【全文】岸田首相らのウクライナ訪問「現時点で計画していない」 官房長官会見(6/14午後)
松野官房長官は14日午後の会見で、自民党の外交部会で岸田首相のキーウ訪問の検討加速化を求める声が上がったことについて「総理を含む日本政府要人によるウクライナ訪問について、現時点で計画していない」と述べました。
<会見トピックス>
▽知床遊覧船事故
▽こども家庭庁
▽技能実習制度
▽AV出演被害防止・救済法案
▽NSC国家安全保障会議
▽岸田首相のキーウ訪問
▽豪副首相による長官表敬
▽日露安全操業協定
会見の概要は以下の通りです。
○松野官房長官冒頭発言はございません。
――知床沖の観光船沈没事故について。
観光船「KAZU1」を運航していた、知床遊覧船は事故責任は当社のみにあるのはおかしい、国にもあると不服を申し立てる社長名義の陳述書を国交省側に提出した。
国としての受け止めと今後の対応は。
○松野官房長官
有限会社知床遊覧船に対して、北海道運輸局が実施した特別監査において、海上運送法の違反が多数確認されたことから本日、北海道運輸局において同法の事業許可の取り消しに向けた聴聞が実施されたものと承知をしております。
また昨日、同社から北海道運輸局宛てに陳述書が提出をされ、ご指摘のような主張があったことも承知をしております。
政府としては聴聞の結果を踏まえ、処分内容を決定していく立場にあることから、主張に対する回答は差し控えさせていただきたいと思います。
いずれにせよ、政府としては二度とこのような痛ましい事故を起こさないよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
――こども家庭庁を設置するための法案について。
参議院内閣委員会で可決され明日の参院本会議で可決成立する見通し。
子供政策の司令塔となる組織が創設されることになるが、政府として期待することは。
また、一部の野党や専門家などからは、幼保一元化や子供の権利を守る組織人員配置のあり方が重要になるとの指摘も出ている。
今後どのように対応していく考えか。
○松野官房長官
本日、参議院内閣委員会において、こども家庭庁設置法案が可決をされました。
同法案ではこれまで各省において別々に担っていた子供政策に関する総合調整権限を、こども家庭庁に一元化し、子供や子育て当事者、現場の視点に立った強い司令塔機能を発揮するとともにこれまで省庁間、制度間のはざまに陥っていた課題や新規の政策課題も含め、子供や子育て当事者に対する支援を一元的に担っていくこととしています。
政府としては、国会でのご審議をしっかり受け止め、こどもまんなか社会の実現に向けこども家庭庁において、専任の大臣のもと、子供政策をさらに強力に推進し、子供の権利、利益の擁護に取り組んでいきます。
幼保一元化を含む組織のあり方については、現時点において、政府提出法案の考え方がベストであると考えていますが、施策の推進に当たっては、子供や子育て当事者有識者等の意見も聞くことにより公平性、透明性を確保しつつ取り組んでいく考えであります。
――午前中に開かれた外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議について。
閣僚会議で策定された工程表では、共生社会のビジョンとして、「日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、安心して暮らせる社会」「外国人を含めた全ての人が個人の尊厳と人権を尊重できる社会」などと示された。
一方で、日本で働く外国人の2割を占める技能実習生は、低賃金で劣悪な環境で働かされるケースも多く、ビジョンとかけ離れた実態がある。
外国人との共生の観点から、人権侵害が指摘される技能実習制度の廃止や、特定技能制度との統合を変更するつもりはないのか。
○松野官房長官
特定技能制度と技能実習制度のあり方については、本日決定された外国人材の受入れ・共生のための総合対応策に基づき、両制度の実施状況や幅広い関係者の意見等を踏まえ、外国人の権利保護の観点も含め、法務省、厚生労働省を中心に総合的な検討を行っていくものと承知しています。
――参院内閣委員会がさきほど、アダルトビデオの出演被害防止を目指す議員立法、いわゆる「AV救済法案」を可決し、明日の参院本会議で成立する見通し。
AV出演被害救済を初めて明文化する法律となるが、政府の受け止めを。
○松野官房長官
本日の参議院内閣委員会で全会一致で可決されたAV出演被害防止救済法案は超党派の皆さまの間で大変熱心に議論が重ねられて取りまとめられたものであり、関係者の皆さまに敬意を表します。
アダルトビデオ出演被害の問題は、被害者の心身や私生活に長期間にわたって悪影響を及ぼす重大な人権侵害であり、深く憂慮すべき問題であります。
本法案はAV出演被害の発生と拡大の防止を図り、被害を受けた出演者の救済に資するため、性別年齢を問わず、AV出演契約を無力化する特則等を設けるものであると承知をしています。
この法案が成立した際には、政府においても、相談体制の整備強化、被害発生を防止するために必要な教育、啓発等にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
――NSC(国家安全保障会議)について。
先ほどNSC関係閣僚会議が開催されたがどのような議論を行ったのか。
○松野官房長官
本日、国家安全保障会議の4大臣会合を開催をし、国家安全保障戦略等について議論を行いました。
議論の詳細については差し控えさせていただきたいと思います。
――本日の自民党の外交部会で総理のキーウ訪問の検討の加速化を求める声が上がった。
外務省が引き取った形になったが、今複数の国が訪問などする中、日本政府として、総理を含め政府要人が訪問する必要性、その意義についてどのようにお考えか。
また検討状況は。
○松野官房長官
わが国は祖国を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民とともにあります。
これまで累次にわたる首脳電話会談、外相会談などを通じ、こうした連帯を示しながらウクライナの政府との間で緊密に意思疎通を行ってきているところであります。
そのような中で強力な対ロ制裁措置や人道支援、財政支援、防衛装備品の供与等、わが国としてできる限りの支援をタイムリーに行うことで、ウクライナからの要請に対して、しっかりと対応してきているところであります。
ご指摘の総理を含む日本政府要人によるウクライナ訪問については現時点で計画はしていません。
ウクライナに連帯を示す手段は多様であり、引き続き日本として適切な形で対応していく考えであります。
――マールズ豪州副首相兼国防相の表敬について。
本日この後、長官はマールズ氏の表敬を受ける。
会談の狙いと日豪、日米豪の安全保障や防衛分野の協力についてどのような意見交換を期待するか。
○松野官房長官
本日夕刻、私はマールズ、オーストラリア副首相兼国防大臣の表敬を受ける予定となっております。
会談の内容について予断することは差し控えますが、日豪両国の特別な戦略的パートナーシップの強化を確認するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日豪に加え、日米豪や、日米豪印での一層の連携を確認したいと考えています。
――北方領土周辺の日露安全操業協定について。
ロシア外務省が7日、協定の履行中断を発表したが、その後の日露間の交渉の進捗状況は。
次の漁が始まる9月までにサハリン州との協力事業の実施と、それに伴う援助金の支払いは予定していないのか伺う。
○松野官房長官
ロシア側は、サハリン州との協力事業を、北方四島周辺水域操業枠組み協定の実施の前提条件であるかのように両者を結び付け、サハリン州との協力事業を理由に一方的に協定の履行の停止を主張していますが、このような形で一方的に協定の履行停止を発表したことは遺憾であります。
日本側として引き続き協定のもとでの操業が行われるよう、ロシア側と協議を行っていく考えであります。
こうした考えはすでにロシア側に伝えていますが、外交上のやりとりであり、これ以上の詳細についてはお答えを差し控えさせていただきます。
サハリン州との協力事業については今後の扱いについて、さまざまな状況を考慮して検討しているところであります。