自民党…派閥・裏金と決別できる? 政治部長に聞く “派閥の解消”なるか “30年前と同じ”なのはなぜ? 【#みんなのギモン】
新しい動きが入ってきました。関係者によると、自民党の茂木幹事長は安倍派の一部幹部に対し「党内では責任を取るべきとの声が強い」と伝え、離党や議員辞職を念頭に、自ら政治責任を判断するよう求めたことが分かりました。
政治責任を求める安倍派幹部は、塩谷座長のほか高木事務総長、松野前官房長官ら、いわゆる「安倍派5人衆」が想定されています。
日本テレビ 政治部 田中秀雄部長
「茂木幹事長の今回のコメントは、とても重いと思います。実は、厳しい処分を求める声は政府内からもあがっているんです。現職閣僚の1人は『ルールを破った人間を処罰しないと何も解決しない。処分しないと岸田政権はもたない』と話しています」
そこで、以下のポイントを中心に詳しく解説します。
●派閥解消…歴史は繰り返す?
●「カネ」と「人事」 どうやって決別?
安倍派など裏金作りの温床となった「派閥の政治資金パーティー」を禁止にするとしました。また、派閥の「政治資金収支報告書」を提出する際に、外部監査を義務づけることにしました。
ただ一方で「派閥の全面解消」は見送り。麻生派、茂木派の2つの派閥は「政策集団」として存続します。
田中さん、これで「いわゆる派閥の解消」となるのでしょうか?
田中政治部長
「岸田首相は『派閥から脱却して、本来の政策集団に生まれ変わる』と強調したんですが、すんなりとは信じられません。自民党のある閣僚経験者は『病巣を取りきれていないと再発のおそれがある』と指摘しています。
実際、解散した派閥に所属していた議員に対し早くも、残ったほかの派閥から勧誘する動きも始まっている、という情報もあります」
■歴史は繰り返す…「派閥の解消」を掲げては頓挫した自民党
「再発のおそれ」とは、どういうことなのでしょうか。
田中政治部長
「実は、自民党はこれまで何度も『派閥の解消』を掲げては頓挫してきた、という歴史があります」
その歴史を振り返ると、今から35年前の1989年には「リクルート事件」で国民から厳しい批判を受け、「政治改革大綱」がまとめられました。
このとき「派閥の解消」を目指し、「派閥や閣僚のパーティー自粛」「総裁・副総裁・幹事長・閣僚などは在任中、派閥を離脱」といった改革が掲げられていました。
そして1994年、自民党が野党に転落したのを契機に、党改革実行本部が「派閥を年内に解散し、派閥事務所も閉鎖する」と決定しました。
さらに2009年9月。当時の民主党に大敗し歴史的な「政権交代」がありました。このときも、中堅・若手議員による自民党再生会議が「派閥の解消を進め、党運営への影響力を一切排除する」とした提言をまとめました。その会議メンバーには、現在、自民党の顔を務める茂木幹事長の姿もありました。
このように「派閥解消」に向けた提言や決定は、繰り返されてきました。
しかし最近まで、茂木派を率いる茂木氏が自民党の幹事長。麻生派を率いる麻生氏が副総裁。そして、今回の問題が大きくなるまで岸田派を率いてきた岸田氏が、党のトップである総裁を務めていました。
「党の幹部や閣僚在任中は派閥を離脱する」ということすら守られず、「解消」とはほど遠い状態です。
田中さん、なぜ、派閥はなくならないのでしょうか。
■30年前にも…派閥と「お金・人事」の密接な関係
田中政治部長
「見ていただきたい映像があるんですが、30年前、岸田派の前身『宮沢派』が解散を決めたときのものです。
30年前のニュースでは『すべての派閥が解散するが、政策集団に衣替えして活動を続けることになりそうだ。お金やポストで人をしばらないことが、派閥政治から決別できるかどうかの分岐点だ』と伝えています」
これは「今の状況と全く同じ」「全く同じコメント」ですが…。
田中政治部長
「それほど、自民党の派閥と『カネ・人事』というのは、密接に結びついていると言えるんです」
そこで続いてのポイントが、「カネ」と「人事」どうやって決別? です。
忘れてはならないのが「裏金」をなくす、「政治資金の透明化」です。今回の中間とりまとめでは、議員に関係する団体の収入を「銀行振込」で行うこと、収支報告書について「オンライン提出」すること、所属議員に対して夏に「氷代」、冬に「餅代」などと称して資金を配ってきた慣習を廃止すること、などが掲げられています。
しかし、これで十分なのでしょうか?
