初の“カスハラ防止条例”で……「やめてください」言いやすく? AIで“想像もしない怒られ方”体験【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「初のカスハラ防止条例…何が変わる?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●条例で働きやすく?
●広がる対策…効果は?
「客が従業員に対し、行き過ぎた要求をするなどの迷惑行為であるカスタマーハラスメント(カスハラ)をめぐり、新たな動きがありました」
「東京都の『カスタマー・ハラスメント防止条例』案が、4日の都議会本会議で可決されました。全国で初めての成立です。施行は来年4月1日です」
小野解説委員
「客が店員に『態度が気に入らない!』と怒鳴りつけ、土下座や金銭を要求する。こうしたカスハラを食い止めたいですよね」
「東京都の条例では客に対して、『何人もあらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない』と求め、客は『カスハラへの理解と関心を深め、就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める』と定めています」
「こうして条例で定めておけば、店員の方も『それはカスハラです。やめてください』とき然と言いやすくなります。それが狙いです」
鈴江奈々アナウンサー
「条例でしっかりと定められることで言いやすくなることも効果としてありそうですが、施行されると、具体的に何が変わってくるんですかね?」
小野解説委員
「今回の条例の目玉だと思いますが、これまでは店員など就業者が客からカスハラを受けた場合、事業者である店は店員任せで、『他ならぬお客様の言い分だから』と我慢するよう言っていたようなこともあったのではないでしょうか」
「今回の条例では、それはダメだとしています。店は事業者として事実確認をし、客に対してやめるよう申し入れるなど、適切な措置を取るよう求めています。年内に公表される予定のガイドラインでは、場合によっては警察に通報を、と促すことにしています」
忽滑谷こころアナウンサー
「ハラスメント全般がそうですが、この場合も、お客さん側と店員さん側でどこまでがハラスメントなのかという線引き、基準は難しいですよね」
小野解説委員
「難しいですよね。だからこそ、事業者が双方の意見を丁寧に聞き、事実確認をする必要があります」
森圭介アナウンサー
「罰則はあるんですか?」
小野解説委員
「罰則はなく、努力義務です。罰則を設けるとなると、『○○の行為と○○の行為は罰します』と定める必要があります。ただそうすると、誤った理解が広がる恐れがあるということです」
「つまり、『禁止されていない行為ならやってもいいのか』と誤って理解する人が出てくるかもしれない、ということです。カスハラは暴行など、犯罪に該当する行為も多くあります。そういったものは今ある刑法で罰することもできる、という考えです」
森アナウンサー
「ハラスメントというと、カジュアルな響きを持って捉えてしまう方もいるかもしれませんが、暴行・傷害・脅迫・威力業務妨害など、もうそれは犯罪になりますもんね」
小野解説委員
「カスハラに対応する動きも広がっています。学生時代のアルバイトなどで、カスハラを受けたことがある、最近見たことがあるという方はいますか?」
忽滑谷アナウンサー
「客室乗務員として働いている友人が、お客さんから『連絡先教えて』と言われてお断りしたところ、『僕は客だぞ。会社に言うぞ』と高圧的な態度を取られたと聞いたことがあります。ただ実際に自分が受けた経験はないですね」
小野解説委員
「経験がない方は多いですが、カスハラを体験できるAIが開発されました。富士通が、東洋大学社会学部の桐生正幸教授と共同開発したものです」
「4日、every.のスタッフがドラッグストアの店員役で体験してきました。AIがカスハラ客です。店員の言葉によって客の態度を変えていくシステムです」
「買い物をしてポイントが付いていなかったことに激怒している客が『ふざけんじゃねえよ。年寄りだからってバカにしてるのか』と言い、店員役のスタッフは『すみません。ポイントを付けます』と伝えました」
「すると、『そうやって言っとけば済むと思ってるんだろう。追加でポイント付けるとか誠意みせるとかできないのか!』と迫ってきた。こういうやり取りでした」
鈴江アナウンサー
「リアルですね」
刈川くるみキャスター
「お客さんにも落ち着いてほしいですし、ただ勝手に判断するとお店側に迷惑をかけることもあるんじゃないかなと、板挟みでとても難しいですし、とっさの対応は何が正解かちょっと分からないです」
小野解説委員
「every.のスタッフも『とっさのことで何と答えていいか分からなかった』と話していました。自分が想像もしない怒られ方をされることもあります。こうしてAIで体験しておくことで、対応の仕方を学んだり、メンタルを守ったりすることにもつながるかもしれません」
鈴江アナウンサー
「研修の一環でやっておくことで、『悩んだ時にはすぐに店長に相談しなさい』など、そこまでマニュアルとして整理されていくと、より働きやすくなるのかなという気はします」
森アナウンサー
「本当であればこんなAIはない方がいいんですけどね。これが必要になっている今というのが、ちょっと悲しいなと思います」
小野解説委員
「これだけではなく、いろんな取り組みが広がっています。ファミリーマートはポスターを作り、『土下座しろ!』『SNSに公開するぞ』といった行為はカスハラで法律に問われる可能性がある、と忠告しています。10月から全国1万6000以上の店舗全てで掲示します」
森アナウンサー
「それだけ(このようなケースが)あるということですよね」
小野解説委員
「首都高速道路は、お客様センターでの『切電(きりでん)マニュアル』を策定。電話相手が30分以上、同じ内容を繰り返し、威圧的な発言をしているなどの場合には、電話を切りましょうというもの。去年5月に策定し、今年8月までの間に22件切ったそうです」
小野解説委員
「対策をしたら効果が出ている事例もあります。札幌市広報部によると、去年から市役所内に啓発ポスターを掲示する、通話を録音する、世間話など市政に関係ない話題で長時間拘束されたら対応を打ち切るといったカスハラ対策マニュアルを運用しています」
「すると、こんなことが起きたといいます。クレーム電話で『首を洗って待っていろ!』と怒鳴っていた人が市役所に来て、職員は身構えたそうですが、その人はポスターを見たのか、みるみるトーンダウン。最後には『役所の人も大変だよね』と去っていきました」
「週に数回あったカスハラが、今はほとんどなくなったそうです。効果てきめんですね」
鈴江アナウンサー
「カスハラをしようと思ってしている人はいないでしょうから、意識のギャップのようなものがあると思います。こういったものを見ることで気づきになって、抑止効果を生むということは実際あるんですね」
小野解説委員
「自覚なくカスハラをやっている人が、気づくきっかけになればと思います。そして、カスハラ対策にみんなで取り組む機運が高まればと思います」
(2024年10月4日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)