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世界最低レベル“受動喫煙”対策どう進める

2016年8月29日 19:46
世界最低レベル“受動喫煙”対策どう進める

 4年後は東京での開催となるオリンピック。実は、オリンピック開催国として、禁煙をどう進めるかが、議論になっている。WHOが、日本の受動喫煙に関する取り組みは世界で最低レベルだと指摘する中、「たばこのないオリンピック」を実現するための課題とは?


■リオ…屋根があるだけで法律上は禁煙

 リオデジャネイロの会場では、禁煙マークがはられていた。実はリオでは、すべての屋内施設でたばこを吸うことができないと法律で決まっており、「喫煙スペース」もない。屋根があるだけで“屋内”とみなされるので、開放感のあるオープンカフェのような飲食店でも禁煙になる。従業員はどう思っているのだろうか。

 「たばこを吸わない人は、喫煙者の煙を吸いたくない。モラルを持って、マナーを守るべき。だからこの法律には賛同します」

屋根があるだけで、たばこが吸えないというのは、吸う人にとって厳しい。しかし、こうした禁煙の動きは世界で、特にオリンピック開催国では進んでいる。


■北京でも…日本以外では罰則付きの規制

 中国・北京では、2022年に冬季オリンピックが開かれることになっているが、そこに向けて禁煙化が進められている。例えば、屋根のある公共の場所では原則、喫煙ができない。違反した喫煙者には最高で約3000円の罰金、禁煙を徹底していない施設には、最高で約15万円の罰金が科せられる。

 北京のほかにも、バンクーバー、ロンドン、ソチ、そして今回のリオデジャネイロ、2年後の韓国・平昌と、それぞれ開催地で屋内の喫煙に関する規制があり、罰則もある。


■受動喫煙で年間60万人が死亡

 「禁煙化」がオリンピック開催地で進められているのはどうしてなのだろうか。実は、WHO(=世界保健機関)が、他人のたばこの煙を吸う受動喫煙によって、年間で推計60万人が死亡していると訴え、2010年から世界的なイベントでの「禁煙化」を求め始めている。

 これにIOC(=国際オリンピック委員会)も賛同し、共同で「たばこのないオリンピック」を推進しているという背景がある。


■罰則付きの規制がない日本

 ただ、これまでの開催地と違って、東京では、罰則付きの規制は、今のところない。規制がすすんでいない理由には、たばこ農家の組合など、たばこ業界の反対もあるが、まず、第一にたばこを吸える場所と吸えない場所を区切る「分煙」にするのか、それとも屋内をすべて「禁煙」にするのか、といった問題もがある。

 東京の飲食店などでは「分煙」スタイルが浸透しているが、日本フードサービス協会は、お客さんが自由に選択すべきだとしていて、「分煙」を支持している。たばこを吸うお客さんが離れてしまうことへの抵抗感もあるのかもしれない。一方、東京都の医師会は「分煙」では、煙を完全に防げないとして飲食店での全面禁煙を求めている。


■屋内の全面禁煙に踏み切れない理由

 海外と東京では“屋外”での喫煙事情が異なっている。海外では、屋内は全面禁煙とされていても、路上など屋外では灰皿や「喫煙スペース」が多く整備され、たばこを吸いやすいという。これに対し、東京では路上などでは、ポイ捨てや歩きたばこを防ごうと路上喫煙を条例で禁止する自治体が多くある。

 つまり、海外にならって屋内を全面禁煙とすると、外でも中でも吸えないということになる。こうした現状から、屋内の「全面禁煙」に簡単には踏み切れないという。


■世界基準を目指す

 そうはいっても、オリンピック開催にあたっては、WHOやIOCが「禁煙化」を求めていることから、きちんと考えていかなければならない。

 ポイントになるのは「世界基準」。たばこを吸う人の権利は守られるべきだが、WHOは、日本の受動喫煙に関する取り組みは世界で最低レベルだと指摘している。世界中の観光客をおもてなしするためにも、なんとか環境を整えて2020年を迎えたいものだ。