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なぜ広がらない?「特別養子縁組」のあり方

2016年9月30日 17:40
なぜ広がらない?「特別養子縁組」のあり方

 中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。30日のテーマは「特別養子縁組のあり方」。

 「約4万6000人」―これは、実親からの虐待や経済的な理由で親元を離れ、児童養護施設などで暮らす子どもの数だ。こうした子どもたちのために、ある検討会が開かれた。

 今年5月、施設で暮らす子どもたちがより家庭と同じ環境で育てられるべきとして、児童福祉法の一部が改正されたことを受け、厚生労働省で今週、血縁関係のない夫婦と親子関係を結ぶ「特別養子縁組制度」の促進などが議論された。施設で暮らす子どもたちにとってよりよい受け皿となることが期待されている。


――そもそも、特別養子縁組はどんな制度なのか。

 養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がある。普通養子縁組の場合、対象となる子どもの年齢制限はない。相続権などは残るので完全に親子関係がなくなるわけではない。戸籍上では「養子」「養女」と記載される。

 一方、特別養子縁組の場合、対象は原則6歳未満の子どもと制限されている。実親との関係は完全に断ちきり、養親は法的に実の親子と同じ関係になる。戸籍には「長男」「長女」などと書かれ、法的な権利は実の子どもと変わらない。

 普通養子縁組の場合は、養親の側からも離縁を申し出ることができるが、特別養子縁組の場合、養親からの離縁は認められない。

 特別養子縁組を申し込むには、まず都道府県にある児童相談所や民間のマッチング事業者に相談する。最終的には裁判所が審判する。

 通常は、施設で暮らす子どもを一定期間養育する「里親」となった後で、特別養子縁組をする。しかし、愛知県では新生児を生まれた直後から特別養子縁組を希望する里親に引き渡す「赤ちゃん縁組」という制度を活用している。

 望まない妊娠をした女性などが出産前から養子として出す考えがあり、他に方法がない場合、赤ちゃんは退院と同時に里親の元に引き取られるというもので、「愛知方式」と呼ばれている。


――特別養子縁組は、年間で何件成立しているのか。

 ここ数年、不妊などの理由で特別養子縁組を希望する人は増えてはいるが、2015年度に成立した特別養子縁組の数は544件にすぎない。


――希望者が増えているのに、なぜあまり広まらないのか。

 最大の理由は実親の同意が得られないことだ。特別養子縁組は実親と子どもとの縁を完全に断ち切るので、原則、実親の同意が必要となる。

 しかし、自分で育てることはできないにせよ、親子の縁は切りたくないと拒否するケースや、そもそも連絡が取れないケースもあって、成立に至らないといったことが多くある。


――解決策はあるのか。

 ポイントは「裁判所の役割」。実親の中には、実の子どもと縁を切ることを拒みながら、育児放棄してしまうといったケースも少なくない。このような場合、児童相談所が親を指導することになるが、それではなかなか解決しない。

 そこで特別養子縁組を推進したいと考えるならば、裁判所がどう関わっていくべきなのかということが問題となる。原則は「実親の同意」が必要だが、例外的に裁判所の判断で特別養子縁組を認める制度が存在している。その要件をどこまで広げていくのかということが課題になってくるだろう。