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“困窮子育て世帯”への「5万円給付」 自民・公明・立憲が検討も…実現性は?

2023年3月11日 10:00
“困窮子育て世帯”への「5万円給付」 自民・公明・立憲が検討も…実現性は?

岸田首相が追加の物価高対策を与党に指示する中、与党内では生活困窮世帯へ子ども1人あたり5万円を給付する案が浮上している。一方、立憲民主党も低所得世帯に対して、子ども1人あたり5万円を4月末までに給付する法案を提出した。果たしてその実現性は?

●自民党:参議院「5万円給付」を緊急提言 全体の提言に反映は?

「物価高騰下における、困窮子育て世帯等の支援に関する緊急提言について、取りまとめたところであります」(自民党・世耕参院幹事長/10日の記者会見)

10日午後、自民党の世耕参院幹事長が発表した「物価高騰下における困窮子育て世帯等への支援に関する緊急提言」は、以下の3つを柱としている。

(1)困窮子育て世帯への子ども1人あたり5万円の現金給付
(2)困窮子育て世帯への食料品等支援を行う自治体・NPO等の支援
(3)地方創生臨時交付金の追加配分

世耕参院幹事長は、「参議院自民党ほど、苦しい現場の声を直接聞いているところはないという自負を持っている」と強調し、自民党が来週取りまとめる予定の追加の物価高対策や、政府の対策に反映させたいという意欲を見せた。

岸田首相は今月3日、自民・公明両党の政調会長に対し、エネルギーや食料品などの高騰を踏まえ、追加の物価高対策を指示。それぞれの党が議論を行っており、来週17日までに提言をまとめ、政府に提出することになっている。

自民党内では、エネルギーや食料品対策として、これまで直接的な支援の対象外となっていた、プロパンなどのLPガス利用者の負担を軽減するための支援策や、卵や肉などの食料品価格を抑えるための飼料価格対策などを盛りこむ方向で検討が進められている。

一方、困窮子育て世帯への現金給付について、ある自民党幹部は「対策に盛りこまれるかはわからない。すでに給付は一度行われていて、対象外となった人もいる。全体のバランスを見ないといけない」と慎重な姿勢を示す。

また、別の自民党幹部も「現金給付など、バラマキ政策ばかりでいいのか」と指摘していて、参議院自民党としての5万円給付案が、実際に党全体としてまとめる提言に盛りこまれるのか、詰めの調整が行われることになる。

●公明党:低所得子育て世帯に再度5万円を「支援が急務」

公明党もLPガス利用者の負担軽減策などができるよう、地方創生臨時交付金の積み増しや、食料品の高騰対策として、輸入小麦の激変緩和措置や飼料の高騰対策などを提言に盛りこむよう検討が行われている。

さらに、高木政調会長は8日の会見で、「相次ぐ食料品の値上げなど、物価高騰が国民の生活を直撃している中で、特に大きな影響を受けているのが低所得世帯であり、中でも生活に困窮する子育て家庭への支援が急務だ」と述べ、去年の緊急対策に続き、今回も所得が少ないひとり親世帯や住民税非課税の子育て世帯を対象に、子ども1人あたり5万円を「特別給付金」として、再び支給すべきとの考えを示した。

ある公明党関係者は、「統一地方選を前に、しっかりと物価高対策、困窮世帯への対策を打ち出したい」と強調するが、公明党の支援者からは「給付ばかりでかえって無策な感じがする」と懸念する声も出ている。

果たして、5万円給付は実現するのか。

ある官邸関係者は「総理の指示とは違う」と懐疑的な見方を示す一方、別の政権幹部は、「今までも物価高対策として、給付をやっているから、できないことはない」と話す。

●立憲民主党:低所得世帯 子ども1人に5万円…代表が“勘違い”も

一方、立憲民主党は10日、低所得世帯に対して子ども1人あたり5万円を4月末までに給付する議員立法を衆議院に提出した。しかし、この前日の泉代表の発言が混乱を招くこととなった。

「物価高対策は、政府与党の側から低所得の子育て世帯への5万円給付という話が出てきている。またかと。また線引きをし、分断をし、一部の方々への給付かと。二重に三重に残念な思いをしている。(中略)本日のNC(次の内閣)でも、我々なりの子供子育て世帯の給付策、給付案というものを皆様にご提示をしていきたいと思っている。子育て世帯への、全子育て世帯への5万円給付ということであるので、ぜひこれまた皆さんと議論してまいりたい」

ところが、立憲民主党が提出を予定していた法案は、所得制限を行うものだったのだ。

泉代表は、その後、「事務方から渡された紙が間違っていたので撤回したい」と述べたが、立憲民主党の幹部からは「事前に泉代表への説明が足りなかったのでは」「連携が取れていない」などの声が相次いだ。

統一地方選挙の直前になって各党から相次ぐ低所得者層への現金給付案。支給対象に当たらない人たちからは、「ばらまきだ」「不平等だ」などといった批判があがる中、岸田政権はどのような判断をくだすのか。