【解説】“止まらぬ物価高” “戦後最悪の日韓関係”“ギリギリの内閣支持率”国民は今 何を求める? 2023年3月世論調査
■優先して取り組んでほしい課題は85%が “物価高対策”
竹内デスク)
今月の世論調査で岸田政権に取り組んでほしい政策の項目が出そろいました。最も多かったのは“景気雇用対策”で全体で90%。第2位は物価高対策で85%でした。
物価高がどの程度、家計の負担になっているかを聞いたところ、全体では「大いに負担を感じている」が55%。「多少は感じている」が37%でした。特に、働き盛り、子育て真っ盛りの30代に限ると、「大いに負担に感じている」という人が67%と、全体に比べて12ポイントも高い結果になりました。
菅原解説委員)
政府は物価高対策を22日にもまとめる方針ですね。
竹内デスク)
間もなく政府が出す、物価対策の中身を見ていきますと、やはりエネルギー、石油などが高くなっているので、今回はいわゆる都市ガス以外の、LPガスとかプロパンガスにも補助金を出すことが盛り込まれる見通しです。
菅原解説委員)
公明党の幹部は党内で議論していた時に、「茨城県モデルを想定しています」と話していました。実際どうなるかはわからないですが、この「茨城県モデル」でいうと、LPガスの使用料金を1世帯あたりの500円、販売事業者を通じて値引きすると。
竹内デスク)
政府は地方自治体に対して、「ある程度は自由に使っていいですよ」という交付金を渡す方針なので、「茨城県モデル」も一つのモデルケースとなって、各地の自治体でいろんな補助のあり方というのがこれから議論されると思います。
そして、皆さん気になるところが、一般の家庭に対してのいわゆる補助金です。低所得世帯には3万円。さらに、子育て世帯にはプラスして子供一人当たり5万円が出る見込みです。例えば、子供が2人いる世帯には、3万円が出た上に、5万円が2人分出るので、合計13万円が給付されるということになります。
菅原解説委員)
ただ、低所得世帯への給付については、与党内からも批判の声がありますね。
竹内デスク)
そうなんです。一つは、低所得世帯となると、どこかで線引きをするわけですけれども、特に子育て世帯はみんな大変ですから、やはり「区別なく給付した方が良いのでは」という批判・意見もあります。
もう一つは、財源。どうしても借金に頼るということになりますので、「将来世代の負担になるじゃないか」という指摘や批判もあります。
■日韓の関係改善 若い世代は“冷めている”?
竹内デスク)
「今後、日韓関係がどうなると思うか」を聞いたところ、全体としては「良くなる」が、32%「悪くなるが」4%、「変わらない」が一番多くて61%という結果でした。
さらにみていくと、“世代で違い”があることがわかりました。10代から30代の、比較的若い世代では、「良くなる」と答えた人は25%と全体に比べると7ポイントも低くなっています。一方で、60歳以上の世代では、「良くなる」と答えたのは37%で、全体よりも5ポイント高い結果となりました。
また、岸田首相と韓国の尹大統領が東京で首脳会談を行いましたが、その評価について聞いたところ、全体としては「評価する」が65%。「評価しない」は24%と、「評価する」が多かった。
ここで、10代~30代は「評価する」56%だったのに対して、60歳以上は69%と、何と13ポイントも高い数字になりました。つまり、首脳会談をやったことに対して「良い」と評価した人は、高齢層の方が多かったということです。
菅原解説委員)
若い世代はK‐POPだったり、韓国ドラマだったり、文化的に非常に韓国に好意を持っているのかなと思っていましたが、今後の関係が「良くなる」と答えた人の割合が低いというのは、ちょっと意外です。
竹内デスク)
すごく意外で、若い人の方が案外“冷めている”ような。むしろ年齢が高い人の方が韓国に対して“期待している”ということが見て取れます。
菅原解説委員)
ただ、気になるデータもあります。内閣府の「外交に関する世論調査」の令和4年の調査だと、10代20代が現在の日本と韓国との関係が「良好」だと思っている割合が比較的高いんです。40%位の人が関係が「良好」だと思っている。このようなデータが出ていているということは、今、もう既に“そこそこ良い”という感覚で、「この後そんなに変わらないのではないか」と思っている可能性もあると思います。
竹内デスク)
そうかもしれません。ある若者に聞いたところ、「政治と文化は切り離して考えているので、文化的にK-POPなどで韓国が好きだということと、政治を見る目というのは別の話だ」と話していました。また、ある政界の関係者は、「政治的にはここ数年、ずっと関係が良くなかったので、若い人からすると韓国と政治的にいい状態だったことが少ない。そのため、もう“面倒な隣人”なんだというイメージが固まっているのかもしれない」と分析していました。
■岸田内閣支持率や“やや回復傾向” 支持をしているのは・・・
竹内デスク)
岸田内閣を「支持する」は前の月の41%に比べて、ほぼ横ばいですが、1ポイントほど高くなりました。そして、不支持も、今月は43%とだいぶ下がった結果、支持が42%、不支持は43%と、ほぼ拮抗するところまで回復してきました。
年代別で見ると、ある特徴がわかります。例えば、10代20代の「支持しない」は51%。全体は43%ですから、不支持はなんと8ポイントも高い。岸田首相のことが“嫌い”だ、「不支持」だという人は若い人ほど多いという結果です。
その反対に岸田政権の支持層が、どこにあるかもわかりました。60代以上では、全体よりも5ポイント高く、47%の人が「支持」しています。
例えば、日韓首脳会談についても、「評価する」と答えた人は60歳以上では69%に達しています。10代から30代の56%に比べると、60歳以上の人の69%というのは、なんと13ポイントも高いわけです。
「何で支持するか」も聞いていますが、岸田首相を「信頼できるから」と答えている人は、60歳以上では14%と、一応いますが、10代~30代だと、なんと7%となりました。
菅原解説委員)
安倍首相は若い人たちの支持が多かったと思いますが、前に若者の政治参加を促すような団体の人と話していて、やはりポイントは“改革色”じゃないかと言っていました。改革を前面に押し出して、「今の世の中を変えるんだ」という色を若者は好むけれども、60歳以上の方は、“安定”を好むので、やはり岸田首相は、どちらかというと“安定”のイメージではないかと。
竹内デスク)
そうですね。岸田首相の国会答弁、特に1月から始まった国会答弁を見ていると、すごく“安定”しています。安倍元首相は、ちょっと野党側に挑発されると、「売られたケンカは買うんだ」というような感じで、野党側を厳しく批判したり、反論したりするところが目立ちましたが、岸田首相はほとんどそういう場面がなく、淡々と答弁していることが多く、非常に“安全運転”な感じがします。
そしてもう一つ。やはり大きかったのは、去年のいわゆる統一協会の問題があったときや、閣僚の問題がいろいろ指摘された時期に、先手を打って対策をするというよりは、“受け身”になっているという評価が多かった。“積極的に改革に取り組む人”という印象が、岸田首相にはひょっとしたら乏しいのかもしれません。
この解説でも何度も指摘していますが、政策をいかに実行するかが重要で、目に見えて“実行している”という感じが出てくると、若者からの支持も得られるようになるのかもしれません。
(日本テレビ政治部:竹内真デスク、菅原薫解説委員)