田中政治部長
「十分とは言えません。今回、3つの派閥の会計責任者が立件されましたが、『なぜ不正を行ったのか』『いつ誰が始めて、何に使われてきたのか』が、解明されていません。
岸田首相は、問題となった議員に対し『説明責任を果たし、必要な対応を取るよう求める』とするだけで、指導力を発揮していません。実態の解明なくして政治への信頼は取り戻せません」
田中政治部長
「今回、よく耳にした『政策活動費』についても指摘しておきたいと思います」
「政策活動費」とは、自民党などの政党から、その党の所属議員個人に対して支出される「お金」のことです。
上記は、実際の自民党の収支報告書のコピーですが、2022年5月19日に幹事長である茂木さんに5000万円、翌日も茂木さんに5000万円、1か月後に3000万円など、2022年だけで自民党から茂木幹事長に、9億7000万円ものお金が支払われていました。
党の幹部までを合わせると、14億円あまりが支払われていました。しかも、詳しい使い道は明らかになっていません。「政策活動費」という名前のお金でありながら、使い道が明らかになっていないのは、「あり」なのでしょうか。
田中政治部長
「実は政策活動費は『党から議員へいくら渡したか』は公表しなければいけませんが、そこから先の、議員の使い道については、報告する義務がないんです。
かつて総理大臣も務めたある議員に『政策活動費の見直しはできないのか』と私が直接、質したところ、『権力の源だから』と話していました。
しかし民間では『インボイス制度』が導入され、お金の流れを細かくチェックされているのに、政治資金だけが今のように不透明なままでは到底、理解は得られません。
与党・公明党は『政策活動費の使い道を公開すべきだ』と主張していて、この扱いが26日から始まる通常国会の焦点の1つとなります」
中間とりまとめでは、本来、首相・総裁が決める閣僚や党の役員の人事について、派閥が関与することを「禁止」としました。田中さん、これで大丈夫でしょうか?
田中政治部長
「岸田派はこれまで、党内の第4派閥に過ぎませんでした。そこで他の派閥に配慮し、人事にあたっては、それぞれの派閥からの要望を受け入れたため、結果として不祥事が相次ぎ去年、おととしと、内閣改造後に辞任ドミノが起きてしまったのは、記憶に新しいところです。ぜひ岸田首相には、この機会に『派閥に人事は関与させない』ということを徹底してほしいと思います」
「カネ」と「人事」の力を奪ったとしても、派閥はなくならないのでしょうか?
田中政治部長
「解散を決めた二階派の二階会長は『これからも人は自然に集まってくる。常識の範囲内で自然体でやっていく』(19日)と話しています。
ことしの秋には事実上、次の総理大臣を決める自民党の総裁選挙が控えています。
岸田首相は『解党的な出直しを図り、全く新しく生まれ変わる覚悟で信頼回復に向け、取り組む』と強調していますが、無派閥となった議員や、政策集団として引き続き活動する議員たちがそれぞれ、どう行動するのか、注意深く、見ていく必要があると思います」
政策活動費は、すべてオープンにした方がいいのではないでしょうか。
田中政治部長
「今のように不透明な状態は正さなければいけません。一方で、モグラ叩きのように、今回起きてしまったからそこだけ直す、といった対症療法ではなく、そもそも政治資金のあり方を根本から見直す必要があると思います。
これだけの大きな問題を前にどう行動していくのか。次の時代を担う新しい政治家が与野党双方から出てくるのかにも、注目していきたいと思います」
次の総理大臣を決める自民党の総裁選が、この秋にあります。このままで岸田首相は総裁選で勝てるのでしょうか。
田中政治部長
「26日からの国会で予算審議もありますので、そこの論戦を見た上で判断したいということになると思います」
(2024年1月25日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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