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工作船に追い付けないことを日本は知っていた 極秘捜査資料から見えた“工作船の実態”と活かされなかった反省【日向事件――ただ1人“完全自供”した北朝鮮幹部工作員 #1】

2022年10月7日 19:00
工作船に追い付けないことを日本は知っていた 極秘捜査資料から見えた“工作船の実態”と活かされなかった反省【日向事件――ただ1人“完全自供”した北朝鮮幹部工作員 #1】
捜査資料の表紙に記された「秘 永年」の文字

北朝鮮による拉致事件の被害者5人が帰国してから10月15日で20年になる。しかし、まだ帰国を果たせていない拉致被害者は政府認定だけでも12人。この20年間で拉致問題の解決に向けた大きな進展はないというのが実情だ。

また、戦後、北朝鮮の工作員が頻繁に日本に出入国を繰り返していたことが分かっているが、その多くは実態が解明できていない。北朝鮮の工作員は当時、日本でいったい何をしていたのか。

日本テレビが独自入手した500ページを超える極秘捜査資料には、日本に潜入し41年前に逮捕された北朝鮮工作員の活動の実態が、供述とともに事細かに記されていた。webオリジナル連載「日向事件――ただ1人“完全自供”した北朝鮮幹部工作員では、その極秘捜査資料からわかった当時の工作活動の実態を、5回に分けて明らかにしていく。 第1回は、工作船の性能について解説する。

■脱出失敗…3日間飲まず食わず、さまよった果てに…

「日向事件」と呼ばれるスパイ事件がある。

1981年6月24日、宮崎県日向市のとある海岸――。海岸近くの旅館の主人が、ステテコと下着のシャツ姿の男を発見した。力なくひょろひょろと歩いており、おなかがすいているのかと聞くと「はい」と何度も頭を下げたという。旅館の主人はこの男を旅館で保護したが、言葉のなまりを不審に思い、警察に通報。男は外国人登録証不携帯の疑いで逮捕された。

逮捕されたのは、62歳(当時)の男。日本で活動する工作員を指導する北朝鮮の幹部工作員と判明する。男は工作員を教育しながら、自衛隊の調査や韓国政府転覆を任務として活動を展開していたという。

教育任務を終えた男は、1981年6月のある夜、北朝鮮にひそかに帰るため海岸で迎えの工作船を待っていた。しかし、船は現れなかった。男は森に身を潜め、飲まず食わずのまま待ち続けたという。しかし、3日目の朝、耐え切れず森を出たところで見つかった。

■明らかになっていた“工作船の実態” しかし…

41年前、その幹部工作員の供述をもとにまとめ上げられた捜査資料には、驚愕の事実がつづられていた。

工作船の速度は時速60キロから70キロ。これに対し、海上保安庁の巡視船は時速30キロから45キロだった。つまり、当時の日本の巡視船では北朝鮮の工作船に追いつけず、そのために多くの北朝鮮工作員が逃げ切ることができていた。また、工作船の構造については、「本船」と呼ばれる漁船を装った船と、その中に上陸用の小舟とゴムボートが収容されていると説明されていた。

捜査資料が作成されて10年以上が経過した1999年3月23日、石川県能登半島沖の日本領海内に2隻の不審船が侵入した。海上保安庁の巡視船が必死の追跡をしたが、逃げられてしまった。その反省から巡視船の高速化が図られている。しかし、警察の捜査資料ではすでに巡視船と工作船の性能を比較が行われており、逃げ切られることは少なくとも警察は把握していたことがわかる。

また、2001年12月21日に奄美大島沖で、不審船と海上保安庁の巡視船との間で銃撃戦が繰り広げられ、不審船が沈没する事件があった。

引き上げられた不審船を日本政府は初めて北朝鮮の工作船と断定。構造は、船体後部にある観音開きの扉を開けると、中に小船が収容されているというもの。上陸用の小舟とゴムボート。それはかつての捜査資料に書かれていた構造そのものだった。

つまり、速度や構造など“工作船の実態”が1981年当時に判明していたにもかかわらず、その情報が日本国内で十分に活かされていなかったことが伺える。

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特設サイト:#拉致を知る あなたの人生に“拉致”があったら――

URL:https://news.ntv.co.jp/special/rachi

ある日、あなたや家族が忽然と姿を消してしまったらー。にわかに信じがたい出来事が、1970年代から80年代を中心に日本で相次ぎました。北朝鮮による拉致。当時、日本で何が起きていたのか。2002年に拉致被害者5人が帰国しましたが、その後20年たった今も、異国の地で帰れないでいる人たちがいます。帰国を待つ家族に残された時間はそう長くありません。

このサイトは拉致被害者本人やその家族の身に起きた出来事を、より広く知っていただくために立ち上げました。具体的に理解できるよう、あなたの属性にあわせて拉致被害の経緯を追体験できるようになっています。あなたの人生と照らし合わせて、自分ごととして拉致問題を考える機会になることを願っています。

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