生前退位“難しい”理由…政治部長解説
天皇陛下の生前退位の意向について、宮内庁が陛下自らがお気持ちを公表する方向で検討していることが分かった。今後、公表されるお気持ちは「退位」などの制度に踏み込むものではないという。これを受けた、政府の動きについて政治部・伊佐治健部長に聞く。
■憲法が「生前退位」を難しくしている
天皇陛下は焦点となっている「退位」自体については述べられないということだが、これは極めてデリケートな問題だからだ。天皇陛下が「生前退位」の意向を持っている事が明らかになる中、ある政府関係者は14日夜、「天皇陛下の生前退位は無理だ」と述べた。ここまで強く言うのは、憲法に違反するのではという問題が出てくるためだ。
もし、天皇陛下の意向を受ける形で、政府が皇位継承について定めた皇室典範を変えた場合、天皇の政治への関与を禁じた憲法第4条に抵触する可能性がある。
また、もし「生前退位」という制度を設けた場合、天皇が国事行為を任せることができる「摂政」を置くことを定めた憲法第5条と矛盾するという指摘もある。天皇陛下の思いが、政治的な法改正などに直接結びついてはいけない背景がある。
■宮内庁と政府のギャップ埋めるために―
天皇陛下を支えたい、お気持ちを尊重したい宮内庁と、政府の間には大きな温度差がある。宮内庁では皇室制度に詳しい元職員も加わって、「生前退位」の意向をふまえて、お気持ち公表への検討を続けている。
一方の安倍内閣としては、憲法に違反しかねない判断に踏み込むことには慎重だ。そのギャップを埋めるために、総理官邸にあった「皇室典範改正準備室」の態勢を強化した。官邸に近い内閣府のビルの地下の一室を使って人目に付かない形で作業し、極秘裏に必要な法改正を手探りで探っている。
■与党内には「意向尊重すべき」の声も根強い
政府内には「退位」まで踏み込むのは無理と考え、摂政を置く条件を緩和する皇室典範改正、もしくは天皇陛下の公務の負担軽減を軸に検討すべきとの声がある。
一方で、天皇陛下の意向は尊重すべきとの声も政府与党、特に自民党内に根強くあり、まだハッキリした方向性は見えていない。