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菅外交『内憂外患』総裁選?と総選挙で混迷

2021年8月12日 17:21
菅外交『内憂外患』総裁選?と総選挙で混迷

ニューヨークでの国連総会、イタリアでのG20サミット、イギリスでのCOP26など重要日程が目白押しの秋の外交日程。しかし、内閣支持率の低下と衆議院の解散・総選挙、そして自民党総裁選など政治日程の影響で、菅首相が出席できるのかすら不透明な状態に陥っている。高まる政局モードの中、「内憂外患」状態の菅外交を解説する。

日本テレビ外務省担当・前野全範

■頭を悩ませる外務省幹部 『本来、秋は外交の季節だが…』

東京オリンピックが無事閉幕し、パラリンピック開幕までつかの間のお盆休みモードに入っている霞が関。しかし、外交政策を担う外務省では幹部陣が複雑に入り組んだ政治日程を前に、菅首相の首脳外交の予定が立てられず苦悩している。最近、省内でよく耳にするのは、『本来、秋は外交の季節だが、今年は政治日程があるから…』というボヤキだ。

例年だと夏休み明けは首脳外交が活発化するのだが、今年は秋までに衆議院の解散・総選挙があるため、そもそも外交日程が立てづらかった。それだけなら前から分かっていた話なのだが、内閣支持率の低下で総選挙のタイミング自体が不透明になっている上、ここへ来て総選挙より前、9月末に自民党総裁選が実施される可能性が出てきたのだ。

■9月下旬は国連総会が開催予定 菅首相は総裁選を理由に欠席?

そもそも、9月下旬にはニューヨークで国連総会が開催される予定になっている。去年は新型コロナの影響で全面オンライン開催となったが、今年は首脳が国連本部で演説することも可能とする「ハイブリッド型」での開催が決まっている。つまり、2年ぶりに国連を舞台にした対面での首脳外交も行われる見通しなのだ。

通常であれば当然、菅首相は国連総会に出席するが、9月末に自民党総裁選が実施されると、総裁選の選挙期間と国連総会の日程がもろにバッティングしてしまう可能性がある。

当然、首相としての外交日程を優先して、総裁選の期間中でもニューヨークに行くことはありうる。ただ、総裁選の候補者の顔ぶれや、党内情勢によっては、国外に出ている場合ではない状況も予想される。

■アメリカは初のクアッド首脳会談を打診 日本はどうする?

さらに事態を複雑にしているのが、バイデン政権が国連総会にあわせて初めてとなる対面での日米豪印(クアッド)4か国の首脳会談の開催を打診していることだ。クアッド4か国の連携は日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現するためにも、最も重要な枠組みの一つ。日本政府内には『国内の内政事情を理由に首脳会談を断るのはできれば避けたい』との声も根強い。

■10月以降もG20サミット、COP26など外交日程目白押し

そして、解散・総選挙についても外交日程をにらみながらタイミングを決めなければならない事情がある。10月30日からイタリア・ローマで米中首脳も出席してのG20サミット、11月2日からイギリス・グラスゴーで気候変動問題について話し合うCOP26、さらに11月第2週にはオンラインでのAPEC首脳会議が予定されているのだ。

菅首相が総裁選を実施しないまま、9月上旬に衆議院を解散できれば、総選挙の投開票日は10月中旬が軸となり首脳外交への影響は避けられる。しかし、9月下旬に自民党総裁選を実施した場合、その後の日程はかなり窮屈になり、10月下旬からの一連の外交日程の最中に、日本国内では解散・総選挙が行われているという状況になりかねないのだ

■「内憂外患」状態の菅外交 最初の関門はロシア外交か?

総裁選・総選挙という内政課題と秋の首脳外交との調整で、まさに「内憂外患」状態となっている菅外交。

さらにここに来て、9月2日からロシア・ウラジオストクで開催予定の「東方経済フォーラム」にも注意が必要となっている。ロシアのプーチン大統領は先日、北方領土での共同経済活動について「新たな提案」があると発言したが、「東方経済フォーラム」の場で、内容を明らかにする可能性が出てきているのだ。

外交と内政の複雑な連立方程式に対して果たして適切な「解」を導き出せるのか。菅外交は大きな夏休みの宿題を抱えた状態となっている。