない方も多いかと思います。今日はちゃんと眉毛も描いて、これが普通の状態でございますので、よく覚えて帰ってください」
2人の閣僚の挨拶に、会場からはたびたび笑いが起きた。その後、谷国家公安委員長に順番がまわってきた。
谷国家公安委員長
「ちょうど15日に私は防災担当大臣も兼ねておりますので、南海トラフの視察で高知に日帰りで行ってました。四万十で美味しいうな丼を食べられるということで、楽しみにしていたんですけれども、これから食べようという時に警察庁から電話があって、和歌山で総理に、総理にこう物を投げられたと。そういうことがありましたと。ありましたけれども、うどんは…うどんじゃなくて…うな丼はしっかり食べさせていただきました」
この挨拶に、会場で笑っている人はいないように見えた。
野党が「緊張感が足りない」などと批判しただけでなく、身内である与党からも厳しい指摘が相次いだ。
「うなぎを食べたというと、高級なものを食べているイメージでみられる。そもそも、うなぎの話をしなければよかった」(自民党中堅)
「タイミングがよくない。褒められた話じゃない」(公明党幹部)
一夜明け26日、谷国家公安委員長は取材に応じ、「大変舌足らずというか、誤解を招きかねない発言であったということはしっかり受け止めなければならない。未熟なところがあった」と釈明した。
一方、国会で、野党から「“うな丼大臣”は即刻更迭してください」と求められた岸田首相は「引き続き職務に当たってもらいたいと考えている」と述べ、谷国家公安委員長の更迭を否定した。
■過去には“更迭”された例も…ナゼ閣僚は“失言”するのか?
閣僚が政治資金パーティーで“問題発言”をして、辞任に追い込まれるケースは多々あった。
2022年11月には、当時の葉梨法相が政治家のパーティーで「法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だ」と発言。大臣の職や死刑を軽んじるような発言に批判が集まり、更迭された。
また、2019年には、当時の桜田五輪担当相がパーティーで議員の名前を挙げ、「復興以上に大事」と発言したことが問題になり、辞任に追い込まれた。
なぜ閣僚は、政治資金パーティーで問題発言をしてしまうのか。岸田政権の閣僚の1人は、今回の発言が起きた理由について2つの可能性を指摘する。
①報道陣と大型カメラの有無
今回のパーティーでは、小型のカメラで取材している記者はいたものの、大型カメラは会場内でそれほど目立っていなかった。そのため、会場内に報道陣がいることへの意識が薄れていたのではないかというのが1つめの指摘だ。この閣僚は「大きなカメラがあり、報道陣がいるのを認識したら、発言に気を付けようと思う」と指摘している。
②パーティー会場内の雰囲気
「前の人が挨拶で面白いことを言っていると、盛り上げないといけないという気持ちにはなる」(岸田政権のある閣僚)
2つ目は谷大臣の前に挨拶をした、河野大臣と高市大臣が笑いを取っているのを見て、さらに面白いエピソードを披露しないといけないと考えたのではないかというものだ。
ただ、この閣僚は、報道陣の有無や会場の雰囲気にかかわらず、聞いた人が不謹慎だと思うような発言は慎むべきだと釘を刺す。別の閣僚経験者も「パーティーで面白い話をしようと思ってはいけない。エピソードを喋っているようじゃダメだ。国を背負っている政治家だなと思われるような挨拶をしないといけない」と苦言を呈す。
谷国家公安委員長は、来月開催されるG7広島サミットの警備責任者を務める。26日の取材に「緊張感をもって職務にまい進していきたい」と述べたが、与野党からその資質に疑問の声があがった。
26日の二階派パーティーを皮切りに永田町では自民党の派閥のパーティーが相次いで開かれる予定となっている。発言にはその人物の人品骨柄が表れるだけに引き続き注意して取材していきたい。