シラミ増加か、薬効かない種類も…対処方は
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。1日は「アタマジラミ」について、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實氏が解説する。
■「アタマジラミ」子どもの間で増加か
人間に寄生するシラミはアタマジラミ、コロモジラミ、ケジラミと3種類いるんですが、今日は子どもに増えているとみられているアタマジラミについてお話したいと思います。
アタマジラミの大きさは3ミリほどで、頭皮から血を吸って、髪の毛に卵を産んで増殖します。血を吸われると、吸われた所がかゆくなり、頭をかきすぎて、炎症を起こすこともあります。
シラミといえば戦時中の話というようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、戦後70年たった今でも、アタマジラミというシラミの一種が子どもたちの間で広まっているというんです。
■相談件数1600件に
こちらはここ10年の東京都内の保健所などに寄せられた、アタマジラミに関する相談件数。13年から増加していて、去年にはおよそ1600件に達しています。実際にシラミの増加に関する調査結果がないので、相談件数を見ていくしかないのですが、なぜ、ここ数年増えているのか、このグラフを見てみると2007年にもピークを迎えている。
この時、対処法などが報道されたり、保育所などでの啓発活動の効果もあって、徐々に減っていった。ただ、減ったことで報道や啓発活動も少なくなり、アタマジラミについて知らない親が増えてきて、どう対処していいかわからず、駆除ができないでいる間に広がってしまっているのではないかという事が考えられます。
■原因は…タオルの共有も?
アタマジラミが広がる原因ですが、まず、考えられるのは、頭と頭の接触です。特に子供は保育所や幼稚園などで昼寝をしているときや遊んでいるときなど、頭と頭が接触することも多いので、集団発生することがあります。
また、髪の毛が触れる、寝具やタオル等を共有することで家族間でもアタマジラミが広がるおそれもあります。
■アタマジラミの寄生、どう発見?
では、子どもの頭にアタマジラミが寄生しているかどうか、どのようにして見分けるか。成虫は動き回り見つけにくいので、髪についている卵を探して下さい。アタマジラミの卵は白く、1ミリ弱で小さいですが、基本的に、耳の後ろやえりあしに多くついています。
ただ、注意したいのは、見た目がよく似ている皮脂などと見間違えないようにすることです。皮脂は指でつまめば簡単に取ることができますが、卵はしっかりと付いていて、指でつまんでも簡単には取れません。
■寄生が分かったら
寄生していることがわかったら、薬局でアタマジラミを駆除する粉状の薬や専用のシャンプーが売っていますので、説明書をよく読んでその薬などを使って駆除するようにしましょう。この薬でたいていのアタマジラミは駆除できますが、中には、薬が効かないアタマジラミもいますので、注意が必要です。
アタマジラミに詳しい国立感染症研究所の冨田さんによりますと、「海外では薬に抵抗性のあるアタマジラミが流行していて、このタイプのシラミが日本にも入ってきているため、国内の一部のシラミも薬が効かなくなっている」ということです。
■薬の効かない場合の対処
もし、薬が効かなかったら、目の細かい、シラミ取り専用のスキグシを使い、成虫や卵を取り除くことが必要です。自治体によっては、保健所などで貸し出しているところもあります。
専用のクシが手に入らない場合は、できるだけ目の細かいクシで成虫を取って、卵が付着している髪の毛は丁寧に1本ずつハサミで切ってあげましょう。
■きょうのポイント
きょうのポイントは「正しい知識を」です。髪を毎日洗うことは、予防のためにも大切です。ただ、子どもが自分で洗っても、洗い方が不十分になりやすいので、月に数回は大人が洗ってあげましょう。
アタマジラミは自分が清潔にしていても周りから移ってくる可能性があります。アタマジラミが見つかっても、恥ずかしいと隠さずに、保育所などに報告しましょう。集団感染を防ぐためにも正しい知識で対処することが大切です。