【解説】マイナンバー“不安” 「カードの自主返納で解決するわけではない」政府はどうする…
●まだトラブル…自主返納も
●来秋“保険証廃止”は?
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
マイナンバーのトラブルを受けて、カードを自主返納する動きが出ています。マイナンバーをめぐっては、次のようなトラブルが報告されています。
●7372件…マイナ保険証で別人の情報を誤登録
●172件…別人にマイナポイント付与
●12件…コンビニで別人の住民票など印刷
●940件…公金受取口座をめぐり他人の銀行口座を誤ってひも付け
5日、街では次のような声が聞かれました。
マイナカードなし・40代
「持っていないです。知り合いの旦那さんですけど、仕事中にケガをしてマイナンバーカードを使おうと思ったら『これ別の人ですよ』みたいなのがあった」
マイナカードあり・70代
「保険証とは別にしてほしい」
「返納はしません。みんなが利用しやすい、安全にしてほしい」
マイナカードあり・学生(20代)
「(返納は)考えていない」
マイナカードあり・母親(40代)
「被害にあった方は当然、怒ると思うし、だったら持ってない方が良いなってなるのかなって思う」
このカード“自主返納”の動きについて、自治体に取材しました。
東京・墨田区では、6月に「10件」の返納があったそうです。区によると、トラブルについて「報道があってから増えた」といい、返納の理由について「マイナンバーの安全に対する不安」があるということです。
石川・金沢市では、4月は「1件」、5月は「3件」だったのが、6月は「23件」と急に増えています。
こうした中、政府からはマイナンバーカードの不安の声に応えようという対策も打ち出されました。それが、「暗証番号なしマイナンバーカード」というものです。
マイナンバーカードの利用には、基本的に暗証番号が必要です。この暗証番号について、高齢者からは「番号の登録・管理が不安」という声、寝たきりや認知症の人はそもそも代理の人に頼む必要もあり「暗証番号の設定が難しい」といった声が上がっています。
こうした問題を受けて、松本総務相は4日、「暗証番号の設定なし」で使えるカードを11月ごろまでに交付できるようにしたいと明らかにしました。
例えば、「マイナ保険証」は暗証番号を設定しなくても、顔認証や目視での本人確認をして使うことはできるということです。一方で、専用サイトの「マイナポータル」やコンビニでの「証明書」の発行サービスは、使えないということです。
総務省は今回、「暗証番号なし」の対象になるのは、福祉施設などに入居し外に出られない人、コンビニをあまり利用しない人を想定して計画を進めているとみられます。そういう人たちにもマイナンバーカードを取得してもらって、そのメリットを受けてほしいという狙いがあるようです。
注目の河野デジタル相の発言が、波紋を広げています。
河野デジタル相は2日、「マイナンバーカードという名前をやめた方がいいのでは」と述べました。これに3日、政府のスポークスマンである松野官房長官が「あくまで個人的な見解。政府として検討しているものではない」と、なかば打ち消すような発言をしました。
4日、河野デジタル相も「現時点で今のマイナンバーカードの名前を変える議論ではありません」と述べました。一連の発言から、ややバタバタしているような印象を受けます。
マイナンバーカードをめぐって様々な問題が発生する中で、来年の秋には現在の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化するという政府の方針があります。
これについて野党は「撤回」するように求めています。現在、国会は閉会中ですが、5日、特別に国会を開き、河野デジタル相が出席した「閉会中審査」という審議が行われました。
議論は3つの点について行われました。
1つ目の「健康保険証の廃止」について、野党側は「スケジュールありきでおかしい」と延期を求めました。
立憲・長妻政調会長
「来年の秋廃止というのを、もう微動だに変えずに進むというのはおかしいと思うんですが、これ検討してもらえませんか」
加藤厚労相
「どこかで時期を決めなければ、移行できないわけでありますので。その時期(来年秋)までにしっかりとマイナンバーとマイナンバーカードと健康保険証の一体化をしっかり進めていく」
加藤厚労相は予定通り進める考えを強調しました。2つ目は、“名称変更”についてです。
野党側が「名前を変えたら問題がなくなるわけではない」と指摘したのに対して、河野デジタル相は、変更が必要な理由について「マイナンバーというシステムとマイナンバーカードという物理的なカードは別物」ということを理解してもらうためと説明しました
3つ目は、相次ぐマイナンバーカードの「自主返納」についてです。
野党側が「全国で返納が相次いでいる」と指摘したのに対して河野デジタル相は、今起きているトラブルはマイナンバーとデータのひも付けのミスであり「カードの自主返納で解決するわけではない」と理解を求めました。
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「マイナ保険証」で別人の情報がひも付けされたトラブルは7372件と、割合にすると0.006%(10万人に6人)ということです。もちろん、許されないミスです。
社会のデジタル化は、もう止まらない世界の流れになっています。政府にはぜひ、このトラブルと、国民の不安を一つ一つ丁寧に解消しながら、デジタル化を進めてほしいと思います。
(2023年7月5日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)