【セックスにおけるコミュニケーション調査】“セックスしたくなくても断らない”4割
■性的同意の重要性
性的な行為をする前に、その行為をしていいかお互いに確認し、同意することを「性的同意」といいます。本調査を監修した産婦人科専門医の稲葉可奈子氏は、「セックスというのは、どちらかがしたくないと思っていれば、たとえ特定のパートナー同士であっても相手を傷つける行為になってしまいます」と、同意をとらずにセックスすることの危険性を指摘しています。さらに、極端な場合にはデートレイプや望まない妊娠にも繋がりかねないとして、性的同意は「どういうケースのセックスであったとしても、お互いの心と体を尊重するという意味でとても大事なことです」と強調しています。
「あなたがセックスに誘うとき、パートナーに対し、言葉やお互いに意味を共有している合図で意思確認をしていますか」と質問したところ、「毎回確認している」と答えた人が38.41%と最も多く、「意識していないのでわからない」と答えた人が23.13%と続きました。最も少なかったのは、「確認することはない」で8.53%でした。
年代別で比較すると、年代が低いほど「毎回確認している」割合が高く、「意識していないのでわからない」「確認することはない」の割合が低いことがわかりました。
また、男女別で比較すると、男性の方が「毎回確認している」「ほぼ毎回確認している」と答えた人が多く、女性の方が「確認することはない」「意識していないのでわからない」と答えた人が多くなっています。なお「意思確認をされていますか」という質問に対しても、男性に比べて女性の方が「意識していないのでわからない」と答えた人が多い結果となりました。(男性18.89%、女性27.05%)
Q1で「毎回確認している」以外の回答だった人を対象に「確認しないとき、それはなぜですか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、
1位「雰囲気でわかるから」57.79 %
2位「ハグやキスなどのスキンシップを通じて確認するから」30.17%
3位「慣れ親しんだ関係なので確認しなくてもわかるから」25.89%
と、なりました。
Q1で「確認することはない」以外の回答だった人を対象に「どのように確認していますか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、
1位「『いい?』『する?』などの言葉で確認する」48.62%
2位「ハグやキスなどのスキンシップを行い、拒絶されないか確認する」39.47%
3位「好意を伝えて、拒絶されないかを確認する」24.74%
と、なりました。
Q1で「確認することはない」以外の回答だった人を対象に「どのような反応なら、同意が得られたと考えますか」と尋ねたところ、
1位「『いいよ』『したい』などの言葉を返された」52.79%
2位「態度や表情から好意を感じた」39.17%
3位「ハグやキスなどのスキンシップを拒絶されなかった」35.3%
と、なりました。
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この結果について稲葉氏は、「スキンシップ、ジェスチャー、相手が性的に興奮しているかどうかで確認するというのは、主観になってしまう」と指摘し、「誘っている側は同意をとったつもりであっても、同意をとれていない可能性もあるので、そこは気をつけた方が良い」と警鐘を鳴らしました。その上で、推奨される方法として「言葉」や「お互いに意味を共有している合図」をあげ「それが本意であるかは置いておいて、直接確認できる方法だと思います」と述べました。
「あなたがセックスに誘われるとき、パートナーから言葉やお互いに意味を共有している合図で意思確認をされていますか」という質問に対し、「毎回確認されている」と答えた人が32.85%と最も多く、「意識していないのでわからない」が23.02%と続きました。最も少なかったのは「確認されることはない」で11.29%でした。
「セックスに誘われて同意したいとき、あなたはどのように伝えていますか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、
1位「『いいよ』『したい』などの言葉で伝える」47.73%
2位「ハグやキスなどのスキンシップで伝える」34.36%
3位「態度や表情で好意を伝える」33.86%
と、なりました。
Q4と比較して、「セックスに誘う人が意思確認をする方法」と「セックスに誘われた人が意思表示をする方法」はおおむね一致しています。
「セックスに誘われて断りたいとき、あなたはどのように伝えていますか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、
1位「『疲れているから』など理由を説明する」38.29%
2位「『また今度にしよう』など延期する」36.55%
3位「『ごめん』などと謝る」23.86%
と、言葉で伝える選択肢が並びました。
「セックスをするにあたって意思確認をされたかされていないかにかかわらず、あなたは、セックスをしたくないときは断りますか」という質問に対しては、
1位「ほとんど毎回断らない」25.32%
2位「ほぼ毎回断る」23.3%
3位「意識していないのでわからない」22.57%
4位「毎回断る」16.34%
5位「断らない」12.46%
となり、およそ4割の人がセックスをしたくなくても、断らない場合があることがわかりました。
Q8で「毎回断る」以外の答えを選択した人を対象に、「断らないことがあるのはなぜですか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、
1位「パートナーの要望に応えたいから」38.52%
2位「誘われたことが嬉しいから」30.47%
3位「断るとパートナーの機嫌を損ねそうだから」25.1%
と、なりました。
年代別で比較すると、10代では「断るとパートナーのことが嫌いだと勘違いされそうだから」「断るとパートナーの機嫌を損ねそうだから」と答えた割合が他の年代より高く、パートナーの気持ちを気にして断れずにいることがわかりました。
「セックスに誘われて断った際、パートナーから嫌な態度をとられたことはありますか」と選択式(複数選択可)で尋ねたところ、「嫌な態度をとられたことはない」と答えた人が61.37%と6割を超えました。嫌な態度をとられたことがある人の理由としては、「落ち込まれた」が18.08%で最も多く、「不機嫌な態度をとられた」が15.33%と続きました。
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稲葉氏は、「4割近くの方が断りたいけれども断れていない。その理由が“相手に嫌われてしまうかもしれない”等の理由だというところが、セックスをするときに同意をとること(=性的同意)が、まだ社会のコンセンサスとなっていないことのあらわれかと思います」と話しています。その上で「断る=嫌いではないということが社会の常識になることが重要」だと指摘しました。
「あなたは、セックスをする際、言葉による同意の確認は必要だと思いますか」という質問に対し、「毎回必要だと思う」が34.98%、「必要だと思うが毎回ではない」が36.55%となり、言葉による同意の確認が必要だと思っている人が7割を超えました。
「セックスによって、パートナーとの人間関係が深まったと感じたことはありますか」と尋ねたところ、「セックスに誘うときに言葉やお互いに意味を共有している合図で意思確認をしている」頻度が高い人ほど、人間関係が深まった経験が「ある」割合が高いことがわかりました。
■調査方法
本調査は、2023年2月28日(火)~3月2日(木)に、大手リサーチ会社に登録したモニターを対象に行い、1,781人から有効回答を得ました。セックスの経験があると答えた回答のみを有効回答とし、世代間の意識の違いがわかりやすいよう、10代(16歳以上)、20代、30代、40代、50代以上でほぼ同数の回答が集まるよう設定して、男女比も国勢調査に近づけました。
監修:産婦人科専門医 稲葉可奈子氏
協力:JX通信社