“抜け出せない路上生活”どう支援するか?
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「ホームレス、抜け出せない路上生活」。認定NPO法人Homedoor理事長・川口加奈さんに聞いた。
厚労省がホームレス約1400人に行った生活実態調査によると、2016年10月の時点で、「5年以上の路上生活を続けている」人は55.1%だった。仕事をしている人も半数以上(55.6%)いたが、その平均月収は、約3万8000円だった。
今後の生活については、「今のままでいい」が35.3%と最も多く、次いで「アパートに住み、就職して自活したい」、「アパートで福祉支援を受けながら軽い仕事を見つけたい」となっている。
――フリップをお願いします。
『(今のままでいい)もうあきらめている』と書きました。やっぱり高齢になってしまい、今さら路上から脱出して、何か家を借りてもどうなるものかわからないというよりは、今のままで諦めて、このまま路上生活を続けるしかない、そう思っている方が多いのかなと感じています。
――そのマインドを前向きにさせるというのは難しいことですよね。
そうですね。私たちも夜回り活動といって、路上生活者の人たちにお弁当を持って行って、話を聞きながら、どういう支援ができるかということをサポートしていくことがあるんですが、そういう関係性を継続していって、その中で何か困ったことがあれば頼ってもらえる、そういう間柄をつくっていくことが大切かなと感じています。
そういう中で、夜回りで訪れていた方が、5年たって初めてうちの事務所にやってこられるということもあります。最近あったことでは、朝起きたら体調が優れなかったから、いつも弁当を持ってきてくれる私のとこに相談に来たと。このように何かをきっかけに相談したいという方もいらっしゃると思うので、もう一度やり直せる機会を提供し続けたいと感じています。
――相談に来やすい雰囲気もつくっていると聞きました。
例えば、うちに来てもらったら、無料でシャワーや洗濯ができたり、最近は、カットモデルという“理容師の卵”の方に協力してもらって、ホームレスの方々の髪を切っていただいて、さらにモデル料ももらえるという結構人気のサービスもあります。
なので、相談にも行きづらいけれど、カットモデルだったら行ってみようかなとか、そういう形で関われるきっかけをたくさん用意するというのがひとつのポイントになるのかなと感じています。
■川口加奈さんプロフィル
認定NPO法人Homedoor理事長。14歳の時に大阪・西成区のホームレスの姿を目の当たりにし、炊き出しなどの活動を開始。大学入学後、19歳で「Homedoor」を設立した。シェアサイクルで使われる自転車をホームレスの人が修理して、就労支援をする事業などを通じて600人以上のホームレスを支援。ホームレス状態を生み出さない社会を作ることを目指している。
【the SOCIAL opinionsより】