難民問題で「日本がやるべきこと」とは?
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。8日は、難民問題について「日本がやるべきこと」をテーマに諏訪中央病院の名誉院長・鎌田實さんが解説する。
■映画で考える「難民問題」
今、内戦が続くシリアなどからヨーロッパに難民が押し寄せ、難民問題への関心が高まる中、難民をテーマにした映画を上映する「難民映画祭」が2日に始まりました。オープニング上映に選ばれたのは、グッド・ライ~いちばん優しい嘘~」です。1983年に始まったスーダンの内戦で両親を亡くした、難民の実話を基にした映画です。ケニアの難民キャンプで育った若者たちがアメリカに移住し、環境の違いに戸惑いながらも、成長していく姿が描かれています。
上映後行われたトークショーには、実際にスーダンの難民だった経験を持ち、この映画の主人公の1人を演じた俳優、ゲール・ドゥエイニーさんが登場しました。
ゲールさん「今、難民は危機的状況にあり、それは大きな問題です」
■ゲール氏に聞く「難民問題」
現在は、世界の難民支援を行う国連機関(=UNHCR)の親善大使として活動しているゲールさんに鎌田さんが話を聞きました。
鎌田さん「Q:今、シリアからたくさんの難民がヨーロッパへ向かっています。その状況を見て、どのように考えていますか?」
ゲールさん「難民がさまよっている姿を見ると、とても傷つきます。世界は難民に目を向け、彼らに扉を開けるべきです。私自身も同じような経験をして救われました」
■教育の重要性
ゲールさんは映画と同様、アメリカのスーダン難民受け入れ制度によってスーダンからアメリカへ移住しました。そのアメリカで教育を受け、高校と大学を卒業しました。
ゲールさん「私にとって重要だったのは教育でした。私は長い間、難民だったため、学校に行く機会が限られていましたから。自分のふるさとを失った若者にとって、教育は本当に重要なことだと思う」
■「若者への教育」日本の役割
その「若者への教育」に関して日本は重要な役割を担っているとゲールさんは話します。
ゲールさん「親善大使の任命式が行われた(ケニアの)カクマ難民キャンプを訪れた時、学ぶ意欲にあふれた子供たちと出会いました。そこで、“ジャパン”と言われる場所に連れていってくれました。“ジャパン”というのは、『ピーススクール』という名前の学校でした」
日本の支援によって建てられた学校のことを子供たちは親しみをこめて“ジャパン”と呼んでいたと言います。ゲールさんはそんな日本の支援に感謝しているという一方で、来日して気づいたことがあると教えてくれました。
■課題も…難民を知らない若者
ゲールさん「昨日、日本の若者と話して気づいたのですが、難民についてほとんど知らないんです。だから助けようとも思わない。他の地域でも同じような状況だと思う。だから私は、まず人に知ってもらうことから始めるべきだと思います」
鎌田さん「ちょっとさびしい話ですよね。たしかに、これだけ難民について報道されているにもかかわらず、知らない若者は多いと思いますし、どこか、日本とは遠い話だと思っている人が多いと思います」
■きょうのポイント
きょうのポイントは「他人事ではない」です。
蒲田さん「僕は、イラクのクルド人自治区で今問題になっているシリア難民などに対して人道支援を行っています。難民問題は決して『遠い国の話』でも『他人事』でもありません。できるだけ具体的に、日本は『人道支援』という形で、形の見える支援をしてあげることが、世界に尊敬される日本であるためにはとても大事ではないでしょうか。難民について、私たちに何ができるのか、考える時に来ていると思います」
今回、紹介した難民映画祭は、11月1日までの間、東京の他、札幌や仙台でも開かれる予定です。