岸田首相「全責任を持って必要な対策を講じ続ける」 処理水“海洋放出”へ
福島第一原発の処理水は、週内にも海に放出される見通しとなりました。岸田首相は21日午後、“最後の関門”とも言える全漁連=全国漁業協同組合連合会の会長と会談し、「長期にわたろうとも全責任を持って対応する」と約束しました。
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「常磐もの」と呼ばれる福島の魚。季節の旬の魚が1年中、水揚げされています。原発事故から12年。今となっては…
斉藤水産 斎藤又雄統括責任者
「今はね、常磐ものをいやがるとか、そういう声は聞かなかった」
街の人からも…
70代
「(福島県産)すすんで買いたいわね」
40代
「(産地は)気にしないようにしてます」
しかし、今、福島第一原発の処理水の海洋放出が最終局面を迎えています。
福島第一原発に大量のタンクが並んでいます。廃炉作業に伴って発生した放射性物質「トリチウム」などを含む処理水が、この一つ一つに保管されていますが、まもなくタンクが限界に達するため、政府は、安全基準よりも大幅に濃度を薄めた上で、海に放出することを検討してきました。
20日、岸田首相は福島第一原発に視察に訪れ、処理水が海洋放出されるまでの段取りを自分の目で確認。政府は、週内にも放出することで最終調整を進めています。
岸田首相
「海洋放出は、廃炉と福島の復興を進めていくために決して先送りができない課題である」
ただ、政府にとって“最後のハードル”となっていたのが、漁業関係者の理解を得ることでした。
21日、閣僚自らが出向いたのは、全漁連=全国漁業協同組合連合会の本部です。険しい表情で席につく漁業関係者を前に…
西村経産相
「風評影響や生業継続に対する様々なご不安、ご懸念に対処するべく、処理水の処分が完了するまで全責任を持って対応していきたい、取り組んでいきたい」
深く頭を下げた西村経産相に対し、冒頭、反対を表明した全漁連。
全漁連 坂本雅信会長
「まずはじめに申し上げますけど、全漁連としましては依然として反対である」
その上で、一定の理解も示しました。
全漁連 坂本雅信会長
「(処理水の)科学的な安全性については理解を深めてきている」
およそ1時間の協議後、全漁連の会長が向かったのは、首相官邸です。岸田首相とも面会を行いました。
岸田首相(21日午後4時頃)
「たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、全責任を持って対応することをお約束いたします」
全漁連 坂本雅信会長
「我々の願いは漁業を続けていくというその一点。総理におかれましては、特段のご配慮をお願い申し上げたい」
すると、再び…
岸田首相
「国が全責任を持って必要な対策を講じ続けることをお約束いたします」
全漁連 坂本雅信会長
「本日の総理の発言、非常に重い発言だと受け止めております」
政府は一定の理解を得られたと判断。22日に関係閣僚会議を開き、週内にも放出することを決める予定です。
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迫る海洋放出。これに強く反発を続けているのが、中国です。
中国外務省の報道官(日本時間21日午後4時半頃)
「日本政府は国内外の反対の声を無視し、世界の海洋環境と人類の健康を損なうリスクを無視し、放出計画を頑なに推し進めている」
北京市内にある日本料理店では今…
北京の日本料理店 小林金二店主(中国・北京、21日)
「元々、日本のカキを使ってたけど入ってこないんで」
――これはどこ産?
北京の日本料理店 小林金二店主
「山東省」
7月から中国当局が放射性物質の検査を強化しているため、日本の海産物が仕入れづらい状況になっています。カキも、お刺し身も、焼き魚も本来は日本産ですが、今はすべて中国産です。
中国人の客
「今は日本の周りの海からの食べ物はちょっと心配しています」
店主の小林さんは福島で生まれ育ちました。
北京の日本料理店 小林金二店主(福島出身)
「福島大好きなんですね、生まれ故郷ですから。北京にいてもなるべく早く福島の原発のそういう話題から切ってほしい。中国語で発音すると福島=フーダオ。福が来る、到達するという発音と同じ。福島には福が来る所だと思っていますから」