【内幕】「この国はハンデを背負っている」アベノミクス 安倍元首相銃撃1年…側近が語る「長期政権の舞台裏」⑤
――最後に経済について。経済、雇用が増えた点はありますが、実質賃金が上がっていないという指摘も一方であります。安倍政権の経済政策をどのように評価していますか。
長谷川元首相補佐官
3本の矢、経済政策のパッケージとしては、私としては慧眼だなと思っています。ただ理想的に言えば、3本目の矢が、もう少し色々ついてくればよかったなという面はあります。
ただ、金融については、安倍政権が始まる前にいったい何があったかということですよね。私は金融について、私の意見にもちろんなるんですけども、安倍政権が終わった直後は、まだアメリカもヨーロッパも、あんなに急にインフレ対策をとるというふうになってなかったですから。
その中で、この間は路線を維持するというのはやはり、ひとつの慧眼だったんだろうなと。いわば常識的なやり方だったんだろうなと思います。
賃金はもちろんあげた方がいいに決まってるし、上がって欲しいと思うんですけれども、色々なハンデをこの国は背負っている。
二つありますが、一つは高齢化です。
もう一つは、いわゆる就職氷河期世代と言われた時期にぶつかってしまった方が、なかなかいわゆる正規雇用に道が遠くて、そして卒業をして何年か経ってしまったという。そこの方々に訓練とチャンス、これを何とかしなくちゃいけないんだろうなと思っています。
ただ安倍内閣でやったで圧倒的に大きいものは、やはり観光中心にした地方の振興、47都道府県で有効求人倍率が1を超えたというのはこれまでもいないし、初めてのことです。
やはり仕事を持つということで励みにもなるし、ある種の職場のルールにも従うし、そして社会の集団活動もできるようになるし、そういった意味で地方の振興にもなる。
それからもう一つ、これは年金の運用方法の変更。安倍総理が内閣の中盤、頭からできなかったわけですが、途中からいわゆる債券中心から国内で運用する中心を、外国に目を向け、株式の運用を増やした。
その方針を菅内閣も踏襲したわけですが、2012年の9月か10月ぐらい、すなわち政権が目に見えてきてから、比較的最近に至るまで、100兆円以上増えたのかな。GPIFの資産が。こういった事を実現した事は、多くの方に裨益しているのではないかと思います。
総理自身は、デフレからの脱却を優先しているので、あまり消費税を上げることについては、乗り気でない面もあったんですけども、しかし3党で決めた話だということで、2回上げたわけですね。
2回目は、やはり全世代型の社会保障にしたいということで、家計があまり豊かではない人が、それを理由に学校に行けないとおかしい、若者の無償奨学金を増やすと。
全員ではありませんけども、家計の規模が小さい方については重点的にやるとか、そういう社会保障を全世代型にするようなことをして、ご自身の任期中に、消費税を2回上げたという総理大臣は、もちろん初めてですけども、そもそも一度も上げない方も多くいるんですが。多分これからもなかなか出てこないんじゃないかなと。
力がある人は自分で才能を発揮して、そして競い合って力を伸ばす。これが安倍総理が自由貿易というものを是非やるべきだと言った一つの理由。これはご本人がそう仰ってましたけど、それと同時に競争だけではなくて色々な自分の置かれた環境とか、もちろん中には運もあると思いますけれども、一時的に調子が悪い人にそういった方が頑張ってもらって、稼いだ税収を回すような、そういうようなイメージが頭にあったんじゃないかなと。
(聞き手:日本テレビ報道局政治部 本岡英恵)