【解説】菅新内閣は「きんぴらごぼう内閣」
■注目の大臣は?
藤井キャスター:20人の閣僚、小栗さんが注目するのはどの大臣ですか。
小栗政治部長:まずは、行政改革担当の河野太郎氏です。菅総理は今回一貫して、省庁の縦割り打破、規制改革を前に進めたいと話してきました。
その意味で注目されていた行革担当大臣なんですが、河野さんはかつて「元祖、仕分け人」という異名をつけられたほど、省庁の無駄に斬り込む、いわゆる事業仕分けなどで存在感を出しました。
河野さんのある意味、周りを気にせず大なたをふるう実行力に期待しての起用だとみられます。
次にデジタル担当大臣の平井氏です。行政のデジタル化、例えばオンライン診療や子どもの教育のためにパソコン1人1台配り、高速ネットワーク環境を整備する、といった仕事になりますが、かつてIT・科学技術担当大臣をつとめた平井さんに決まりました。実は平井さんは、今回の自民党総裁選で菅さんと戦った岸田さんの派閥に所属しているんですが、自民党のデジタル社会推進特別委員長も務めていた、この分野の専門家ということで、起用されました。
小泉進次郎議員も今回、「デジタルのことを平井さんがばっさばっさと改革していくんだと思う」と話しています。
そして、防衛大臣の岸氏です。岸さんは、いわずと知れた、安倍前総理の実の弟です。
ただ、安倍前総理への配慮というだけでなく、これまでに防衛大臣政務官や外務副大臣も務めた外交安保分野の経験が買われたものとみられます。
北朝鮮情勢を見据えて政府は、イージスアショアに代わるミサイル防衛策を年内をメドにまとめる方針で、早速手腕が問われることになります。
藤井キャスター:加藤官房長官や、田村厚生労働大臣の起用については?
小栗政治部長:とても手堅い人事という印象です。加藤官房長官は第二次安倍内閣で官房副長官を務めた経験もあります。ある政府関係者は調整能力・説明能力の高い人で、派手なパフォーマンスはしないけれど淡々と仕事をすると評しています。
田村さんは、今回の総裁選で菅さんと戦った石破派からただ一人入閣したんですけど、これまで厚生労働政務官や厚生労働大臣などを経験し、厚生労働分野を熟知しています。コロナ対策がまずは政権の一大目標になりますので、実務能力が買われたということだと思います。
■新内閣に「きんぴらごぼう内閣」と命名 その心は?
藤井キャスター:この内閣、名付けるならどんな内閣になるんでしょうか?
小栗政治部長:色々考えたんですが、「きんぴらごぼう内閣」としました。
藤井キャスター:その心は?
小栗政治部長:一つ一つの素材はよく噛めば美味しくて、栄養バランス、派閥のバランスもよく、食べれば身体にも良いのかも知れませんが、いかんせん新味に欠けるということです。
お弁当箱の蓋をあけて、「わあ!」と歓声があがるわけではないひと品、ということで名付けてみました。
ある与党関係者からは、「高揚感も何もない人事」という声があがっています。実際、もう一度顔ぶれをよくみても、前の内閣と同じ再任の閣僚が麻生財務大臣、茂木外務大臣など8人。前の内閣からの横滑りで担当が変わる閣僚が、河野さんら3人。再入閣は4人と、安倍内閣のどこかで見た顔ぶれがほとんどで、初入閣は5人に過ぎません。
菅さんは組閣にあたり周辺に、「サプライズは要らない」「派手な人は嫌いだ」と話していたということですが、このあたりは、人事でも話題を作り、求心力を高めたいとしていた安倍前総理と違う点かもしれません。
菅内閣として仕事をしていくなかで「へえ」と、私たちに新鮮な驚きを与えてくれるような実績を築いていけるかどうか、今後試されることになると思います。
藤井キャスター:この内閣「きんぴらごぼう内閣」ということで、それこそ(菅さんが出身の)秋田のうまい米ときんぴらごぼうがうまく合うかどうかという点ではありますが、1年後には新しい総裁を決める選挙がありますし、総選挙も近いということで、この1年間、きんぴらごぼうのように安定したうまみのある内閣を目指したという考えがあるんでしょうか。
小栗政治部長:そういう点も当然あると思います。新しさにこだわらない、いかにも仕事をする手堅い内閣をあえて目指したというところも感じられます。
■菅内閣の課題は?
藤井キャスター:一方で、菅内閣の今後の課題についてどのように考えていますか。
小栗政治部長:大きい意味では、菅カラーをどう出していけるか、ということだと思います。内閣の顔ぶれを見る限り「安倍カラー」が濃厚で、しかも「安倍政権の継承」を掲げる菅総理ですが、金看板として掲げている省庁縦割り打破、行政改革という、これまでやろうとしてもなかなか出来なかった分野でどれだけ成果をあげられるか。成果を出せば、それがすなわち「菅カラー」となって、支持されることにつながると思いますので、注目です。
また、NNNと読売新聞が行った最新の世論調査で、次の総理にどんな資質・能力が必要かを聞いたところ、「国民への説明能力」と「危機管理能力」が共に92%で、最も多い答えでした。「危機管理能力」は、官房長官時代に定評があった菅総理ですが、「説明能力」で、果たして世論の支持を得られるか。この点も課題かと思います。
■解散の時期は?
藤井キャスター:今後のスケジュールですが、11月にアメリカ大統領選挙、来年6月には東京都議会選挙、7月には東京オリンピック・パラリンピックも始まります。
今後、解散の時期が注目されますが、いつ頃が考えられるのでしょうか。
小栗政治部長:内閣の顔ぶれをみた、ある与党関係者は、「この人事を見たら、菅さんは解散する気はないな。あんな布陣じゃ解散は出来ない。解散は、東京オリンピック・パラリンピックがあるなら、その後だろう」と話しています。
またある自民党幹部も、「早期解散はトーンダウンした」と話しています。
当の菅さんは、自民党総裁に就任したおとといの会見で、解散について問われ、「コロナが完全に下火ということでなければ、なかなか難しい」ということと併せて、「せっかく総裁に就任したので、仕事をしたい」とも話しています。
この言葉と内閣の顔ぶれを見ると、解散は少し遠のいたのかな、とも見えますが、ただ、解散についてだけは「嘘をついてもいい」とされるのが政界です。
新政権発足後の支持率が高ければ、早いうちに解散を、という声が自民党内から再び高まることも考えられますので、まずは、最初の内閣支持率が解散を占うカギとなりそうです。