「生理が止まって一人前」......無月経6年の元アスリート 今では「私、月経来た方が強くなれたよ」
約6年の無月経を経験した元スキー選手がいます。中学時代を中心に、激しいトレーニングと食事制限で自分を追い込みました。無月経が“自信”にもなっていましたが、体には異変が。生理が来るようになると不調が消え、「もっとスキーが好きになった」と言います。
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■日本トップクラスの選手として活躍
岩手・西和賀町の診療所で受付事務をする女性。「検査データを入力しています。慣れたっちゃ慣れたかな」と笑顔を見せました。
この女性はクロスカントリースキーの元全日本チャンピオン、田中ゆかりさん(27)。中学時代の全国大会やインターハイ、インカレなど各世代で優勝しました。日本トップクラスの選手として活躍し、2月の国体を最後に現役を引退しました。
■食事制限で...中学生で体重10キロ減
自宅で、自分の生理周期を記録するアプリを見せてくれました。スマートフォンの画面にカレンダーが表示され、生理が来た日が紫色で示されています。
田中さん
「今は生理が来ることが普通だし、当時は生理が来ないことが普通だった」
中学1年生ごろから約6年間、生理がない「無月経」になりました。
中学時代は、人生で一番トレーニングをしたといいます。朝起きてからの有酸素運動、部活動後の階段ダッシュ、夜9時からはランニング。食事も徹底して糖質を控えたことで、体重は中学1年の48キロから2年の39キロへ、10キロほど減少しました。
田中さんは、「(生理が)来ない方が強いって思ってました。痩せて体を絞っていた方が練習してるってことになる」と振り返ります。当時の常識は、“生理が止まって一人前”。無月経が、逆に自信を与えてくれていたといいます。
■専門医「相談しやすい環境づくりを」
田中さん
「中学校2年生の駅伝大会で失禁してしまっていたのは、もうおかしくなっていった前兆でした。高校は疲労骨折とかありましたね。運動と食事のバランスが全然取れてないことだと思います」
専門医は、無月経はアスリートだけの問題ではないと指摘します。
東京大学医学部附属病院・女性アスリート外来 能瀬さやか医師
「ダイエットで無月経になってしまって、という女性も同じように、骨粗しょう症になるリスクが高い。相談しやすい環境を周りもつくっていくということも重要ですし、異常に気付いたら周囲の大人に自分からきちんと伝えるという選手教育も重要かなと思います」
■生理で「ケガや病気が一気に解消」
田中さんが薬を服用しなくても自然に生理が来るようになったのは、大学生の時でした。コーチからの指示でしっかり食事をとるようになってからだといいます。
田中さん
「体を壊してまで勝つ意味は人生にはない。勝ちたいと思っていて無月経に悩んでいる子がいたら『私、月経来た方が強くなれたよ』って言います。それまで悩んでいたケガや病気とかが一気に解消されたし、『もっとスキーが好きになった』と言えるかもしれません」
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■生理は自分の体のバロメーター
池田エライザさん(女優・『news zero』金曜パートナー)
「私も中学の頃は月経についてあまり知識がありませんでした。もし自分が中学生だったら、(生理を)疎ましく思っていたので、『これで悩まなくて済むんだ』と思ったかもしれません」
岩本アナウンサー
「今は生理に対して意識は変わりましたか?」
エライザさん
「今は生理が、自分の体のバロメーターだと思っています」
「例えば『今月どうしてこんなにきついのかな』『あ、そうか、ちょっと冷えるような生活を送っていたかもしれない』『そしたら、来月からはこうしてみよう』と、自分の生活の反省会みたいな時期だなとも思っています」
岩本アナウンサー
「すごく素敵な考え方です」
エライザさん
「大事ですよね。周りの人と共有してみたりとか、ちょっと勇気がいるけど、『これって変かな? これって普通かな?』と話し合うのは、男女関係なく、年齢問わずできたらいいなと思います」
(3月3日『news zero』より)