「配慮義務」で“マインドコントロール”の寄付防げるか……被害者“救済法案”
協議が大詰めを迎えている世界平和統一家庭連合いわゆる“統一教会”の被害者救済法案。政府与党案では、不当な寄付を防ぐために、「禁止」とすることと「配慮」すべきことを分けて定めています。元2世信者などが訴えるマインドコントロールによる寄付は防げるのでしょうか。
■「配慮義務」 寄付を取り消せないケースも?
有働由美子キャスター
「(教団)『被害者救済法案』の協議について、一番の目的は不当な寄付を防ぐことですが、今、焦点になっているのが『配慮義務』というものです。これはどういうことでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員国際部デスク
「不当な寄付を防ぐために“禁止”することと、“配慮”すべきことを、政府与党の案は、分けて定めています」
「“禁止”されるのは、霊感商法で不安をあおって“寄付が必要不可欠”と告げるなど、個人を困惑させて寄付を求める行為です。一方で、自由な意思を抑圧して適切な判断を困難にさせることのないよう、このような行為には“配慮を義務づける”としたわけです。『マインドコントロールが問題だ』という指摘がありますので、これを踏まえて定めたわけです」
「“禁止行為”と“配慮義務”、この2つの扱いは違ってきます。同じ100万円の寄付でも“禁止行為”に反して寄付させられたなら、被害者は寄付を取り消す権利があります。でも、“配慮義務の違反”とされたケースでは、寄付を取り消せないケースもあります。その点について、政府与党は『配慮義務を規定することで、民事訴訟で損害賠償が認められやすくなる』と説明しています」
「野党は、『マインドコントロールすることを禁止行為にすべきだ』と法案の修正を求めていますが、政府与党は『何をもってマインドコントロールなのか定義するのは難しい』としています。さらに『本人が良いと思って寄付したお金を家族が勝手に取り返すのでは、個人の財産権を侵すことになる』と説明しています」
■「網の目は狭くしなくては」
有働キャスター
「ただ、被害者の人たちは『マインドコントロールの下での高額の寄付こそが問題』だと訴えてきました」
小野委員
「改めて、教団の元2世信者の小川さゆりさん(仮名)に話を聞くと、『マインドコントロールの下では、むしろ寄付に前向きな達成感を感じている人がほとんどです』『適切な判断ができない状況を作り出していくことは、すごく悪質ですよね。それを禁止していかないと、被害は今後も拡大しますよ』と話していました」
「そして、教団の被害者の相談にあたってきた、全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士は『配慮義務ではなくて、禁止行為として条文に記載することで抑止力が強くなる』『“統一教会”は網の目をくぐり抜けているわけだから、網の目は狭くしなくてはならない』と話しています」
「『不十分だ』という声もある中で、政府与党としては、野党側の理解を得たいわけですので、“配慮義務”をより厳しくして、“義務を怠った際には勧告し、従わなかった場合には法人の名前を公表する”という案を5日、野党に提案しました。こうして理解を得て、あと残り5日になった今の国会での成立を目指しています」
有働キャスター
「この協議は大詰めですが、とにかく被害者の救済、そしてこの先の被害防止のために何が一番いいのかを最優先に考えて、与野党には中身の徹底した議論をお願いします」
(12月5日放送『news zero』より)