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転籍難しく失踪者も… 外国人“技能実習制度”見直しへ 一定の条件で“転籍”可能に

2023年10月18日 19:51
転籍難しく失踪者も… 外国人“技能実習制度”見直しへ 一定の条件で“転籍”可能に

人手不足が問題となっている中、私たちの生活を支える様々な分野で、事実上、貴重な人材となっているのが外国人の技能実習生たちです。外国人が日本で働きながら技術を学ぶことができる「技能実習制度」ですが、政府は18日、技能実習制度の見直しに向けた案を発表しました。現行の「技能実習制度」にどんな問題があるのかを取材しました。

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ベトナム人のアインさんは去年、日本で仕事の技術を学ぶ「技能実習生」として来日しました。

発展途上国の人材を育成し、国際貢献をすることが目的の技能実習制度。農業や漁業、食品加工などさまざまな分野があり、約35万人が働きながら日本で技術を学んでいます。(今年6月末時点)

しかし、制度にはさまざまな問題がありました。

アインさんは、今年7月まで下着の縫製工場で働いていましたが、残業代の未払いが続いたといいます。

技能実習生として来日したアインさん
「あるときは朝6時から夜10時まで働きました」

アインさんが見せてくれたのは、残業のあとの午後10時半ごろ、残業していたことを証明するために撮影したという動画です。

アインさん
「つらかったです。なぜ自分だけどんどん仕事が割り当てられるのか」

同僚との関係もうまくいかなくなり、アインさんは退職しました。それでも「日本で働きたい」と、次の職場を探しましたが…

アインさん
「下着の縫製の仕事が日本で少ないので、なかなか他のところを探せませんでした」

職場を変更する「転籍」は、現在の制度では「同じ職種以外への転籍はできない」などの制限が多く、結局、新しい職場は見つかりませんでした。

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この転籍の難しさが大きな問題となっていて、NPO団体のもとには技能実習生からの相談があとを絶ちません。

NPO法人日越ともいき支援会 吉水慈豊代表理事
「1日に10件から20件は相談がきています」

パワハラや暴力など、職場で問題があった時に転籍ができず、職場を離れる人が相次いでいるのです。入管庁によると、行方が分からなくなった技能実習生は、去年1年間で約9000人にのぼるといいます。

NPO法人日越ともいき支援会 吉水慈豊代表理事
「しびれを切らせて失踪の道を選ぶ若者が多い。何か問題が起こった時にきちんと支援ができるシステムにしていくのが必要」

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そこで18日に政府は、技能実習制度の見直しに向けた案を発表。転籍の制限を緩和し、どんな理由でも就労してから1年たつなど一定の条件を満たせば、転籍できるようにするということです。

また、技能実習制度をめぐっては、ほかにも課題がありました。

岐阜市の縫製工場で働いている技能実習生のフエさんは、洋服などの縫製を学んでいます。

技能実習生 フエさん
「いま仕事は楽しくて、日本語を勉強しています」

しかし、技能実習生として日本に滞在できるのは最大5年です。フエさんは来日してから今年で5年を迎えるため、日本に残るには、より熟練した技術を学ぶ「特定技能制度」に移行する必要があります。

「技能実習制度」は88の職種で構成されている一方で、「特定技能制度」は12の分野で構成されているため、一部、特定技能制度にはない仕事内容があります。フエさんの職種でもある「繊維・衣服」関係も「特定技能制度にない」職種に入るため、いまの制度だと日本で同じ仕事を続けることができないのです。

技能実習生 フエさん
「この会社で働きたいので、縫製が特定技能制度に追加されることを願っています」

雇う側にとっても、技能実習生は大切な人材となっています。

アイエスジェイエンタープライズ 井川貴裕代表取締役
「人材がいないもんですから、そういう意味では本当に救世主なのかな。ぜひ残っていただきたいなっていうのは、やっぱり切望するところではあります」

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今回発表された政府の案では、技能実習制度にかわる新制度を創設し、新制度の職種を「特定技能制度」と一致させ、同じ仕事でも「特定技能制度」に移行できるようにすべきと提言しました。

技能実習生 フエさん
「この仕事が大好きです。お金もほしいです」

政府の有識者会議は、年内に最終報告書を提出する方針です。