国民民主が党大会 「看過できない」自民と対峙鮮明も、立憲には「大きなお世話」・・・“対決より解決”の行く先は
「対決より解決」を掲げ、政策実現のために与党との連携も進めてきた国民民主党。しかし、政治とカネをめぐる問題を受け、自民党と連携ではなく対峙していく方針を党大会で決定した。与党との距離感に苦慮する中、“兄弟”立憲民主党からは“合流を”の声も・・・
■自民の裏金「看過できない」 対決路線に舵
国民民主党・玉木代表
「これからも変わらず対決より解決の姿勢で政策本位で取り組みますが、それは『正直な政治』が貫かれていることが大前提です。国民民主党は今回の自民党の派閥の裏金問題は看過できません」
国民民主党が党大会で決定した活動方針には、従来の「給料を上げる。国を守る。」に加えて、「『正直な政治』をつらぬく。」という言葉が加わった。
「対決より解決」を掲げ、政策実現のために与党との連携も進めてきた国民民主党。その姿勢こそ、野党のなかで自らをアピールできる大きな要素だった。しかし、「政治とカネ」で自民党が厳しい状況を迎える中、与党との距離感に苦慮し、軌道修正を強いられた形だ。
■“トリガー”めぐり与党と連携も・・・狂った目算
与党との関係性の変化を象徴する出来事が、党大会まで1週間を切った2月6日におきた。「トリガー条項凍結解除」を目指した自民・公明両党との3党協議から離脱することを、玉木代表が記者団に表明したのだ。
その後、自民、公明、国民民主党の3党で協議が始まったが、自民党側の窓口であり、玉木代表が「政策に前向きで、頼りにしていた」と語る萩生田前政調会長が、政治資金の不記載をめぐり機能不全に陥った。自民党全体も混乱する中、協議の進展は絶望的となり、協議を離脱せざるを得ない状況に追い込まれた。玉木代表ら党執行部の目算は大きく狂ってしまった。
■前原氏ら4名が離党で「第6党」に
また、与党と急接近する動きは、党内に深刻な副作用をもたらした。昨年9月の代表選で玉木代表と争った前原誠司氏ら4人の国会議員が、国民民主党に離党届を出したのだ(離党届は受理されず除名処分)。
前原氏は会見で「トリガー条項の凍結解除というものに体重のほとんどをのせ、極めて支持率の低い岸田政権との協力を模索している」と批判し、玉木代表の路線に公然とNOを突きつけた。
もともと国会議員が21名だった国民民主党にとって、3人の衆議院議員と1人の参議院議員が抜けることは、非常に大きな痛手。17人となった議員数は国会における党の存在感にも大きく影響し、衆議院では日本共産党に次ぐ第6党となってしまった。また、いま代表代行兼政調会長として党を支えている大塚耕平参議院議員も、次の参議院選挙には立候補せず、名古屋市長選に出馬することを表明している。国民幹部も「いつか前原さんは抜けると思っていた」と振り返りつつ、「大塚さんもいなくなる中で4人減るのは相当痛い」と吐露する。
■苦境の国民民主 “兄弟”の立憲民主党は合流に意欲も・・・
与党との連携も見通せず、党勢の低下にも苦しむ国民民主党。一方で、連携に意欲を見せているのが野党第一党の立憲民主党だ。
立憲民主党の泉代表は、国民民主党がトリガー条項をめぐる自民・公明との協議を離脱したことを受け、「自公がやらないのであれば一緒に法案を出すことを考えたい」と協議を持ちかけた。これには玉木代表も「一致できる政党とは、ぜひ協議をしていきたい」と前向きな姿勢を示した。自民党に頼れない中、政策実現のため野党と連携していく狙いだ。
しかし、政策を超えた連携については慎重な姿勢を崩さない。立憲民主党の岡田幹事長は「もう1回大きなかたまりを目指したい。一緒になることで連合も応援しやすくなる」とテレビ番組内で述べるなど、政権交代のため国民民主党との合流に意欲を示す。
しかし、玉木代表は「政策本位で一致する政党とは協力するが、政権はさらに先の話」と厳しい姿勢を崩していない。泉代表が新たな野党連携の形として打ち出した「ミッション型内閣」構想にも、「安全保障やエネルギー、憲法といった基本的政策で一致できれば連立はありえるが、立憲の考え方がわからない以上、立憲をいまともに政権を担う政権とは考えていない」と突き放す。
党大会中にも榛葉幹事長が「ある政党の方が、考え方を改めるなら一緒になってもいいと言われた。大きなお世話だ」と反発。参加者からは拍手が上がり、ある国民議員も「榛葉幹事長の発言はこの党大会のハイライトの一つだ。支持母体の『連合』の前では言いにくいが、多くの人が腹の底では思っている」と振り返る。
国民民主党と立憲民主党は旧民主党を源流とし、両党とも連合の支援を受けている“兄弟政党”だ。しかし、2020年9月に袂を分かつ大きなきっかけとなったのが「政策の不一致」であることから、「立憲と一緒になってしまったら、支持者の信頼を失う」(ある国民議員)と懸念する声もある。一方で、「自民党が政権復帰以来最大のピンチを迎える中で、少なくとも旧民主系の立憲と国民が連携できないと野党としての存在意義が問われる」(ある野党議員)という意見も少なくない。
「与党にすり寄っている」と批判されても政策実現のためだと説明し続けてきた玉木代表。党勢拡大のため、次は何を目指していくのか。党運営の手腕が問われている。