海外での心臓移植…円安で“5億円超に” 寄付募る家族「本当に申し訳ないと思いつつ…」
日本では今、多くの子どもが心臓移植を待っています。ドナーが多い海外での移植を決める家族も多いです。ただでさえ高額な費用が必要となる中、追い打ちをかけているのが円安などの影響です。こうした中、海外での移植を目指す家族を取材しました。
■「家に帰りたい」ダンスが得意な娘
15日、「news zero」が話を聞いたのは、現在、入院中の小学5年生で10歳の五十嵐好乃(この)さんです。病室からビデオ電話で、話してくれました。
――今、体調はどうですか?
五十嵐好乃さん(10)
「元気です」
――今、したいことを教えてくれますか?
五十嵐好乃さん(10)
「ん~……学校に行きたいのと、家に帰りたいのと、大好きな納豆ご飯が食べたい」
ダンスが得意だった好乃さんは、2年前、突如、風邪のような症状が治りにくくなり、去年、心臓から全身にうまく血液を送ることができない「拡張型心筋症」と診断されました。
五十嵐好乃さんの父・好秀さん(46)
「えっ? うちの子が心不全? びっくりしたのが本音ですかね」
補助人工心臓につながれた好乃さんの願いは「家に帰りたい」。その願いをかなえるには移植しかないと、家族が決断したのは海外での手術です。
五十嵐好乃さんの父・好秀さん(46)
「“より確率の高い海外に希望を持ちたい”という答えを、家族3人で話をして出した」
国内で移植手術を受けることも可能ですが、補助人工心臓をもう1つ増やす手術を受けなければならない可能性も出てきたため、待機の期間が日本より短い海外での移植を決めました。
しかし、ただでさえ保険が適用されず高額な費用が必要になります。そこに追い打ちをかけたのが「円安」です。
五十嵐好乃さんの父・好秀さん(46)
「為替レートの影響もあり、自分で電卓をはじいた時に、ためいきが出るような金額で…」
受け入れ先のアメリカの病院も決まり、見積もった費用は、医療用ジェット機のチャーターなどあわせて約5億4000万円。円安の影響で、去年と比べて1.5倍に膨らんだといいます。
――テレビを見ている人に伝えたいことはありますか?
五十嵐好乃さん(10)
「頑張っているので、助けてほしいです」
そして自ら書いた手紙を、涙ながらに読み上げてくれました。
五十嵐好乃さん(10)
「家に帰りたいです。ママが作ったごはんが食べたいです。パパのごはんをママと一緒に作りたいです」
父・好秀さんは「前を向いている娘。その希望もなんとか届けてあげたい。皆さんには本当に申し訳ないと思いつつも、どうか、皆さんにご支援いただいて、(好乃さんに)家に帰ってこられる日を与えてあげたいなと思っています」と語りました。
半年以内の目標額達成に向けて、寄付を呼びかけています。
【このちゃんを救う会 電話044-223-6412】
■補助人工心臓で命をつなぐ1歳の娘
1歳の佐藤葵ちゃんも、海外での心臓移植を目指している1人です。
葵ちゃんは生後、「先天性心疾患」と診断され、これまでに4回の手術を乗り越えましたが、心臓のポンプ機能が低下し、必要な血液を送り出せない重度の心不全の状態になっています。
佐藤葵ちゃんの母・清香さん(38)
「抱き上げると手の中にすっぽりおさまる体に、補助人工心臓とペースメーカーをつけて……。ほとんど病院から出たことがなくても、毎日新しいことを学んで、頑張って一日一日生きてます」
補助人工心臓で命をつないでいるものの、脳梗塞や脳出血といった命に関わる合併症のリスクと常に隣り合わせです。1日も早く移植を受けさせるため、両親はドナーが多い海外での手術を決断しました。
ただ、ここでも立ちはだかるのが円安です。
佐藤葵ちゃんの父・昭一郎さん(41)
「円安のせいもあり、今回5.3億円という、とんでもない金額が必要になってしまっています」
去年であれば、3億5000万ほどとされた海外での手術費用は、円安やウクライナ侵攻などの影響で約1.5倍に高騰。必要な額は、医療費や渡航費などあわせて5億3000万円に上る見込みです。
佐藤葵ちゃんの母・清香さん(38)
「世の中におすがりすることについて、わがままですし、“こんなこと言い出していいのかな”って葛藤があったし、いろいろ考えました」
「でも、娘を助けたい。本当に勝手なお願いですが、どうか葵を助けていただけないでしょうか。皆さまのお力で、どうかお願いします」
「あおちゃんを救う会」のYouTubeに投稿された動画では、4歳の葵ちゃんの姉が「おとうさんとおかあさん大好きでしょ? おねえちゃんも大好きだし、ずっと見てるからね」と呼びかけていました。
「あおちゃんを救う会」は14日から募金を始め、3か月を目標に、心臓移植手術に必要な費用を集めたいとしています。
【あおちゃんを救う会 03-6555-4571】
(11月15日放送『news zero』より)