【ひと目で分かる政治とカネ】企業・団体献金 立憲案「政治団体を除く」は“抜け穴”?
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政治部・野党キャップ 天野裕貴記者
「企業・団体献金について、自民党は禁止に慎重な一方、ほぼ全ての野党は禁止する考えを示しています。そもそも企業・団体献金とは、『企業』のほか、『業界団体』や『労働組合』、また『政治団体』などが行う政治献金のことです。『政党の本部』や『政党の支部』などが受け取ることを認められていて、去年、自民党は『政党本部』でおよそ23億円の献金を受け取っています」
「次に多いのは立憲民主党のおよそ76万円で、自民党だけ突出しているのです。そこで立憲は、献金で政治がゆがめられる可能性がある、『金権政治の温床だ』などとして、企業・団体献金を禁止する改正案を提出しました。立憲はこの法案を『政治改革の本丸』と位置付けるほどの気合の入りようなのですが、実は野党間で意見が分かれている部分があります。それが立憲案に書かれた『政治団体を除く』という文言についてです。この文言があることで、政治団体からの寄付は可能のままということで、ほかの野党からは『抜け穴を作っている』と指摘されているのです」
天野記者
「13日の政治改革特別委員会でも、政治団体からの寄付について野党間で次のようなやりとりがありました」
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れいわ新選組 高井幹事長
「(立憲の)企業・団体献金禁止法案の中に政治団体を除くという言葉、企業・団体献金禁止を徹底するなら除くべきだと思いますけど、いかがですか」
立憲民主党 奥野議員
「政治団体を除くとぱっと読まれると、そこだけ読むとですね、そういうご懸念を持たれるかもしれませんが、あくまで個人の自由意思で政治団体に所属をして、そこからお金が流れるとこういうことでありますので、これでしっかりと抜け道になるというようなことはない」
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鈴江奈々キャスター
「なぜ『抜け穴』だと指摘しているのでしょうか?」
天野記者
「それをひもとくために、去年に『政治団体』から野党側に対して行われた寄付の一例を紹介します。『政治団体』の『全トヨタ政治に参加する会』は、国民民主党の議員側に1億円。また別の『政治団体』の『郵政未来研究会』は立憲民主党の議員側に5000万円寄付しています」
「つまり、『政治団体』が寄付をしているケースは、与野党ともにあります。ここがまさに『抜け穴』と13日も委員会でれいわ新選組などから指摘されていました。実際、立憲や国民民主に寄付をしている『政治団体』というのは、両党の支持母体である『労働組合系の政治団体』が多く、紹介したケースの政治団体は労働組合系なのです。つまり、立憲案では労働組合だけでなく、企業も政治団体を作れば、寄付を受け取ることができるとして、ほかの野党は『企業・団体献金と同じく政治がゆがめられる可能性がある』などとしているのです」
鈴江キャスター
「では、立憲はなぜ、『政治団体』も禁止しないんですか?」
天野記者
「そこがまさに今、国会で議論になっているんですが、立憲が『政治団体を除く』ことについて、『抜け穴ではない』としている理由を『そもそも企業や業界団体、労働組合からの寄付は、その組織自体のお金。一方、政治団体からの寄付は、その政治団体に所属する一人一人の自由な意思で集められたお金の集合体だ』と説明しています」
天野記者
「立憲の大串代表代行は、『個人の自由な思想信条で作った政治団体を通じて献金をすることは、政治活動の自由』として、企業・団体献金にはあたらないと反論しています」つまり立憲の主張は、個人の集まりである『政治団体』からの寄付は、個人献金の延長であって企業・団体献金ではないので、禁止する必要はないとしています」
鈴江キャスター
「何が抜け穴なのかについては野党の間でも主張が分かれており、落とし所を見つけるのは難しそうですね?」
天野記者
「政治資金規正法などに詳しい中央大学の中北教授も、『抜け穴論を突き詰めていくと何でも抜け穴になりうるので、議論の本質から離れてしまっている』としています。『それよりも、具体的な違法行為や、政治がゆがめられるような事態が起こったときに、しっかりと罰則などで対応していくことが大事なのではないか』と話していました。
「自民党は、政治資金規正法の改正案について16日に採決することを提案しています。それまでにしっかりと議論を深められるのか、引き続き見て行きたいです」