【解説】“裏金事件”の党内処分 自民執行部が“詰めの調整” 安倍派幹部・処分に「差」…反発も
自民党執行部は、いわゆる裏金事件をめぐる処分を4日の党紀委員会で決めるのに向けて、詰めの調整を続けています。安倍派幹部らの処分に「差」があることについて、複数の自民党幹部が「線引きが恣意的だ」と反発するなど、処分が出る前から党内の混乱が深まっています。
日本テレビの政治部・自民党担当キャップ、前野全範記者が3つのポイントを中心に解説します。
1.安倍派と二階派は「同じ?」
2.安倍派幹部 処分に「差」
3.“裏金事件”真相の解明は?
鈴江奈々キャスター
「まず1つめ、処分の内容がなかなか決まらない理由はずばり、なぜなんでしょうか?」
政治部・自民党担当キャップ 前野全範記者
「処分がここまで揉めた最大の原因は、茂木幹事長らが、安倍派の事務総長と二階派の事務総長を同じ処分にしようとしたことに批判が相次いだという点があります」
政治部・自民党担当キャップ 前野全範記者
「具体的には、裏金事件が発覚した際に、二階派の事務総長をつとめていた武田良太氏を『党員資格停止処分』とするか、3段階軽い『党の役職停止処分』とするかで、幹部の間で意見が対立したんです。
茂木幹事長や麻生副総裁が主導した処分の案では、武田氏はより重い『党員資格停止処分』となっていました。
これに対して、森山総務会長をはじめ複数の党幹部が、『派閥ぐるみで裏金にしていた安倍派と、そうではない二階派の事務総長が、同じ処分なのはおかしい』、『一部の幹部が、自分の都合の為に恣意的に決めている』として、党の役職停止処分など軽くすべきだと主張したんです。
このように、執行部の幹部の間でも意見が対立したため、岸田総理大臣が自ら、麻生副総裁と茂木幹事長の2人が陣取っている部屋と、それ以外の森山総務会長、渡海政調会長ら党幹部5人が集まる部屋の間を行ったり来たりして、調整に当たる事態となりました。
自民党幹部の一人は、『総理に調整をさせるなんて恥ずかしい。党内が学級崩壊状態だ』と嘆いています」
鈴江キャスター
「その処分8段階あるうちの、どの重さにするのかというところで、内部で意見が割れている状態だということなんですね」
鈴江キャスター
「そして、その処分が固まらない理由の2つめは、安倍派幹部の中でも処分に『差』がある、ということなんですね?」
政治部・自民党担当キャップ 前野全範記者
「安倍派幹部の処分は『離党勧告』・『党員資格停止』・『党の役職停止』と3段階に分かれました。
この区分けについては、党内からも『納得感がない』ですとか、『自民党の総裁選やポスト岸田をにらんで、変な線引きが行われている』との指摘が出ています。
この安倍派幹部の処分をめぐって、複数の案が検討されるなかで、時間がかかっているということなんです」
鈴江キャスター
「安倍派内でも、その『差』をつけることに異論がある、ということなんですね」
「そして3つめのポイントは、『裏金事件 真相の解明は?』ということです。まだ、真相は解明されていないんですよね?」
政治部・自民党担当キャップ 前野全範記者
「東京地検特捜部の捜査が終結したのは、そもそも今年1月19日で、そこからすでに2か月以上がたっています。この間、自民党によるアンケート、聞き取り調査、それから国会の政治倫理審査会、さらには岸田総理自ら行った事情聴取などがありました。
しかし、依然として裏金事件の実態解明は進んでおらず、たとえば『キックバックを誰が、なぜ始めたのか?』、あるいは『おととしのキックバックの再開は、いったい誰の判断だったのか?』、そして『森喜朗元総理の関与はそこになかったのか?』といった、肝心な点が何も分からないまま、処分だけが行われようとしている。
つまり、問題の核心・本質には手がついておらず、処分を急いでいる、何とか幕を引こうとしているようにみえる、という声が、永田町の内外にもでているんですね」
鈴江キャスター
「そういった、肝心かなめの原因が究明できていないからこそ、内部での意見が割れている、ということもあるんでしょうか?」
政治部・自民党担当キャップ 前野全範記者
「意見が割れている理由は、確かにそういう部分もあります。そして、これで終わりなのかというと、必ずしもそういうワケではなくて、いわゆる“第2幕”が開くという展開は十分に今後あり得ます。
すでにこの裏金事件を巡っては、自民党の地方組織の裏金疑惑について、検察当局に追加の刑事告発が出されているほか、複数の安倍派幹部を対象に「不起訴」などの検察の判断を不服として、再捜査を求めて「検察審査会」に対する申し立ても行われているんです。
さらに、再発防止策という点では、ようやく国会でも『政治資金規正法』の改正に向けた議論が今月中にも始まる見通しになっている、という状態なんです」