【NNNドキュメント】僕たちの婚姻、認めてくれませんか? 出会いは22年前…寄り添う男性カップル “同性婚” 婚姻の自由は…
3月、2人も加わる全国の同性婚訴訟をめぐり、札幌高裁は「同性婚を認めない現状は婚姻の自由を保障する憲法に違反する」という控訴審初の違憲判決を言い渡した。
「“僕らは家族なんですと言える”のは、とてもまぶしいし手が届かない」
熊本市内で一緒に暮らしているゆうたさん(40)と、こうぞうさん(41)。2人の幸せを親も、周りの人も祝福しています。
ゆうたさん
「今生きている、私の父と、こうぞうさんのお母さん。長生きはしてほしいけど…。生きているうちに(ふうふに)なりたいよね」
国は、同性の結婚は認めていません。
「男性同士を当事者とする婚姻届は不適法であるため…不適法、不受理」
2人は婚姻届を提出しましたが市役所には受け取ってもらえず、その日のうちに返ってきました。婚姻は、男女だけのものなのか―――?
2人が出会ったのは22年前。その頃の写真を見て「まだ2人とも10 代でしょ」「そうね」。こうぞうさんの一目ぼれで、2人は付き合うようになりました。
こうぞう
「特別な感じで日々過ごしてはいないけれど、もしゆうたじゃなくて別のゲイの人だったらと思うと、同じような家族ぐるみの生活は送れていない感じがするので」
「自分らしく今が一番いられると」
地方自治体の中には、同性カップルをパートナーとして認める“宣誓制度”を導入しているところもあります。ただ、こうぞうさんは「端的に言うと法的効果は何もありません」と話します。
この制度では婚姻と同じ、社会保障を受けることはできません。
2020年3月、こうぞうさんとゆうたさんは、国を相手に裁判を起こしました。いまの状態は「婚姻の自由」や「法の下(もと)の平等」を保障する憲法に違反していると訴えます。
一方の国側は、「同性どうしの結婚は想定されていなかった」「憲法違反にはあたらない」と主張しています。
2人にとって、大切な居場所があります。熊本市中央区の橙書店。ゆうたさんが学生時代にアルバイトをしていた店です。
橙書店・田尻久子さん
「もう22年たっているけど、まだあまり変わっていないね、世の中はね」
ゆうたさん
「社会の構成員としての自分、家族そういうものになりたい…なのかな」
ゆうたさんの母親も2人と一緒によくこの店に通っていました。
橙書店・田尻久子さん
「ゆうたのお母さんは死んでしまったけど、たぶん生きていたら(2人の結婚を)ものすごく喜んだんですよ…。もうすでに間に合っていないんですよ」
こうぞうさんの母親も、2人の関係を受け入れていました。
こうぞうさんの母
「心配は今のところしていません。ゆうたくんがしっかりしているから大丈夫だと思います」
「この人にはしっかりした人が付かないといけない」
ゆうたさんとは家族ぐるみの付き合いが続いています。
こうぞうさんの母
「2人が幸せなら同性でも何も問題はないと思うんです、国で認めてさえくれれば」
「家族の人も、そういう子どもさんを持っても、何も恥ずかしがることも、卑下することもないから、もっと表に出て応援してもいいなと思うんですけどね」
亡くなったゆうたさんの母親は、ブランコに乗る2人の写真を撮ってくれていました。
こうぞうさん
「今みたいに応援してくれる声や味方でいてくれる声がなかったりする中で、僕らの存在をそれだけ受け入れてくれていたんだなと。こういう写真を通じて思うととてもありがたいしうれしいです」
ゆうたさん
「うちの母さんは『息子がもう1人できた気分』と言ったんだっけね」
こうぞうさん
「僕らはどれだけ大切に思っても、一生この人と添い遂げようと思っても、家族になるという選択肢がない」
2人の幸せを、親も、周りの人も祝福しています。しかし、国は今も認めていません。
3月14日、あるニュース速報が2人のもとに届きました。「同性婚を認めないのは憲法違反」「札幌高裁2審での判断は全国で初めて」
スマホを見つめて「いいね」と声をあげる2人。この日、札幌高裁は、婚姻の自由を保障する憲法は「同性どうしの婚姻も保障している」という初めての判断をしました。「憲法に違反している」という判決を言い渡したのです。
“いままでで一番踏み込んだ判決”というニュースの文字に、「へー、やったね!やったね!」と喜ぶゆうたさん。そして、「当たり前のことなんだけどね」とつぶやきました。
2人はきょうも街を歩きながら祈っている。「僕たちの婚姻、認めてくれませんか?ささやかな願いなんです」