【避難生活】肺炎と糖尿病に注意を
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。19日のテーマは「避難生活での注意点」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。
(1)肺炎
まず、肺炎については、熊本市にある熊本赤十字病院で、先月17日から今月14日の肺炎の入院患者数を去年の同じ時期と比べてみると、67人から88人と、31%以上増えていることがわかる。
■口の中の細菌が原因に
熊本赤十字病院によると「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」が目立つという。誤嚥というのは、食べ物や唾液などが本来入るはずの食道ではなく、誤って気管に入ること。この時、唾液などと一緒に口の中の細菌が肺に入り、肺炎を引き起こすことを「誤嚥性肺炎」という。
■歯磨き、おしゃべりなどで予防を
避難生活では、疲れで免疫力が低下している上に、歯磨きの回数などが減り、口の中の細菌が繁殖しやすくなるため「誤嚥性肺炎」が増えるとみられている。予防には、歯を磨くことが大事だ。避難所などで歯磨きができない場合は、食後にうがいをする、あるいは、ぬれたハンカチなどで歯の汚れを取るだけでも効果が期待できる。また、誤嚥を防ぐためには、唇や舌、頬などをよく動かすことも大切。周りの人とおしゃべりをしたり、歌を歌ったりするだけでも誤嚥予防につながるといわれている。
(2)糖尿病
長期的に見て注意が必要なのは「糖尿病」だ。東日本大震災の被災地・福島県南相馬市の40歳から74歳の避難者のうち、糖尿病患者の割合を表したデータによると、震災前(3年間の平均)は、7.7%だったが、震災後の2014年には、13.6%まで増加している。今後、熊本の被災地でも糖尿病が増える可能性がある。
データの分析をおこなった、相馬中央病院の坪倉医師によると、「避難による、食生活や環境の変化によって糖尿病を発症するリスクが上がっているのではないか」と話す。具体的には、避難生活での何が原因になっているのだろうか。
■炭水化物に偏った食事に注意
まず、1つめの原因は「偏った食生活」。避難所での食事は、ごはんやパンなど、炭水化物が多くなりがちだ。可能な限り、炭水化物を減らして肉や魚、野菜をとるなど、バランスの良い食生活が大切だが、それが難しい場合は、野菜ジュースなどを積極的に飲むのもよい。
■避難所でも工夫して体を動かす
そして、2つめは「運動不足」だ。避難生活では「運動なんて…」と思いがちかもしれないが、東日本大震災の時も運動不足解消のため、避難所でラジオ体操などを行っていた。動ける人は、1日20分以上の散歩することで心も元気になっていく。なおかつ、いま問題になっている「エコノミークラス症候群」の対策にもつながっていく。
■「コミュニティー作り」の重要性
きょうのポイントは「コミュニティー作り」。一人でラジオ体操をやるのはなかなか続かない。だからリーダーがみんなに「体操をしよう」と声をかけることや、みんなでおしゃべりができる環境も重要になる。
そして、日本中の人々が「熊本を応援してあげる」こと。今後、熊本で糖尿病が増えるかもしれない。だから、できるだけバランスの良い食事をとれるような配慮をしてあげることも大切だ。