セックスしたいか「毎回確認」4割も、潜む「確認した“つもり”」のリスク【セックスとコミュニケーション調査】
性的な行為をする前に、その行為をしていいかお互いに確認し、同意することを「性的同意」といいます。
今回の調査で、「あなたがセックスに誘うとき、パートナーに対し、言葉やお互いに意味を共有している合図で意思確認をしていますか」と尋ねたところ、「毎回確認している」と答えた人は38.41%でした。
この結果について、稲葉氏は、「同意をとっている人が予想よりも多かったので、それはすごくいいことと純粋に感じました」とコメントしました。
■結婚相手や交際相手でもセックスの同意は「毎回」とって
しかし、さらに詳しく結果を見てみると、不安な点も見つかったといいます。
たとえば、同じ質問の答えを年代別で見てみると…
年代が上がるほど、「毎回確認している」割合が低くなっています。
稲葉氏:
セックスというのは、どちらかがしたくないと思っていればたとえ特定のパートナー同士であっても相手を傷つける行為になってしまいます。
確認の方法についても、気になる結果がありました。
「確認するとき、どのように確認していますか」と尋ねたところ、言葉に次いで「スキンシップを拒絶されないか確認する」「好意を拒絶されないか確認する」といった方法が選ばれています。
稲葉氏:
スキンシップで確認するという部分や、ジェスチャーであったり、相手が性的に興奮しているかどうかというのは主観になってしまいますので、ここはもしかすると実際には同意がとれていない可能性もあります。
つまり、「毎回確認している」と答えたおよそ4割の人の中には、「確認している“つもり”」になっていて、実際には同意がとれていない場合が含まれていているため、性的同意が形成できているケースは、実はもっと少ない可能性があるというのです。
セックスに「誘われたとき、確認をされているか」を尋ねた結果を見てみると、「毎回確認されている」と答えた人は32.85%となり、「誘うとき、毎回確認している」と答えた人よりもやや少なくなっています。「確認している“つもり”」が、このギャップとなって表れているのかもしれません。
稲葉氏:
(同意の確認として)まず間違いないのは言葉とか、お互いで意味の決まった合図。それが本意であるかは置いておいて、直接確認できる方法だと思います。
調査では、セックスに誘われたけれどしたくないという場合に、およそ4割が「断らない」「ほとんど断らない」と答えています。そこで、断らないことがある人に対し理由をたずねてみました。
稲葉氏:
相手に嫌われてしまうかもしれないなどの理由というところが、「セックスをするときに同意をとる」ということに対して、まだ社会のコンセンサス(合意形成)がとれていないことの現れかと思います。
さらに、「断るとパートナーのことが嫌いだと勘違いされそうだから」「断るとパートナーの機嫌を損ねそうだから」と答えた人は、年代別で見ると特に10代で多い傾向があります。
この結果を受けて、稲葉氏は、性と人権や文化などを包括的に教える「包括的性教育」の必要性を感じたといいます。
稲葉氏:
(10代が多いのは)まだパートナーが固定していなかったりとか、経験が浅かったりとかいうところが結果に表れていると思うんですけど、「セックスを断る=嫌い」というわけではないというところが、包括的性教育を通して社会の常識になることが重要かと思います。
■セックスをしたいか・したくないかを自分で判断して伝えられるのは何歳から?
日本の義務教育では包括的性教育が行われていません。そのため、セックスをするか・しないかの判断や意思表示が難しい可能性があると稲葉さんは考えています。
稲葉氏:
まだ日本では包括的性教育が行われていないにもかかわらず、自分がセックスをすることに対して自分で判断して同意をできると法的にみなされているのが13歳というのはおかしな話。危険を知らないのに自分の身を守る事っていうのはできないので、今の法律は子どもたちを守れていない。ともすれば危険にさらしてしまっている状況ですので、包括的性教育を受けて初めて性交同意をすることができるとみなすべきですし、法的にもそうなるべきと思います。
法制審議会の部会は先月、刑法の「性犯罪」に関する規定について、法改正に向けた要綱案を取りまとめました。要綱案では、セックスをするか・しないかを自分で判断できる年齢とされる「性交同意年齢」について、年齢差が5歳以上ある場合に限り、これまでの13歳から16歳に引き上げられることとなっています。この要綱案をもとに、政府は改正案を今国会に提出する見通しです。
■調査方法
本調査は、2023年2月28日(火)~3月2日(木)に、大手リサーチ会社に登録したモニターを対象に行い、1,781人から有効回答を得ました。セックスの経験があると答えた回答のみを有効回答とし、世代間の意識の違いがわかりやすいよう、10代(16歳以上)、20代、30代、40代、50代以上でほぼ同数の回答が集まるよう設定して、男女比も国勢調査に近づけました。
監修:産婦人科専門医 稲葉可奈子氏
協力:JX通信社