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ナゼ? 異例の“野党共闘” 奇妙な「三角関係」のワケ

2022年12月31日 9:00
ナゼ? 異例の“野党共闘” 奇妙な「三角関係」のワケ
臨時国会の最終日、立憲・泉代表と維新・馬場代表が会談

政府与党と対峙する“野党”。昨年、異例の“国会内共闘”を行った立憲民主党と日本維新の会の関係とは。さらに、自民党を巻き込んだ奇妙な「三角関係」のワケなど、今後の野党政局を解説する。

■立憲・維新は再び“共闘”?

2022年12月の臨時国会、最終日。「野党第1党」立憲民主党と「第2党」日本維新の会の党首が会談。“異例”の野党共闘で挑んだ臨時国会を振り返った。

立憲・泉代表
「大変、良い成果を出すことができた。野党第一党の役割は、野党の力の最大化もある。維新とともに取り組み、国民のために働くことができた」

維新・馬場代表
「一緒にやれるテーマがあれば、また引き続きこういう協調をするという、これで縁が切れたというわけではないという確認をさせていただいたところ」

“連携”を確認しあった2人。振り返れば臨時国会は、立憲と維新の会が、これまでになかった政策連携を行い臨んだ初の舞台となった。特に、いわゆる統一教会の被害者を救済する新法をめぐる対応では、野党が与党を主導する形で議論は進んだ。

当初、政府は臨時国会では救済のための法案を提出する考えではなかった。これに対して、立憲・維新の両党は共同で法案を提出。野党側は「政府与党にプレッシャーをかけ、自民・公明・立憲・維新4党による4党協議にこぎつけた」と胸をはる。

さらに、政府案に対して、立憲・維新が「不十分」と修正を訴え、政府が度重なる修正に応じる展開となった。最後は、維新が先に賛成に回り、反対を強く主張していた立憲も“追い込まれる形”での賛成とはなったが、ある立憲幹部は、「立憲と維新がいなければ救済新法の成立はなかった」と成果を強調した。

国会ではこんな場面も。維新・馬場代表の代表質問の際、立憲の若手議員から拍手が起こったのだ。これまで“水と油”ともいわれていた両党の接近に、当初、「長くは続かないだろう」との見方が大半だったが、「数の力」がモノを言う国会で政府与党に対抗して、一定の存在感を示した形だ。

政策での共闘と同時に、議員間の交流も活発化した。「立憲の若手議員と会食したら、費用を立憲側がもってくれることが何度もあった」。維新のある若手議員が、少し恐縮しながらそんな実情を語った。さらにこの議員は「でも、立憲の若手議員だってそんなにお金を持ってるわけじゃない。党が援助してくれてるんじゃないか」と口にした。

関係者を取材すると、ある事情が明らかに。立憲が一部の議員に対して、維新との交流を活発化させる目的で、会食費などを党として負担していたというのだ。

一方で、維新の中にはいまだに“立憲アレルギー”が根強く残っている。会期中に、立憲・泉代表や維新・馬場代表も交えた幹部同士の会食が行われたが、同じ日の夜、会食終わりの維新・馬場代表を待っていたある大阪選出の議員は…「馬場ちゃん、これ以上、立憲と一緒にやってるところを見られたらかなわんで」。眉をひそめながらこう不満をぶつけた。

なぜか? 地域政党「大阪維新の会」が源流である「日本維新の会」。保守政党の色合いが強く、特に関西選出の議員を中心に、リベラル色が残る立憲との共闘にはアレルギーを感じている議員が多いのだ。これを聞いた別の幹部は…「心配せんでもええ」。不敵な笑みを浮かべながら、こうつぶやいた。

■あくまで“是々非々”維新が目指す先は

その言葉の真意が分かったのは、救済新法の審議が大詰めを迎えていたある夜のこと。維新の馬場代表が、国会近くの高級料亭で会食を行った。その相手は、自民党の茂木幹事長。自民・維新の両党幹部が会食を行ったのだ。立憲・維新が救済新法に賛成するかどうかが焦点となっていた時期だけに、与党幹部と維新が接近したことに、立憲内に衝撃が走ったのは言うまでもない。

会合に出席した維新幹部の1人は、「維新は是々非々の政党。政策を実現させるためには、自民党とも立憲ともやる」と述べた。この維新の動きに、救済新法に反対する可能性も残していた立憲は揺れた。立憲幹部は「会食の席で維新は、自民党に賛成する意向を伝えただろう。ここで立憲だけ反対したら、また“反対だけの党”と揶揄されてしまう…」

この後、党内の根強い反対論が残る中、立憲が賛成に回らざるを得なくなったのだ。救済新法成立の裏には、立憲・維新の連携と、自民党を含めた奇妙な“三角関係”があった。

■かつては“立憲共産党”とも呼ばれた時代も… 維新の台頭に共産は?

一方、この共闘関係を、かつては立憲との選挙協力を行い、維新を“与党の補完勢力”と批判してきた共産党は批判的だ。救済新法をめぐっても、与野党協議の枠組みから外され、目立った活躍の場はなかった。

こうした現状に、共産党の小池書記局長は「あれこれ言うつもりはない」と述べた上で、「次の国会でテーマの敵基地攻撃能力・大軍拡の問題で、立憲の立場が問われることになる。立憲主義というのが立憲民主党の原点であるはずで、野党共闘の一丁目一番地だった。これを貫くことができるかどうかということが問われる」とけん制している。

■国民民主「連立入り」報道も…双方否定

年末には、国民民主党をめぐり気になる動きがあった。立憲と同じく労働組合の中央組織「連合」を支持母体とする国民民主党に、“与党入り”との情報が永田町を駆け巡った。岸田首相は「全く知らない、考えてない」ときっぱりと否定。国民民主党の玉木代表も、すぐに緊急の会見を開き「そのような事実はない」と否定した。

しかし、国民民主党は野党でありながら、昨年度の本予算、補正予算に相次いで賛成したり、救済新法についても、立憲・維新が進めた自公との4党協議とは別に、自公との3党協議の枠組みを構築したり、独自の“与党寄り”の動きを見せてきた。

救済新法成立後に玉木代表は「我が党から提案した内容が、ほぼ盛り込まれた。今の政府案の骨格は、国民民主党案をベースにしたものと言っても過言ではない」と発言し、与党との近さをアピール。

こうした動きから、国民民主党の与党入り、玉木代表の入閣情報などの臆測が広がるが、ある閣僚の1人は「与党の政策に“賛成してくれる野党”がいることに意味がある。『連合』がついてくるならまだしも、玉木代表以下数人だけ来ても意味がない」と突き放した。

■統一選次第では“野党政局”加速化?

今月末にも始まる通常国会。野党側は引き続き、いわゆる統一教会をめぐる問題や、防衛力の強化に伴う増額などの問題を追及していく考えだ。さらに、春に行われる統一地方選挙など、与野党対決の場が続く。

立憲、維新の“異例”な共闘はどう深化していくのか。自民党、そして他の野党も巻き込んだ、目を離せない波乱含みの展開が2023年は続きそうだ。