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こども大綱決定 作成過程で意見述べたこども・若者らの反応は?

2023年12月23日 7:30
こども大綱決定 作成過程で意見述べたこども・若者らの反応は?

今後5年間の国のこども政策の基本的な方針を定める「こども大綱」が閣議決定されました。審議会がまとめた内容をもとにしていますが、「校則の見直し」などが追加されました。大綱をつくる過程で、こども家庭庁に意見を述べた中学生らの反応は?

「こども大綱」は、少子化対策、こどもの貧困対策など3つの大綱を一本化し、今後5年程度の国のこども施策の基本的な方針や重要事項を定めるものです。20代の若者らや有識者で構成されたこども家庭庁の審議会の答申などを踏まえてつくられ、22日に閣議決定されました。

■こども・若者は権利の主体 多様な個性を尊重

こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」とは、全てのこどもが「心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せな状態で生活を送ることができる社会」と明記されています。

具体的には、こどもたちが「自らの意見を持つための様々な支援を受けることができ、その意見を表明し、社会に参画できる」「夢や希望を叶えるために、希望と意欲に応じて、のびのびとチャレンジでき、将来を切り開くことができる」社会などと、こどもの視点に立った形でも示されました。

その上で、「こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る」「こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく」といった基本方針が掲げられました。

また、こども施策に関する重要事項には、貧困、障害児支援、虐待防止、自殺対策など、どの年代にも必要な縦断的項目のほか、ライフステージ別の項目もあり、学童期・思春期の居場所づくりなども盛り込まれました。また、こども大綱に基づいて取り組む施策を具体的に示すため、「こどもまんなか実行計画」をつくるとしました。引き続き、審議会で、施策の実施状況などを検証・評価し、毎年6月ごろをめどに、こども政策推進会議でこの計画を改定、関係省庁などの予算の概算要求などに反映し、継続的に施策の点検と見直しを図るとしています。

■校則の見直しも盛り込まれた 意見を述べた中学生は?

学童期・思春期の重要事項には、審議会の答申にはなかった「校則の見直し」という項目が新設されました。校則について、各学校が教育目標を達成するために、状況に応じて、必要かつ合理的な範囲内で定めるもの、とした上で、「見直しを行う場合にはその過程でこどもや保護者等の関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましい」と明記。こども家庭庁の担当者によりますと、政府の閣議決定文書で「校則の見直し」について触れられるのは初めてで、中高生らの関心が高いことや、日中一番長い時間を過ごす場所であることに鑑みたと説明しています。

中学生向けのオンライン公聴会に参加し、校則の見直しについて意見を述べた福島県の西形花璃さん(中1)は、「意見を受け止めてもらえる感じはあったが、期待するものとは異なる、ピントのずれた形で反映されるのではないかという心配もあった」と振り返り、大綱に「校則見直しの場合に、こどもからの意見を聴取した上で定めていくことが望ましい」と明記されたことを歓迎しました。そして「各地の好事例の収集、周知等を行う」と書かれていることに触れ、「自らの通う学校が好事例のモデルとなるよう取り組んでいきたい」と述べました。

■意見は国に届いたか?

大綱をつくる過程で、こども・若者や子育て当事者など延べ2341人と37の団体から、計3815件もの意見が集められました。

オンライン公聴会や対面形式の「いけんひろば」に若者の立場で参加した、東京都の名取彩雲さんは、政府が多様な手段を用いてこれらの意見を集め、短期間に取りまとめ、フィードバックまで行ったことについて、非常に丁寧に感じたと話しています。その上で、こども施策の基本方針について、審議会の中間まとめでは「こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに考えていく」と書かれていましたが、最終的に「ともに進めていく」と改められたことについて、「実行段階まで、こども・若者が参画できる形になった」と評価しました。

一方で名取さんは「全体的な意見の反映度は高くない印象で、より一層こども・若者自身の参画を促すためには“意見を言えば変わるんだ”と感じられる実績の積み上げが必要だ」と強調し、より多くの意見が「こどもまんなか実行計画」で示される具体的な施策に反映されることを期待しました。また、一連の取り組みの認知度の低さと相まって、いけんひろばや公聴会に参加したこどもや若者が、SNSなどで世間から壁をつくられ、特別な存在のように捉えられることを危惧していると述べました。より多くのこども・若者が気軽に参加できるよう、経験や資格を問わず意見できることをさらに周知し、学校に協力を求めることも検討する余地があるのではないかといいます。

さらに厳しい意見を述べるのは、子育て当事者向けのオンライン公聴会に参加した千葉県の瀬良さんです。「ある程度政府で決まったものにお墨付きを与えるためのプロセスであったように、子育て当事者は感じていると思う。本当に意見を聞く気があったのか疑問だ」と述べ、特に「子育て当事者からの年少扶養控除を復活させてほしいという声はかなりあったはずだがゼロ回答だった」との認識を示しました。こども家庭庁の審議会によるフィードバック資料は、意見が反映されなかった理由・考え方を「年少扶養控除は、より支援が必要な人に支援を行うことができる子ども手当に振り替えるという考え方で、廃止されました」と過去の経緯を振り返るにとどまりました。

また、「こどもや保護者への周知の方法も、学校を経由するようなこともなく、とても限定的だと感じた」と指摘し、そうした点も「意見聴取に消極的なのではないかという疑念につながっている」と指摘しました。

■「こどもまんなか社会」を目指して

こども大綱には「こどもまんなか社会」の実現に向け、政府が設定した、おおむね5年での達成を目指す数値目標も盛り込まれました。「こどもまんなか」社会に向かっていると思う人の割合は現在のおよそ16%から70%にすることを目指しています。また、こども政策に関して自身の意見が聞いてもらえていると思うこども・若者の割合、結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会に向かっていると思う人の割合についても、いずれも現在の20%台から、70%まで引き上げることを目指すということです。